FEATURE:Assembridge NAGOYA 2017|2017年10月14日(土)〜12月10日(日)|名古屋港〜築地口エリア一帯(愛知|港区)
名古屋市の港まち(名古屋港~築地口エリア一帯)を舞台とした、現代アート×音楽×まちの祭典「アッセンブリッジ・ナゴヤ2017」が現在開催中(〜12月10日まで)。
前回同様に、音楽のコンサートと現代アート展の双方が、日常的なまちの景色に大きなブリッジを描いていくのがこのイベントの醍醐味だ。現代アート部門「パノラマ庭園」は、今年は12作家が参画し、各々の作品をまちの中のさまざまな場所に展示している。ここまでは前回同様だが、今年はサブタイトルとして、日本を代表する作曲家・一柳慧のピアノ曲《タイム・シークエンス》を掲げている。つまりは「時間軸」というテーマが12作家の出展内容及び展示に対する姿勢に意識的に注がれているのである。
LIVERARYでは「アッセンブリッジ・ナゴヤ2017」のために新作を作り下ろした、愛知在住の美術家/映像作家・山城大督の取材同行&インタビューを敢行。このまちを舞台に制作された今作で彼が一体何を描きたかったのか?を探った。
SPECIAL REPORT & INTERVIEW:
DAISUKE YAMASHIRO
Interview ,Text & Edit:Takatoshi Takebe [LIVERARY , THISIS(NOT)MAGAZINE]
Photo : Sara Hashimoto [LIVERARY]
10月11日、山城大督は展示初日に向け、最終的な調整に入っているとのことだった。
山城大督の展示会場はもともと染め物屋であった場所「旧・いずみや染物店」。だが、展示会場はこの場所だけに留まらず、まちの至る所に散らばっているそうだ。取材前にざっくりと今日の動きについて聞いた限りでは「まちのひとたちといろんな約束を交わしていて、今日は残っている最終的な作業に回ります」といった情報だった。「約束」というのが今回の彼の作品のなかの大きなキーワードとなるようだ。
約束は人と交わされているものだけではない。
こちらの装置は、一日に決まった時間にタイマーがプログラミングされており、その時間になるとシャボン玉が外に吹き出る「約束」がなされている。
時里充(写真左)は、今回のシャボン玉のタイマーの仕組みをつくったプログラマー。
シャボン玉の出方を確認すると、山城は展示会場の近隣にある美容院へ向かった。
一体何をしているのか?というと、先ほどのシャボン玉の装置が設置されている自身の展示会場とこのミテラ美容室を有線ケーブルでつなぎ……
CDオーディオ機器を設置。「ミテラ美容室」との約束は「好きなタイミングで、このCDプレイヤーを再生してください」というものだった。CDが再生されると、同時に山城の展示会場でも有線でつないだスピーカーから出音される、という仕組みになっている。
という仕組みになっている、と言われても「ミテラ美容室」のお母さんがどこまでそれを理解しているのかは謎ではあるが、山城は丁寧に説明をする。
その様子を見ていると、まちの人々からの信頼なしではこのプロジェクトは成功しないように思えた。そもそも、突然「これを設置させてください」とCDプレイヤーを持ってこられてもすんなり受け入れられることはないはずだ。
「約2ヶ月間に渡って、何度もこのまちに通い、まちを歩き回ったり、港まちづくり協議会に仲介してもらいながら、まちのひとたちと交流をする日々が続いた」と山城は振り返った。絵を描くわけでもなく、映像を撮るわけでもなく、これがアート作品の制作準備レポートと言えるのか?という疑問も出てくるが、これが彼なりの作品の作り方のようだ。
ここで、「ちょっと時間ができたので、途中だった地図の作成に入ります」と言い、アッセンブリッジ・ナゴヤの企画制作を行う「港まちづくり協議会」の事務所へと移動した。港まちの白地図に、約束を散りばめたポイントをひとつひとつ書き込みながら、確認していく。
まちに散らばった約束は27あるのだそう。それら約束が果たされる位置が示されたこの白地図は、山城の展示会場で設置/配布されるパンフレットとなるものだ。
27の約束の内容は、さきほどの「時間通りに発生するシャボン玉」だったり「ミテラ美容室のお母さんが気ままに流すBGM」だったり。その他にも「公園で素振している少年がいる」、「女の子がハムスターを見せてくれる」、「夕刊が配達される」などがある。彼が集め、地図にプロットされた「約束」は決して特別なものだけでなく、当たり前にこのまちに存在する日常的な「出来事」も含まれているようだ。それらがまるですべて「約束」かのように、まちの至る所で(もちろん)同時多発的に現実世界のタイムライン上で実行されていくわけだ。
「次は時計の交換に行ってきます」
学校の教室にかかっているようなタイプの大きな壁時計を抱え、山城が歩き出した。向かった先は、展示会場から徒歩10分ほどのところにある一般のお宅。
「10軒の住民の方々に玉突き方式で家の時計を交換してもらっていて、その最後のお宅に向かっている」という(ちなみに時計のひとつが山城の展示会場に飾られている)。
時計は交換しても時間はそのお宅の時間に合わせてもらっているため、それぞれの家の時計の時間軸は、微妙に進んでいたり、遅れていたりしている。
時計を渡したところで今日のミッションは終了。
《Fly Me to the TIME.》と名づけられたこの作品の体験者は、リアルに発生する「シーン」の切り抜きを連続的に拾い集め、辿ることで他者の時間軸に一瞬だけ触れられたような共通認識を得ることになる。「タイム・シークエンス=時間軸」と遊んでいるかのような、この不思議なアート作品のおもしろさについてだんだん理解ができてきた。しかしながら、彼がこの作品を通じて伝えたいことは何なのだろう?少しの間、山城大督のタイムラインをご提供いただきインタビューを行った。
まちと共作したかのような今作品の制作意図とは?気になるインタビューは次ページへ>>>
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2017年10月14日(土)〜12月10日(日)※会期中の木曜、金曜、土曜、日曜開催
Assembridge NAGOYA 2017
会場:名古屋港〜築地口エリア一帯
主催:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会
構成団体:名古屋市、港まちづくり協議会、名古屋港管理組合、(公財)名古屋フィルハーモニー交響楽団、(公財)名古屋市文化振興事業団
問:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会事務局(名古屋市港区名港1-19-18 3F)
TEL:052-652-2511(受付11:00〜19:00)/メール:contact@assembridge.nagoya
http://www.assembridge.nagoya
山城大督
美術家|映像ディレクター|ドキュメント・コーディネーター|Nadegata Instant Party|山城美術|1983年大阪生まれ|IAMAS修了、京都造形芸術大学卒業、山口情報芸術センター[YCAM]エデュケーター経て東京藝術大学映像研究科博士後期課程|京都造形芸術大学・明治学院大学・愛知大非常勤講師|名古屋在住