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FEATURE / 特集記事 Aug 05. 2019 UP
【INTERVIEW】
約3500坪の巨大な空き地、あなたならどうする?!前代未聞な学生コンペを開催。
建築を軸に多様なコミュニティをつくり続けてきた建築家・間宮晨一千が問う、風景と価値。

FEATURE:未来の風景をつくる 学生コンペ

もしも約3500坪(1万平米以上)の巨大な空き地でまちづくりをするチャンスが与えられたら、あなたならどんなことをしたい? 

まるで冗談のような大きなスケールの問いかけを、学生を対象に広く募集を呼びかけるプロジェクトがある。「未来の風景をつくる 学生コンペ」と題された建築/空間デザインのアイデア募集企画だ(締切は、8月26日(月)まで)。※記事はコチラ

企画者は「未来デザインラボ」というプロジェクトチーム。同チームのディレクターであり、この学生コンペを仕掛けたのが名古屋を拠点に、多方面で活躍する建築家・間宮晨一千だ。

 


間宮晨一千/建築家、プロジェクトデザイナー。 BARBARA CAPPOCHIN ビエンナーレ国際建築賞など国内外で多数のアワードを受賞。 愛知淑徳大学にてゼミナールを受けもちながら都市研究の企画・リサーチを行う「未来デザインラボ」、エリアデザインとして「星が丘天文台」プロジェクトの運営に携わる。

 

彼は建築家でありながらも大学教員でもある。さらにこれまで「なごや朝大学」「星が丘天文台」といった多様な価値観を見出すきっかけを生み出す場/コミュニティを次々と企画しつくってきたプロデューサーでもある。単なる建築家の枠を超えた動きを見せる間宮さんが仲間とともに新たに立ち上げたプラットフォーム「未来デザインラボ」は、既存価値の再考を行うための取り組みであり、同時に彼が建築家を目指し始めた頃より描いていた風景を描くための大きな一歩のようだ。

 

INTERVIEW:

間宮晨一千
Shinichi Mamiya

Interview , Text & Edit : Takatoshi Takebe[LIVERARY]
Photo : Peso
Tape Write : Kensuke Ido [ LIVERARY ]

 

 

−「未来デザインラボ」は、いつ立ち上がったんですか?

間宮:「未来デザインラボ」は2018年8月にスタートしました。僕だけじゃなくて、3社協働のプロジェクトになります。注文住宅業からライフスタイルを提案するセレクトショップまでを手がける「ラ・カーサ」さんと、一般ユーザーと住まいの専門家をつなげるマッチングサービスを行っている「SUVACO」さんと、僕がやっているプロジェクトデザイン会社「1/千(センブンノイチ) 」の三社です。

−皆さん、専業は違えど「建築」を軸につながっている三社ということですね。どういった経緯でいっしょにやることに?

間宮:うちのオフィスは自社で設計して建てた自社ビルなんですが、ゆくゆくはシェアオフィスにしたいっていうビジョンがもともとあって。ただシェアするんじゃなくて、何か一緒におもしろいことができる人がいいな〜と思っていました。「SUVACO」さんは東京に本社があるんですが、名古屋支社の一人の社員さんがもともとうちの会社の活動を気にしてくれていて、で、ちょうどオフィスを設立するタイミングでいっしょにやろうってなりました。「ラ・カーサ」さんは知人を通して代表の熊沢さんを紹介してもらって。「いい意味で、かなり変わった人だから、おもしろいと思うよ」って。

−間宮さんも情熱的過ぎて、ある意味変わった人だからこのふたりなら合うと思われたんですかね(笑)。

間宮:そうかもしれないです(笑)。で、話してみたら信念のところで合致したってわけです。

 

 

−その合致した信念の部分ってのが「未来デザインラボ」の活動理念でキャッチコピーとなっている「未来の生き方と風景を考えるプラットフォーム」ですか?

間宮:そうですね。三社ともに建築や空間設計に関わっている会社で、そこを軸としながら、自分たちの生き方を問うような場所をつくりたい、そんな思いでした。あとは、僕たちだけではなくて、もっと若い人たちを集めて新しい生活のスタイルを模索できればいいなと。そこのビジョンも合致しました。

−建築や空間デザインから飛躍して、その先にある「新しい生き方」を探るってことですね。「未来の生き方を考える」だけじゃなくて、そこに「風景」って言葉が入っているのがとても印象的でした。

間宮:郊外都市の風景を見た時に、パッと見ただけではどこの街かわからないような風景が蔓延してますよね。結局、それって社会がファスト化してるってことで、あらゆるものがファストで、交換可能な世の中になってしまっていることの現れだと思うんですよ。

−ファスト化というと?

間宮:ファストフードとスローフードって言葉があるじゃないですか。あのスローフードって意味、日本だと「ゆっくり食べましょう」とか「健康になりましょう」とかって解釈されてるんですけど、そもそもそういう意味じゃなくて、イタリアから始まったヨーロッパの文化政策で。「ファストフード」っていうアメリカが作り出した食文化に自分たちの文化を奪われたくない、っていう意思から生まれた言葉が「スローフード」なんですよ。要するに文化的対抗でもあるし経済的対抗でもある。その考え方が根底にあって、どうしても日本は何でもファスト化しすぎている。それは人も、風景も、全てに言えて。システマチックに交換できないような価値、替えが効かないような価値を作れないのかなって思ってるんです。

−なるほど。そういう物の価値の考え方ができなくなってきているから、郊外によくあるあの大手チェーン店だらけの国道沿いみたいな、あういうどこにでもある風景=交換可能な風景ばかりが生み出されてしまう、ってことですね。

間宮:そうなんです。今、日本の自殺者2万人を超えるとかって言われているけど、それって普段暮らしているまちの風景に影響されたり、またその状況がまちに還元されたりするとも考えていて。だからこそ、建築物が作り出す「空間での体験価値」ってのが、すごく重要って思っているんだよね。

−そういうつまらない風景を変えていきたい、と。

間宮:ですね、自分の生まれ育った南区の下町も大人になっていくにつれて、どんどんとつまらない風景になっていってしまって。その悔しい実体験も自分の建築家として街に何ができるか?という信念の根底にはあると思います。さらに大きなことを言えば、そういった世の中の状況をも問い直したいくらいに思っているんです。「未来デザインラボ」という名を掲げるなら、日本の文化をもう一度作り直すくらいの、そんな問いかけをしていく。その問いに反応してくれるような「未来デザインラボ」メンバーはじめ、連携してくれるさまざまな企業やクリエイターたちとともに、未来の担い手である学生さんや若者たちも巻き込んで繋げていくことがまず必要かなと。

 

 

−学生さんたちにも間宮さんの思いを伝えるためのアクションとしては、どんなことをしてきたんですか?

間宮:僕はもともと建築家だけどただ建物を建てるだけじゃなくて、建築を通して「社会に何か問いたい」っていう気持ちがあったんだよね。「愛知淑徳大学」でゼミも持っていて、最初は僕のネットワークを活かして、他大学の先生たちとともに「生き方を模索するワークショップ」をやろうって話をして……。

−そんな重たいテーマのワークショップはなかなか聞いたことないですね(笑)!

間宮:自分の気持ちを自分自身で形にしたくて、それこそ自分自身も模索してきたってわけです(笑)。トークイベントも開催してきましたね。トークってそこに集まった共通の意思を持った人たちと繋がれたり、意見を交流できたりして、僕らのテンションや熱量が人に伝染していく場で、それも「空間での体験価値」だと思うんですよね。そこから次につながっていくことも多いし。そういう意味でもすごく実りがあるんです。ちなみに、二回目のトークイベントの際に来てくれていたデンソーの方から「未来デザインラボ」と一緒にプロジェクトをやりたいと言われて……それが実を結んだのが、今、絶賛募集中の「未来の風景をつくる学生コンペ」なんです。今日はこの話がしたかったんです!

 


「未来の風景をつくる学生コンペ」募集告知ビジュアル。

 

−では、現在絶賛募集中の「未来の風景をつくる学生コンペ」について話を聞いていきたいんですが、これって、要するに学生さんから建築や空間デザインのアイデアを自由に募集するコンペだと思うんですが、まず募集要項を見て衝撃的だったのが敷地面積のところ「11495.86m²(=約3500坪)」って書いてあって、これめちゃくちゃ広くないですか? 小さい街が作れますよね。

間宮:そうそう、まさに街をつくるアイデアの募集とも言えます。ちゃんと線を引くと53区間くらい住宅を作れるくらいの広大な空き地です。今回のテーマは、コミュニティ・コアの提案。そもそもコミュニティってなんだろうと考えてもらえたらいいかなと。募集要項には、「住民同士の関係性が育まれるような「しくみ」を考え提案すること」としています。新しい価値観の住宅地を作るでもいいし。テーマさえ合っていれば、住宅じゃなくてもっと実験的な場をつくる構想でもいいんです。


今回のお題となっている広大な空き地の平面図がこちら。

 

−学生さんに限定して募集する意義というか、学生に絞る意図はありますか?

間宮:さっきお話したように、僕らのような企業とか大人だけで若者を省いていては、本当の意味での理想的なアクションにはならないってのが、まずありますね。あと、学生コンペでこの規模感のものって過去にないんですよね。社会に問いかけるならこの企画自体にインパクトを持たせたいな、という狙いもあります。

−アイデアを採用された学生さんはこれをきっかけに人生変わりそうなレベルの大きなプロジェクトになりますよね〜。

間宮:今回のような学生コンペ企画にデベロッパーである中電不動産やデンソーといった大企業が社会貢献と思って賛同してくれて、僕らにこういうトライをさせてもらえたことは喜ばしいことだし、大事にしたい経験ですね。今後もこういう形の企画を大手デベロッパーと若者の間に入って、双方にとって新しい価値を見出せるような取り組みを実現させていけたらいいなと思います。

−そもそも論になってしまうんですが、間宮さんのような活動をあえて名古屋でやる意義ってありますか? 名古屋ってすでにいろいろあるじゃないですか。そういうある程度豊かな街において、建築ができることって何なのかな〜って思っていて。

間宮:よく「名古屋は魅力がない街」とかって言われてますけど、僕は名古屋は、可能性を秘めていると思うんですよ。ある程度、経済規模があるし、住んでいる人はたくさんいるし。街に対してニュートラルな人が多い気もするけど、だからこそマインドさえ変わっていけば、名古屋にはチャンスがあると思うんです。都市の割に高い建物が少ないので、空が広けている。空が広いって大事で、失敗してもなんとかなるんじゃないかっていうマインドになるそうなんですよね。「カリフォルニア州は空が広くて天気もいいから、起業する人が多い」っていう調査結果もあるそうなんです。

 

 

間宮:ちなみに、今日取材に来てもらったこのTT” a Little Knowledge Store(トド アリトルナレッジ ストア)というお店のインテリアデザインは僕がやらせてもらったんですが、このテラスからの素晴らしい眺めをそのまま活かしたいと思ったんです。僕らはこの緑を伝えられたらそれでいい、ということで。壁全面を窓にして、もともとあった柱以外すべて取っ払って、視界を遮るものを無くす、空の広さや店内から見える木々の緑を借景にした、引き算のデザインになっています。

 


TT” a little knowledge storeは、間宮さんが参画しているエリアデザイン「星が丘天文台」プロジェクトの一環。単なる飲食店ではなく、トークイベントから音楽イベントまで行われ、多様な価値を見出す場に。

 

−先ほどの間宮さんのお話を聞いて、マインドを変えていかないと、街を変えることはできない、と改めて感じましたが、愛知県ってやっぱりトヨタの影響がでかい街で、安定から外れることを嫌う価値が強い感じがして。自分のやり方でココで何か面白いことやってやる!って、今ある価値観を変えるような人が生まれにくい土地柄なのではないかなって。

間宮:その通りですね。生き方が画一的になるんですよね。しんどいだろうなと思いますよ、大学で学生の子たちを見ていても思います。教育のシステム自体が、卒業したら一斉就職が当たり前ですからね。「春から就職」という枠から外れちゃうとそこで終了!みたいな恐怖心に煽られるわけで……。たかだか20代の失敗なんて大した失敗じゃないのに。

−ちなみに、間宮さんご自身は、どういう学生時代を過ごしてきたんですか?

間宮:僕自身、学生時代はすごく悶々としてましたね。どうして今のような動きをしているかって考えると、ひとつは大学の恩師が今話したような価値観については触れてこなかったからかも。だから、別の大学で哲学者・西研さんや社会学者・宮台真司さんの授業を受けてみたり、建築以外の先生を見つけていろんな考え方を勉強していましたね。20代はよく海外への旅もしてました。海外だとほんと出会う人すべてにカルチャーショックを受けるくらいに価値観を揺さぶられる体験があったと思います。

 

 

−なるほど。では今後、名古屋という街だからこそ、間宮さんはどんなことを仕掛けていきたいですか?

今日も話していて思ったけど、インタビューとかトークセッションとかってめっちゃいい、生の体験だよね。自分の考えに興味がある人が増えるきっかけになるし。それは同じ思いの仲間を集めるのに一番いい方法かなって。トークイベントをやっていていろんな業種の人とも関われるチャンスが生まれる場だと確信しましたね。次は行政の人が来てほしいなって思いますね。もっと積極的に行政の人に話を聞く耳を持ってもらいたいって。街のルールを作っているのは行政の人だし、行政の人の意識が変わるような場を作れたら、と。そのためには、街を紹介できるようなプラットフォームのようなものを自分たちの手でつくって、情報発信もできたらいいな、と。それって森、道、市場のようなマーケットイベントであったり、LIVERARYのようなWEBメディアだったりすると思うんですけど、小さくてもいいから作っていきたいです。もっと平たく言えば、自分たちが住んでいる街を楽しみたい。大人が楽しくないまちは、子どもも楽しくないと思うし、「楽しい」って気持ちを拡げていけたらと。

−逆に、ネガティブな感情も伝染してしまいますよね。

間宮:そうそう。経済もそうですよね。感情が経済を左右しちゃうから。みんながもうダメだと思ったら滅びちゃうんです。まだいけるとか、楽しいことあるよ、とか自分たちで探していければいい社会になっていくと思いますね。「全員起業しろ!」とまでは言わないけど、大企業に人生を委ねるんじゃなくて、自分たちの経済圏を自分たちで作っていこうよっていう価値観を持ってもらいたい。名古屋も若い人がチャレンジできる地域になっていけばおもしろい動きが増えていくはず。そうなっていくといいなと思います。

 

イベント情報

未来の風景をつくる 学生コンペ 

応募受付期間:2019年6月1日〜8月26日(月)
作品受付期間:2019年8月19日(月)〜9月5日(木)必着

敷地条件:愛知県名古屋市緑区諸の木二丁目における敷地
(地下鉄徳重駅から徒歩 30 分程度)
敷地面積:11,495.86m²
建ぺい率:40%
容積率:80%
※区画割を変更する際は 160 ㎡以上の敷地を 40 区画 以上確保できるようにすること。
※法規制を勘案した提案とすること。

応募資格:
・大学生あるいは大学院生、専門学生、高専生とする。
・チームでの応募も可能とする。
・建築外の学生の応募も可能 とする。

賞金:
未来デザイン賞:30万円(1点)
優秀賞:10万円(1点)
入賞:3万円(3点)

審査員:
審査委員長 原田真宏
(建築家 /マウントフジアーキテクツスタジオ主宰、芝浦工業大学教授 )

審査員:
林厚見(不動産プロデューサー /SPEAC共同代表 、東京R不動産ディレクター)
田中元子(建築コミュニケーター/グランドレベル代表)
藤村龍至(建築家/東京藝術大学准教授、RFA 主宰)
牧野隆広(起業支援家/名古屋大学 客員教授、ミライプロジェクト代表)

モデレーター:
間宮晨一千(未来デザインラボディレクター、愛知淑徳大学講師)

発表:
審査結果発表:2019年9月25日(水)を予定
表彰式:2019年10月5日(土)を予定

※応募に際しての詳細条件等については特設ページへ

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