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FEATURE / 特集記事 Sep 09. 2021 UP
【SPECIAL REPORT】
「感情の“震え”が届けばいい」。
映画『全員切腹』監督・豊田利晃と主演俳優・窪塚洋介が登壇した
舞台挨拶&トークが矢場町・センチュリーシネマで開催。

『全員切腹』公開中|センチュリーシネマ(愛知|矢場町)


写真左:窪塚洋介、右:豊田利晃

 

9月5日(日)、矢場町・名古屋PARCO 8Fのセンチュリーシネマにて、現在上映中の映画『全員切腹』の舞台挨拶が行われた。登壇したのは、監督・豊田利晃と主演俳優・窪塚洋介

同作は「狼蘇山三部作」と呼ばれる作品シリーズで、渋川清彦、浅野忠信、高良健吾、松田龍平、切腹ピストルズが出演した『狼煙が呼ぶ』(2019)、渋川清彦、マヒトゥ・ザ・ピーポー、イッセー尾形が出演した『破壊の日』(2020)に続き、今作『全員切腹』がその最新作となる。

豊田監督のデビュー作である『ポルノスター』(1988)から始まり、代表作とされる『青い春』(2002)、『ナイン・ソウルズ』(2003)という通称「青春三部作」が描いた世界から一変、まるで映画かのように、あまりに大きな変動を世界レベルで迎えたコロナ禍の現在に向き合い、世に放たれた「狼蘇山三部作」。そこに込められたメッセージとは?

訪れた観客たちから様々な感想や、質問が投げかけられ、真摯にそれに答える二人の姿が印象的だった舞台挨拶での一コマをここに掲載する。

 

SPECIAL TALK REPORT:

豊田利晃
×
窪塚洋介

Text & Edit:Takatoshi Takebe [ LIVERARY ]
Photo:Shota Kato [ LIVERARY ]

 

 

-窪塚さんに質問です。この映画を見て、ご家族の反応はどうだったんですか?

窪塚:「これは天才だな」って言ってました。自画自賛じゃなくて実話です。

豊田:周りの友達から「『お前、インスタライバーだと思ってたら、役者やったんやな〜』って冗談を言われたりした」って言ってましたよね。

窪塚:「そうそう、もともとそっちの筋から来たんだけどね」って返しをよくしています。でも、本当に今までの中で一番、周りからの反応は良いです。監督も言ってくれたんですけど、「窪塚の代表作を作ろうと思った」って。文字通り、自分の代表作と言える作品になったかなと思ってます。

 

 

-窪塚さん以外にこの映画の主役にハマる人はいないかな〜って思ったんですが、もし、窪塚さんがこの役を受けなかったら、監督はどうしていたんですか?映画そのものの制作も無しになっていたんでしょうか?

豊田:「無しにする」って考えはなかったですね。絶対やるでしょって思ってました。巻物に出演オファーを書いて、郵便で送ったんですよね。

窪塚:もう「逃さねえぞ!」って感じですよね。

豊田:(笑)。

窪塚:届いたとき、「なんだろう?これ」って思って、茶封筒に巻物が入ってて。直筆の毛筆ですごい長い文章が書いてあって、最初これ脅迫状かな〜って思ったんですけど、よく読んだら、あ!これ映画の出演オファーだ!ってなって。こんなに素敵な出演オファー初めてだな〜って思って、受けさせてもらおう、と。で、わざわざ大阪まで話に来てくれて、「撮影は1日で終わるから」って言われて。でも、結局2日かかったんですけどね(笑)。あっという間の二日間でした。

 

 

-今のコロナ禍時代に対するメッセージが込められた映画だと思いますが、お二人にとってこのコロナ禍での生き方に対するお考えなどを教えてほしいです。

窪塚:ピンチはチャンスだと思ってます。皆、何でもコロナのせいにしまくってますけど、お腹が痛い、電車に遅れた、財布を忘れた、飲みすぎちゃった、とか。全部なんでもコロナのせいにできる時代になってると思うんですが、誰かのせい、コロナのせいにしてるのはもったいないので。逆に、コロナの時代だからこそ映画を作ろうと思った豊田監督のように、ピンチをチャンスに変える気持ちで、元気で、前向きにいようってことは絶対忘れないようにしたいです。いつコロナが収束するのか?ITがどこまでいっちゃうのか?とか、ここから先のことがわからない世の中で、まずは自分が、誰かのせいやコロナのせいにしない、そういう姿を見せることがメッセージになると思っていて、自分の子供含め、未来を担っていく子供たちに見せていきたいですね。

豊田:壁には必ずどこかにドアがあるって思っていて。僕は常に、ドアを探しています。この壁をどうにかしてくぐり抜けることができないか?って。それが映画監督としての、自分の真髄のように思っています。そうやって映画を作っている日々ですよね。

(ここから話題はSNSでの誹謗中傷の話に・・・)

豊田:先日、話題になっていた「NAMIMONOGATARI」とかもそうですけど、フェスとかに対して皆、SNS上で批判するじゃないですか。もちろん、コロナに対するいろんな問題意識があるとは思うんだけど、その中に、人が楽しそうにしていることに対する妬みのようなものを感じてしまうんです。

窪塚:SNSって、匿名の状態でみんなで石を投げる、みたいなカルチャーあるじゃないですか。僕ら芸能人とか俳優ってみんなのお手本たるべきみたいな。みんなと同じことができなかった奴らに対して、御門違いな期待がのしかかってきているような時代だと思っているんで、そういう風潮に対してのカウンターになるように生きていたいな、とも思いますね。

豊田:昔の映画俳優だと、石原裕次郎も勝新太郎も物凄いエピソード残ってますもんね。

窪塚:あの人たちに比べたら、僕らの世代なんて真面目過ぎますよね。みんな自分自身が楽しむために生きて良くって、誰かのために生きているわけではないって思うんですよね。それと同時に、そういう妬みだったり、ひがみだったり、自己顕示欲だったり…いろんな感情のバランスをとっていけるのか?っていうゲームをやっているような気もしていて。

僕とかはこうして映画に出させてもらって自分自身を表現して発散する場を与えてもらってますが、SNSも表現したり発散したりできる場だとは思っていて、時代的には発散しやすくなっている半面、最初の一歩が違う方向に向いてしまうと、逆にSNSそのものがストレスの場になってしまったりしているのかなって思います。

「タイトルの『全員切腹』の「全員」は、本当に「全員」なんだ!我々一人ひとりのことなんだ」って監督が言ってたんですけど。上の人も下の人もなくて、全員なんだって。そこに気付けたらもうちょっといい世の中になるのかなって思いますね。

 

 

−作品を観終えて、この映画には「救い」のようなものが入っていると感じたんですが、そういうことは意識して作られたんですか?

豊田:僕自身そういう映画が好きなんですよね。わかりやすいハッピーエンドだと逆に気が重くなっちゃうんですよ。残酷な映画なんだけど、最後に「希望」だったり「兆し」みたいな何かそういうものが残されていると、観終わった後の気持ちがいいなって思うんです。

窪塚:豊田監督の作品って、「希望」っていうか自分の芯から「生きる力」が湧いてくるって感じがしますね。

豊田:昨日の舞台挨拶で、「この映画は『怒り』が原動力になってる映画なんですか?」って聞かれて、「はい、そうです」って答えたんですけど…その後、ずっと考えこんじゃって、「怒り」ってだけじゃないな〜って思って、「震え」だなって気づいたんですよ。「怒り」に「震え」たり、「喜び」に「震え」たり。何かそういう最初に感じた感情の「震え」が届けばいいなって思います。

 

切腹ピストルズ、中込健太 × 住吉佑太(鼓童)、照井利幸、中村達也、ヤマジカズヒデ、Mars89といった錚々たるミュージシャンたちが同作の音楽を担当。

 

窪塚:「震え」で思い出したんですけど、映画を観てくれた知り合いから「この映画って4Dなの?」って言われて、「座席が振動してすごかった」って。「いやいや、それは(映画の)低音の振動だから」って話しをしてたんですけど。豊田監督って、音楽にものすごくこだわってるんですよね。でも、その知人が感じた音による「震え」って劇場だからこそ感じられたものであって。映画って、例えばTVだってiPhoneでだって観れるんだけど、やっぱり劇場で観てほしいなって思いましたね。

豊田:映画館はやっぱりでかい音と巨大なスクリーンを目の前にして、暗闇の中で、知らない誰かと一緒に時間を共有するっていう体験で。それってすごく記録に残るものだと思うし、特に配信世代の若い人たちにこそ体験してもらいたいなって思いますし。だからこそ、若い人たちに見てもらえるような映画をこれからもガンガン作っていきましょうかね。

窪塚:お供します。

 

 

最新作『全員切腹』は学生・一般一律1000円で鑑賞が可能。さらに、「狼蘇山三部作」シリーズの、『狼煙が呼ぶ』(2019)、『破壊の日』(2020)と合わせて3本見られる回(〜9月16日まで)も設けられている。見逃してしまった方もこの機会に、三部作全て体験してみてはいかがだろうか。

 

イベント情報

2021年8月27日(金)〜
『全員切腹』
監督・企画・脚本・プロデューサー:豊田利晃
プロデューサー:村岡伸一郎
撮影:槇憲治
キャスト:窪塚洋介、渋川清彦、芋生悠、ユキリョウイチ、飯田団紅
音楽:切腹ピストルズ、中込健太×住吉佑太(鼓童)、照井利幸、中村達也、ヤマジカズヒデ、Mars89
音響演出:北田雅也
編集:村上雅樹
デザイン:大橋修
スチール:名越啓介
題字:飯田団紅
宣伝プロデューサー:奥田アキラ
アシスタント・プロデューサー:久永光、翁長穂花
製作:豊田組、CCP、©、豊田組
https://www.toyodafilms.net/zeninseppuku

上映劇場:名古屋パルコ東館8階 センチュリーシネマ (地下鉄矢場町駅 東館B1階直結地下通路)
http://www.eigaya.com/
問:052-264-8580

豊田利晃
1969年大阪府生まれ。1991年、阪本順治監督『王手』の脚本家として映画界にデビュー。1998年、千原浩史(千原ジュニア)主演『ポルノスター』で監督デビュー。その年の日本映画監督協会新人賞、みちのく国際ミステリー映画祭’99年新人監督奨励賞を受賞する。2001年に初のドキュメンタリー映画『アンチェイン』を監督。2002年には人気漫画家・松本大洋の原作『青い春』(主演:松田龍平)を映画化し、大ヒットを記録。ドイツのニッポンコネクション映画祭で観客賞を受賞。2003年『ナイン・ソウルズ』(主演、原田芳雄、松田龍平)2005年、直木賞作家角田光代の原作『空中庭園』(主演:小泉今日子)を監督。2006年には、アテネ国際映画祭で全作品レトロスペクティブ上映されるなど、国内のみならず世界各国から高い評価を受ける。また、中村達也、勝井祐二、照井利幸と音楽ユニット「TWIN TAIL」を結成。ライジングサン・ロックフェスティバル他、現在も活動中。2009年に中村達也主演『蘇りの血』を、2011年に瑛太を主演に『モンスターズクラブ』、2012年には藤原竜也、松田龍平が主演する『I’M FLASH!』。2013年、NYで行われた日本映画祭JAPAN CUTSで世界を魅了する業績を残した監督へ贈られるCUT ABOVE AWARDを受賞。2014年には東出昌大主演『クローズ EXPLODE』を監督。2015〜16年舞台『怪獣の教え』(窪塚洋介、渋川清彦)を演出。2018年、『泣き虫しょったんの奇跡』(松田龍平、松たか子)。写真集『MOVIE STILLS FROM TOSHIAKI TOYODA 1998-2018』を刊行。2019年、短編映画『狼煙が呼ぶ』(渋川清彦、浅野忠信、高良健吾、松田龍平、切腹ピストルズ)。全国50館のミニシアターで初の同日公開を成し遂げる。自伝『半分、生きた』を出版。2020年、『プラネティスト』(窪塚洋介、GOMA)が4月に公開。7月24日、『破壊の日』(渋川清彦、マヒトゥ・ザ・ピーポー、イッセー尾形)が公開。イタリアのオルトレ・ロスペッキオ国際映画祭2020で監督賞を受賞。2021年2月、日野浩志郎と鼓童の音楽映画『戦慄せしめよ』が配信で公開。

窪塚洋介
1979年5月7日生まれ。神奈川県横須賀市出身。1995年「金田一少年の事件簿」で俳優デビュー。 その後2000年「池袋ウエストゲートパーク」の怪演で注目される。2001年公開映画「GO」で第25回日本アカデミー賞新人賞と史上最年少での最優秀主演男優賞を受賞。その名前を一気に広める。以降、映画「ピンポン」「凶気の桜」「Laundry」「Monsters Club」など数多くの映画に出演。2015年11月には豊田利晃監督の初演出による舞台「怪獣の教え」に主演。2016年9月には再演も行われた。2017年に公開された「Silence-沈黙-」(マーティン・スコセッシ監督)では、物語の鍵となる”キチジロー”を演じ、ハリウッドデビューを果たす。2019年公開のBBC×Netflix London制作の連続ドラマ「Giri/Haji」。「最初の晩餐」では、高崎映画祭、日本映画批評家大賞で最優秀助演男優賞を受賞し、高く評価された。他、「PLANETIST」「破壊の日」「みをつくし料理帖」、「ファーストラヴ」が公開。2020年から”カラダにいい、ココロにいい、ホシにいい”をテーマに YouTubeで『今をよくするTV』を配信。

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