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FEATURE / 特集記事 Jan 27. 2019 UP
【SPECIAL INTERVIEW:中原昌也 a.k.a Hair Stylistics 】
「音を出すことで、自分の存在を消したい」
映画批評、文学、音楽、人生相談……
マルチな活動の内側に貫かれた、中原昌也という名の表現方法。

2019年2月9日(土)、11日(月・祝)「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2019」愛知県芸術劇場小ホール(愛知|栄)

 

“「コンサート」ではこぼれ落ちてしまうような前衛的な音楽作品や、台詞や身体表現を伴う作品など、ひとくくりにはできない新たな音のパフォーマンス”を一挙に紹介する場、「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム」。

コンテンポラリーな音楽表現を行うアーティストたちが一堂に会する「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2019」が2月9日(土)、11日(月・祝)に愛知県芸術劇場・小ホールにて開催される。

毎年、公募出演枠とゲスト枠があり、ゲスト枠にはこれまでにもサンガツ荒木優光、伊東篤宏、空間現代、Sachiko Mといった錚々たる音楽家たちが出演してきた同企画。出演ラインナップは毎度総入れ替えとなっており、今年は、夏の大△、藤田陽介、電力音楽(木下正道/多井智紀/池田拓実)、そして、Hair Stylistics(a.k.a. 中原昌也)という4組のゲストが出演する。

LIVERARYでは2016年にも、この「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム」というイベントについて特集を組み、そもそも「サウンドパフォーマンス」とは何なのか?というテーマの掘り下げに迫ったトークイベントも企画してきた。(トークイベント当日の模様はこちらから

 

 

「サウンドパフォーマンス」とは何なのか?を改めて考えてみると、ステートメントに  「コンサート」ではこぼれ落ちてしまうような前衛的な音楽作品”  とある通り、一般的な「音楽」や「表現」としてはなかなか触れることのない領域を、作り手側と聴き手側が共に目指していくような、新しい何かを発見するための壮大な旅のような、そんなイメージが持てる。

今回、取材させてもらったHair Stylisticsこと中原昌也は、国内外で評価を受けるアーティストであり、シーンの開拓者のひとりと言えるだろう。普段、クラブやライブハウスなどでのパフォーマンスが多いイメージの彼が、公的な「劇場」という場でどんなパフォーマンスを行うのか? 表現活動に対するスタンスについて、さらに最後に「人生相談」も!中原昌也の脳内を巡る時間は、まさに新しい何かを発見するための旅のようであった。

 

SPECIAL INTERVIEW:

中原昌也 a.k.a Hair Stylistics

Interview, Text & Edit : Takatoshi Takebe [THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY]
Photo:Norihito Hiraide

 

中原昌也
80年代末から「暴力温泉芸者」名義で音楽活動を続け、海外での評価も高い。97年からユニット名を「Hair Stylistics」に改め活動。2004年にアルバム『custom cook confused death』を発表以降、数多くの作品のリリース、ライヴなど精力的な活動が続いている。また、音楽活動と平行して映画評論や小説家としても活躍。2001年に『あらゆる場所に花束が…』で三島由紀夫賞、2006年に『名もなき孤児たちの墓』で野間文芸新人賞を受賞。多岐にわたる活動で知られる。

 


※このインタビューは、2018年11月17日(土)名古屋・栄「THE APARTMENT STORE」で中原昌也が演奏終了後に行ったものです。

 

 

 

―今日のライブ見させてもらって、普通に乗れる感じというか、心地いい音楽でした。勝手ながら爆音のノイズというイメージがあったので、かなりイメージが変わりました。

今日のライブは全然よくなかったんですよ。リハの時間があまりなかったので。今日はPAシステムがあれだったので、音が全然出せなかったんですよね。

―え、そうなんですか(笑)。逆にどんなときがいいライブだったなって思うんです?

自分で機械を操作して音を出してるんですけど、途中から機械が勝手に音を出している感覚になったときが自分的にはいいライブだなって思います。自分は演奏に没頭して、自分の存在を消したいんです。

―劇場のような場所で、お一人でライブされたことありますか?

何回かありますよ。照明が強すぎて観客席が見えなくなって、誰も居ないような感覚でやった覚えがあります。 

―演奏中は夢中になって機械いじっている様でしたが、観客の様子とか、温度感って結構意識されてるんですか? 

見てますね。客がしらけてると、あーしらけてるな〜って思って、そしたら、自分の気持ちもしらけていってしまいますよね。

―2月に出演される「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2019」は、「サウンドパフォーマンスを支えるPA(電気的な音響拡声装置)の語源であるPublic Address(公衆伝達)に立ち返り、〈音を観客にどのように届けるのか〉」がテーマとのことなんですが。それを受けて中原さんはどのようなパフォーマンスをしようと考えているのか?教えてください。

最近はクラブっぽいところでやることが多いから、ビートを全面に出す感じだけど、そういうのじゃない方がいいのかなと。淡々と聴かせる感じがいいですかね。劇場という場所だからこそ、ぼーっと見られると思うと辛いですよね。やっぱり、劇場という場であっても、クールなコールアンドレスポンスみたいなことができれば良いですんけど……あはは。

―やっぱりライブハウスやクラブでやるのとは違うライブになりそうってことですか?

そうしたいです。

―劇場の方が、音がクリアに聞こえるだろうし。そういう特性を生かしたい?

しっかり聴かせるためには今日よりもっと機材持ってこないと、と思ってます。

―では、2月の公演時は今日よりも機材の量が多いんですか? 通常はどのくらいですか?今日の倍くらいですか?

1.5倍くらいですね。

―PCは使わないんですね。

昔はPCを使ったライブもやってましたけど、単純につまらないんでやめました。便利ですけどね。CDかけてるのと一緒になってしまいますから、ライブの意味ないじゃんって思って。別に、PC使う人に対しての批判ではないんですけど。

 

 

 

―「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2019」は、「パブリックアドレス(公衆伝達)」がテーマということで、それにちなんでお聞きしたいんですけど。中原さんが音楽表現をするうえで音楽を通じて、他者に伝達したいこと、伝えたいことって、常にあるのでしょうか?

ありますけど、それを言葉にしたくないかな。なんとなく、思想みたいなのを感じてもらればいいかな、と。

―受け手側に委ねたいってことですね。

受け手には委ねたいですが、ほっとくと勝手なことを思われてネットに書かれたりするんですよね。以前よりリテラシーが劣化してる気がするんですよね。少しでも際どい表現をすると過剰に反応されてしまうところがあって。昔は、もう少しそこがアバウトにできたりしたと思うんですけど、どんどんできなくなってきてるな、と。映画批評の仕事もしてるんですが、トークイベントとかに出たときにその映画のことを酷評したりすると、ツイッターとかそういうのにすぐ書かれるんですよね。こっちも悪気があるわけじゃなくて、仕事でやってるのになって思いますよね。

―別のインタビューで読んだんですけど、「音楽をやることや文章を書くことは好きでやってる訳じゃない」ってあったんですが。本当にそう思われてるんですか?

音楽は趣味でやってる言われても仕方ないかもしれないです。やってて楽しい〜!とかっていう風には見られたくないってのはありますね。楽しいですけど、それより苦しいですしね。

―では、中原さんにとっての音楽活動に対するモチベーションの源って何なのでしょう?

ありもしない何かがあって、それをわざわざ形にするってことですかね。

―中原さんが最近、衝撃を受けたアーティストっていますか? 誰かの音源やライブだったりとか。僕自身は年を重ねることでだんだんそういう新しい衝撃みたいなのが少なくなっているんですけど。

僕もそうですよ。ものすごいうまいマッサージ屋とかに行ったほうが刺激的かもしれないくらいで。音楽に対しては、ものすごい衝撃とか目新しさとかはもう求めてないかもしれないですね。何がすごいのかわからないけど、すごいくらいのほうが楽しいでしょうね。むしろ、古いものがむしろ新しく感じるときはありますけどね。当時は誰にも評価されてなかった音楽を改めて聴いたらすごい良いみたいな。古いものがいいって言いたいわけじゃなくて。視点を変えて聴いたらすごくいい!って思ったり、なんて中途半端な音楽なんだ!みたいな。そういうのを見つけたりするのは好きだったりしますね。

―以前に中原さんが書かれていた文章で「まずい飯屋が逆に気になって、どれくらいまずかったかを確かめに思い出すとついつい行ってしまう」みたいなのがあって、あの発想の転換は衝撃的でした。それ以来、たまたま入ったまずいごはん屋が逆に気になるようになってしまって。そのたびに中原さんの文章を思い出します。

ははは。最近ではそういう店もほんとに淘汰されてしまっておもしろくないですよね。「普通」の店とかが一番おもしろくないじゃないですか。まずくもなく、うまくもない店。吉野家とかさ〜。まあ、たまには行きますけどね。「テイスト・レス」ってことだと思いますね。味とかそういうのじゃないっていうか。ジョセフ・ジョーっていうよくわかんない映画監督なんですけど、もう忘れ去られてしまったような人で、で、やたら本数だけは多いんですよ。強烈にまずい店みたいな印象とかはないんですけど、自分の記憶のどこに置いたらいいのかわからないものとして興味ありますね。それに比べたら僕がやってることなんて、凡庸ですよ。まだまだですね。

―逆に、中原さん自身、音楽で衝撃を与えたいみたいな気持ちはあるんでしょうか?

音楽で衝撃与えたいとかはないですね。例えば、次の2月でやる劇場とかでいきなりカラオケとかやったりしたらそっちのほうが衝撃的でおもしろいんでしょうけどね。あとはもう直接客席に行って客を小突いたりね(笑)。

―(笑)。音楽でやりたいことは、常に変わっていっている?

同じことをやってるだけなのかもしれないですけど。変わっていってほしいと思ってますね。

―では、最近の楽曲制作はこういうモード、みたいなのってありますか?

ひとつひとつの曲が全然違う感じに、バラバラのものにしたいと思ってますね。一貫して嫌いな人間が思想を語ってる映像をエディットしてつないだりとか、「え〜っと、そうですね〜」とか「はぁ〜」っとかってくだらない受け答えしてるのとか、特に意味のない相槌の部分とかの音声をサンプリングして、意味のないものにしてやろうとか、煮ても焼いても食えないようなものをわざわざ使ってやってるんですよ。

 

 

―自分が生み出した作品に対してあまり愛着とかはないんでしょうか?

難しい質問ですね。死んだと思ってた俳優がまだ生きてたんだ!みたいなことはありますよ。むしろ、自分がつくったんじゃないでしょ、これ!みたいに自分の曲に驚かされたいですね。たまたま自分のCDR作品を売ってるレコード屋に行ったときに流れてる曲を聴いて「これ、誰の曲?」って聞いたら「あんたのだよ!」って言われたことがあって(笑)。自分の過去の作品に対して、こんな曲あったんだ!って思うことはあります。文章もそうで、2年前に書いたゲラを読んだ時に、こんな文章書けるんだ!とか笑っちゃったりして、恥ずかしいなって思ったこともありますね。ひとりじゃなくて誰かとのコミュニケーションを経て共同作業でつくったものだったら、作品に愛情が湧くのかなとは考えたりしますけどね。

―少し前に演劇にも参加されたと思いますが、演劇とかバンドとか、複数人での創作物にも興味がある?

演劇の方は……芝居は苦手なんですけどね、誘っていただいて素直に嬉しかったし、準備期間も文化祭みたいな人間関係を煮詰めていくってのは楽しかったですね。自分はほぼ毎回即興でしたけど。避けてた訳じゃないですけど、これまであまり機会がなかったです。もっとやりたいですね。共同作業の中で、自分が消えていく感じがするので……。バンドには憧れはありますけど、何人かバックバンド的な盛り上げ係がいて、フロントマンが中心になって、みたいな構図が興味ないんですよね。音を出すことで、自分の存在を消したいんです。あと、曲を覚えたり、歌詞を覚えるのがめんどくさいから多分できないと思います。カラオケはよく行くんですけどね……。すごかった!とかって言われたくないというか、自分は単なる音の調整役に過ぎないくらいの立ち位置になりたいし、そういう感じを目指してますね。

―今後ご自身の活動について、どうなりたいとか、目標はありますか?

あまり考えないようにしています。自分から出てきたものに対して、どうやって責任取るかですかね。

―責任を取るってのは、それをちゃんと作品としてリリースするってことですか?

そうですね。

 

 

―インタビューはここで終わりますが、以前に出された著書で中原さんがいろんな人の相談に答える書籍(『中原昌也の人生相談 悩んでるうちが花なのよ党宣言』リトルモア)がありましたが、あの本すごく好きで、急なお願いなんですが、最後に人生相談コーナーをやらせてもらっていいですか?

はい、どうぞ。

―ありがとうございます。一応、何人かに相談や質問を募ってきました。ではひとつめ。1ヶ月後に子供が生まれます。子供の成長過程において、どのような音楽や映画を見せればいいか迷っています。アドバイスをください」

あえて、実験的にヤバい映画見せたらどうですか? 人がぶっ殺される映画とか。それ見て育った子供の将来がどうなるか気になりますよね。

―(笑)。中原さん自身のお子さんにもそういうことしますか?

しませんよ。嫌でしょ。子供のことなんて考えたくもないですよ。

―(笑)。では次、「やる気が出ない時、どうしたらいいのか、わかりません。中原さんにとって、「やる気スイッチ」のようなものってありますか。教えてください」

何言ってるんですか。そんなスイッチないですよ。

―(笑)。「新しい刺激がなくなったらどうしたらいいですか?」

つまらないと思っていることをあえてしてみたりすることかな。そういうところに新しい発見があるんじゃないですかね。

―中原さんは、携帯電話をお持ちじゃないと聞いてますが、最後の質問です。「どうやっていろんな情報を収取してるんですか? ネットですか?」。

iPad は持ってますからネットは見てますよ。携帯電話は、ある女に襲撃された時、取られてしまってそれ以来持ってないんです。

―(笑)。貴重なお時間、ありがとうございました!

 

 

取材終了後、打ち上げ会場「味仙」で紹興酒を何杯かあおって泥酔状態になった中原さんが、そこに居合わせた関係者たちをほぼ強制的にカラオケに連行していく様も含め、すべてがパフォーマンスのような、何もかも丸出しの人間味溢れる姿は、実に魅力的だった。

2月9日(土)、2月11日(月・祝)※中原昌也出演日、果たしてどんなサウンドパフォーマンスが行われるのか? 期待したい。

 

イベント情報

2019年2月9日(土)、2月11日(月・祝)
サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2019
会場:愛知県芸術劇場小ホール
時間:2月9日(土)17:00
2月11日(月・祝) 15:00
※開場は開演の15分前
※両日とも公演終了後に出演者によるアフタートークを予定。

出演者・演目:
2月9日(土)
ゲストアーティスト:
夏の大△、藤田陽介
公募アーティスト:
大久保雅基「sd.mod.live」、杉野晋平「パイルドライバー」、dobby/仮説「チョウシ之助」

2月11日(月・祝)
ゲストアーティスト:
電力音楽(木下正道/多井智紀/池田拓実)、Hair Stylistics(a.k.a. 中原昌也)
公募アーティスト:
Affine「7 leaves」、signal compose「visible/hidden/re-visible」、大所帯非楽器アンサンブル POLY!「パノラマ並奏曲」

公募作品審査員:
新見永治(パルル)、森田太朗(K.D japon/喫茶モノコト)、野口順哉(外/空間現代)、藤井明子(愛知県芸術劇場プロデューサー)

料金:<当日券のみ>
一般(2日通し券)¥3,000/一般(1日券)¥2,000/U25(1日券) ¥1,000/高校生以下無料(事前申込必要)
※2日通し券は特製ステッカー付き
※U25は公演日に25歳以下対象(要証明書)
※やむを得ない事情により、内容・出演者等が変更する場合があります。

主催:愛知県芸術劇場
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:長久手市

中原昌也
80年代末から「暴力温泉芸者」名義で音楽活動を続け、海外での評価も高い。97年からユニット名を「Hair Stylistics」に改め活動。2004年にアルバム『custom cook confused death』を発表以降、数多くの作品のリリース、ライヴなど精力的な活動が続いている。また、音楽活動と平行して映画評論や小説家としても活躍。2001年に『あらゆる場所に花束が…』で三島由紀夫賞、2006年に『名もなき孤児たちの墓』で野間文芸新人賞を受賞。多岐にわたる活動で知られる。

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