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FEATURE / 特集記事 Apr 19. 2014 UP
“普通”であることを貫いたロックバンド・シャムキャッツ。Gt&Vo 夏目知幸が語る、この4人だからこそのスタンダード。そして、最新作『AFTER HOURS』について。

Special Interview : Tomoyuki Natsume (SIAMESE CATS)


シャムキャッツの最新作「AFTER HOURS」は、
“郊外都市” や、“地方(ローカル)” が作品の大きなテーマになっている。

今年、2月のKDハポン・ワンマンライブのMCで、そんな話をしていたボーカル/ギターの夏目君。
(写真:左から3人目)

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あくまで、最新アルバムの取材をメインに、とは思っていたものの、話題は、むしろ今作に至るまでの経緯、シャムキャッツというロックバンドが転がってきた、その転がり方と、その中で大きな転機となっていた名古屋KDハポンでのライブについて…などなど。

 

バンドの魅力を、ライブか、曲か、の二元論に収めてしまうならば、ついにその両方を手にしたとも言える、シャムキャッツ。現在地に至るまでの葛藤と苦労を越えて前進させた強度は、一見して「普通」な彼らのどこにあったのか?

Text & Edit by Takatoshi Takebe[THISIS(NOT)MAGAZINE , LIVERARY]

ーーー

 

 

<高学歴と音楽歴>


―僕、シャムキャッツの菅原君とはけっこう絡んだことあるんですが、夏目君と今までそんなに話し込んだことがないんで、今日はいろいろ聞いていきたいと思います。よろしくです。


 

よろしくおねがいします。


—じゃあ、最初、夏目君と話した感じの第一印象から。夏目君の話し方って、すっごく真面目で、シャツのボタンを襟まで留めちゃってるくらいの、ちょっと堅すぎるくらいのイメージがあるんですよね。いわゆる、インテリ感っていうか…。ちなみに、大学とかいいところいってそうですけど、どこだったんですか?

 

えっと、僕は、早稲田ですね。
 

—わ、やっぱり(笑)。

 

ちなみに、シャムキャッツのメンバーは、みんな大学はバラバラなんですけど、東京(のミュージシャン周り)って、割と早稲田とかの人多いんですよ。でも、みんな大学在籍中には出会ってなくて、バンドやりはじめてから「あ、○○大、出身なんだ!」みたいな。

 

—もともと僕、日本のロックで最初に聞き出したのが、「
くるり」とかなんですよね。「くるり」も立命じゃないですか。やっぱロックスターになるにも、学歴が必要なのかな〜って思ってしまいました(笑)。ちなみに、夏目君は、早稲田大に難なく入れたんですか?



いや、僕、高校からもう早稲田だったんですよ。高校受験受ける時に、「もう大学受験は本当にしたくない」と思ってて。受験が嫌すぎて絶対付属(高校)に入ろうと思ってて。都内の付属の私立高ばっか受けようと思ったんですけど、早稲田だけ大学でいうところのAO入試みたいなのがあって、書類と面接だったんですけど。で、面接いったら「夏目っていう苗字、珍しいよね」っていう話で30分間終わって、そしたら入れちゃって。偏差値的には足りてなかったんですけどね、全然。

—「夏目っていう苗字、珍しいよね」だけで30分間、話題を引っ張れたことに驚きです(笑)。ちなみに、シャムキャッツは、大学がバラバラだったてことなんですが、高校の終わりくらいに、この4人でバンドやろうっていう話にはもうなっていたんですか?

そうです。で、(メンバーのうち)2人が1年間浪人していたんで、彼らを待っていたんだけど、逆に僕とバンビ(大塚)は大学の生活が忙しくなってきていて。一応バンドはやっていても、大学生活しながらだと、バンドを生活の中心にしていこうっていうスタイルにはさすがにもっていけない。そんなイメージもわかないし。僕らはその…ライブハウスとかに行くタイプの青年じゃなかったから。伝手も繋がりもなかったから。ただ本当に大学に通っている子たちがバンドやりたいよねってスタジオにたまに入るというくらいの感じでした。結局、シャムキャッツがちゃんと動き始めたのが、ほんと僕が就職活動を諦めた時で。やっぱりバンドやりたいって思い立って。就職活動で、履歴書とかに志望動機って書くじゃないですか?そこに「バンドがやりたい」しか、書けなかったから。もう、だめだって(笑)。

—たまにスタジオ入る、くらいのゆるい活動ペースのバンドであっても、このバンドをもっと頑張っていきたい!って何で思えたんでしょう?不安ではなかった?

 

4人そろった時のフィーリングがすごいよかったっていう。それだけですね。

 
—単純に楽しいとか?

 
そうです、そうです。明らかに自分たちがやっていること、やろうとしていることは他とは違うな!っていう自信みたいなものだけはあったんで。

 
—ライブもしていたんですか?スタジオ入るだけ?

 
ライブはたまにしていました(笑)。でもちゃんとやろう!ってなってからは月一とかで、ノルマ(出演料)も払ってライブやり続けていました。誰にも見つからないまま(笑)。

 
—最初に誰に見つかったんですか?シャムキャッツって。

 
ちょうど同時期に、(音楽ライターの)岡村詩野さんと、トクマル(シューゴ)さんに見つけてもらったんですよ。岡村さんは大学の講師で来ていて、「このあと飲み会あるから」って呼ばれて行ってみて…たまたま僕の隣くらいに座っていて。2007年くらいかな。ちょうど自分達のデモを作っていたんでなんとなく「聞いてください!」って渡してみたら、そのときのベストソングみたいなのに僕らの名前あげてくれていたんですよ。そんなこと起きると思っていなかったから。「マジか、岡村さんが!」って。トクマルさんとの出会いはネットで。そのとき、ちょうどmyspaceが流行っていたんですよね。それで、トクマルさんにフレンドリクエストしたら、大体フレンドリクエストしたら、「OK」っていう通知がくるだけなんですけど、さらにメッセージが送られてきていて「最近のバンドで、一番興奮しました!」みたいな…。それで調子に乗って、そのあとトクマルさんのライブに行って、音源を渡して。

—なるほど。見つけてもらったっていっても、ライブハウスでたまたま見て…とかじゃなくって、お二人ともシャムキャッツとの出会いが、myspaceにしても、デモ音源にしても、入り口が「曲」からなんですね。


そうっすね〜。

<ソフトとハード。作品づくりとライブの関係性

—最近だと、「なんだかよくわからないけどとにかくライブがすごい【らしい】!」っていう噂を誰かがTwitterとかのSNS上にあげて、それがどんどん拡散されていって、話題になっていくパターンのバンドが多い気がしていて。なんか純粋に曲がいいから聞いてみて、それが広がっていくっていうのが「普通」だったはずなんですよね、きっと。まずちゃんと音源をつくる姿勢っていうか。なんか、僕はそっちのほうがなんとなく健全な音楽の広がり方なのかな〜って思います。ちなみに、トクマルさん、岡村さんはライブも見にきてくれたり?

 
来てくれました。でも、僕ら、結局、音源つくってはいたけど、ライブは最初全然よくなかったんですよ。ほんと、ただステージに立って、一曲ずつ演奏して、帰る…みたいな(笑)。どうやったらライブがよくなるかとか、悩んでいたり、手探りでしたね。僕は、全然ライブとかにいかないリスナー気質だったので、とにかく想像だけでライブをやってたんです。

—それって、有名な外タレとかの来日ツアーとかも行かないみたいな?

ほとんど行ってないです。とにかく音源をずっと聞いてるっていう。不思議なことにライブにいくっていうアイデアさえなかったんですよ。高校のときも、ストロークスとか大好きだったんですけど。ずっとCDは聴いてたんですけど、ライブを見に行こうってならなくって。iPodで音楽聴くだけで、自分の中の音楽が完結しちゃってました。

—じゃあ、印象深かったライブとかあんまり覚えてないんですか?初めて行ったライブとかなんだったんですか?

コンサートだと「ゆず」ですけど。ライブだとGoingSteadyのライブかな。高校生のとき行きました。そういうのはちょいちょい行ってました。ほんとにすげー、わーってなったのって無いかな。

完全に音源を重要視してたってことですね。だったらもう、曲が良くなかったら、もう何も残らないっていうか、いいとこナシ!っていう考えた方だ。

そうです、そうです。でも、本とか文章は読むんで、無駄に変な情報だけは入ってます。バンドの思想とかイズムだけがどんどん蓄積されていってました。

(笑)。活字で音楽を読むタイプですね。

だから、インタビュー読むのとか昔から好きでした。それこそ、「SNOOZER」とかはちょいちょい読んでたから、タナソー(田中宗一郎:rockin’ onを経て、雑誌SNOOZERを立ち上げた音楽ライター)に最初会うときはドキドキしたな〜。怒られるって思って(笑)。


※「SNOOZER」無き今、タナソー氏は現在、「sign magazine」というWEBマガジンをやっています。ちなみに、こちらにもシャムキャッツのインタビュ—記事が載っています。

だから、もともと、ライブしたいからスタジオ入ってたっていうよりは、曲を作りたくてスタジオ入ってたって感じだったんで、尖るにしろ、曲で尖らなきゃ意味がないっていう。服装一つでも尖ってると、そこばっかりが引き立っちゃうじゃないですか。だから、なるべく服装も「普通」じゃなきゃ意味がないと思っていて。

 
それに意義を唱えるメンバーとかいなかったんですか?もっとライブやろうよ!みたいな意見とか。
 

いないです。でも、ライブをやらなきゃバンドとしてダメだってことに気付いてからは、メンバー一同で「もっとライブをやろう」ってなって(笑)。でもそうなると、曲ってライブに寄っていくんですよね。ライブに照準を合わせて曲も作るようになっていって、そうすると自然とライブで映える曲が増えていって。だから、1stとかは「ライブでこれどうやってやるんだろう?」っていう曲ばっかりだったんです。で、2nd「たからじま」は、ライブっぽいアルバムになっていきました。昔から知ってる人によく言われるんですけど、「2ndで、シャムキャッツはライブバンドになった」って。だから、2009年1st出してからゆっくりと、段々とライブバンド化していった。いわば、ドキュメンタリーなんです。

2nd Album「たからじま」より、「なんだかやれそう」

失礼ながら、僕は、シャムキャッツの過去の作品はひとつも持っていなくて、今回の3rdアルバムからしかちゃんと聴いてないんですけど…最新作「AFTER HOURS」は、いわゆるライブに直結するような盛り上がる感じの曲と、部屋で適当に聴くか、移動中に流して聞くくらいのライブ映えしなさそうな曲が、半々くらいの割合で入ってないですか?
 

そうです、そうです。
 

1stアルバムで、ライブで再現不可くらいの曲が入ってて、2ndでライブバンドっぽいのを作ったから、ちょうどそこで針が左から右に振れて、でもやっぱりこの辺かなみたいな、ニュートラルなところに針が戻ったみたいなところを狙ったんでしょうか?
 

ほんと、そうです。自分たちなりの、その「丁度良さ」ってのがわかったアルバムなんですよね、「AFTERHOURS」は。今までは、どうしよう?っていう迷いがあったんですけど、ようやく「ちょうどいい温度はココか!」っていうのが掴めたんです。だから、ここから次のアルバム作りが楽しみなんですよ。
 

なるほど、4thアルバムも楽しみです。…でも、そうやって言っておきながらも、結果、全然違うことになるってことはないんですか?夏目くんは、割と計画的な感じなんですか?
 

ひとつ何か終わった後は、次どこいくか?は割と点を打ちますね。遠くに点は打たないんですけど。だから、「バンドの理想はどこですか?」とか言われると分からないんですけど、次、何をやりたいのか?どこに行きたいのか?っていう想像は割と点を打って、メンバーに次はこうしたいって思ってるんだけどって話をする感じですね。何においてもそうですけど、とにかく対話がないとバラバラになると思うんで、バンドって。僕らは喋りますね。何でもいいからイメージを、とにかく言葉で伝えるっていう。
 

みんなで意見言い合う感じなんですか?
 

そういうときは僕ばっかり喋ってます。でも、それに(メンバーが)ちゃんと応えてくれるから。ひとつ言えるのは、シャムキャッツは、僕の理想を叶えるバンドではないんで。次の作品作りとかライブのやり方とか、「自分たちが何をしたいのか」っていうところでの方向性みたい次の点を、僕が指し示すだけで、あとは、好き勝手というか、自由です。

では、今まで活動してきて、一番嬉しかったことって何ですか?
 

んー。まあ日々、嬉しいことはありますよ。アルバムできれば嬉しいし、いいライブできれば嬉しいし、出会いがあれば嬉しいんですけど…。嬉しいことが溢れてはいるんですけど、苦しいことのほうが多いかもしれないです。初めて「今日はいいライブしたな!」って実感が持てた時はよく覚えていて。1stアルバム出した後にツアー回ったんですけど、京都で大失敗のライブをしちゃったんですよ。本当にクソみたいなライブをして。帰りの車で菅原が泣くっていう事件あったんですが(笑)。で、その次の日が、名古屋のKDハポンで。そのハポンでライブしたときが、初めて「いいライブできた!」っていう実感を得た日でした。
 

—ハポンってステージもなくて、客席との境界もないし、中音も出音もも一緒みたいな感じですよね。きっと、いつものスタジオの感じが出せたんじゃないですかね〜?

それはたしかに。大いに言えますね。

ーただスタジオに入っていた期間がゆるゆると長かったって言ってたけど、多分、バンドっていろいろなタイプがあるとは思うけど、大概がやっぱりライブして、お客さんを盛り上げて、そこで達成感とかって得ると思うんですよね。特にインディーズのバンドって。シャムキャッツの場合は、そうじゃなくて、その4人でゆるゆるスタジオ入っていたのが楽しくて、続いてたってことは、そのスタジオの感じとか自分たちのいつものグルーヴみたいなのをそのまま出せたのが、ハポンという環境にぴったりハマったてことなのかな、と。ホーム感というか。

そうですね、きっと。 

—だから、名古屋だと、KDハポンばっかりライブをしてるんだ??
 

他のライブハウスでもやってますよ(笑)。その最初のKDハポンでのライブをコーディネートしてくれたのがジョンのサンの立石くんなんですよね。その時に、たしか紙コップスも出てたかな…。
 

—そうだったんだ!ちなみに、一枚目のアルバムだしたのっていつでしたっけ?

 

2009年なんで……もう、5年前なんだ!ほんと、芸人みたいに若手の期間がめっちゃ長いんですよ、俺ら(笑)。なんかその時代に流行っているものの括りにずっと入れられ続けている。
 

—確かに。何かの雑誌とかの特集とかで、いつまでも東京のニューカマーとして載っていた気がします(笑)。新しい括りに入れてもらえつづけるって、期待され続けているってことなのかな〜。

 

オワリカラとかSuiseiNoboAzとかSEBASTIAN Xとか、その辺りのインディーズ・バンドをくくって「東京ニューウェーブ」っていうジャンル分けみたいなのがその当時あったんですよね。そん中に、実は俺らも入っていましたね、なぜだか。

 
—僕が、ずっと思っていたのは、シャムキャッツの「特異性」をあげるとしたら、至ってフォーマットが「普通」であるってことだと思うんです。いわゆるボーカル/ギター/ベース/ドラムっていう4ピースだけで成り立っている「バンドっぽい、バンド」でかっこいい!っていうバンドが、逆になかなかいないんじゃないかな〜って。みんな、むしろ特異性を作り出そうとしているような。

なるほど。

ー例えば、ライブパフォーマンスが派手だとか、なんか特殊な楽器を使ってライブしていてそれがヤバい!とかっていうハードとかフォーマット自体に特異性を持たせちゃうっていうか。逆に、さっき言ってたみたいに、ステージに立って、ただ曲やるだけじゃ、もう曲がよくないと誰も見向きもしてくれないわけですよね。だから、僕は、シャムキャッツは「普通」なのにかっこいい!ってすごいことだし、今や希少なロックバンドだ、って思ってます。


そんな風に全然、言われないし、見られてないみたいなんですよね。確かに、僕はハードを変えるのは好きじゃないんですよ。やっぱりなるべくハードはシンプルにしたいですよね、その方が潔ぎがいい。でも、それってロックバンドがやりたい、という思いよりは、自分がやりたい音楽のスタイルが、この4人でやっていくことだった、みたいな感じでもあるんですけど。
 

—現メンバーの4人じゃなかったら?例えば、メンバーが一人でもかけたらもうシャムキャッツではない、みたいなのあるんですか?

 
一応、メンバーが一人でも欠けたら解散っていうのは前提ですよね。

 
—なるほど。さっき嬉しいことより、苦しいことのほうが多い、って言ってたのは、もっと売れたい!とかそういう話ですか?

よくインタビュアーのひとに「
売れたいんですか?」みたいなことは聞かれるんですけど、
いつも回答に困るんですよね。なんでかっていうと、
売れたいのは売れたいし、だからといって、
そのために音楽をやってるわけではないから。
その両方っていうか。

ーじゃあもっと単純に曲のアイデアが振ってこない〜っていうような悩みとか…?

そもそも、そんなに曲が簡単にできるなんて思ってはいないから(笑)、出てこなくても別にそれが、普通って思えるんですけど。根本的にはロックバンドなんだから、自分たちが信じている音楽をやって、それが世の中に通用しなかったら、もうやめるしかないっていう。で、本当に通用しなかったらすぐやめれると思うんですけど、通用っていうか、もう誰にも響かなかったら。でも、そうじゃないっていう実感があるし、そもそも普通のバンドとは違う始まり方だから、成長曲線も普通のバンドとは違うだろうっていう話をメンバーともよくするんですけどね。だから、周りの成長に歩幅を合わせることもないし、成長させてくれようとする人が現れて「バンドっていうのはこう成長していくから、こういう戦略でやっていこう」って言われたとしても、そんなのに乗っからなくてもいい!って思っているんです。…っていうか、そういうスタイルでやらないとバンドやってる意味がないような気がしていて。

—じゃあ、アルバム出すタイミングとかもリリースのスケジュールが組まれていて、そこに照準を合わせて制作していく、とかってわけではない感じですか?

そこは、レコード会社とかに何か指示されたとかはなくて、自分たち的に一番いいものが出せるタイミングだったから出すっていうだけです。1stアルバム「はしけ」から、次の2nd「たからじま」出すのに時間をかけちゃった時点でそういうちゃんとしたスケジュールからはちょっとズレちゃってると思うんですよね。僕らは、デモ出して、1stアルバム出した後に、またもう一回デモ出してって、そこでまず一歩戻ってるんですよ。

—それはなんで?

1stアルバムを出した当時は、まだライブのやり方もわからないままやっていて、とりあえずレコ発ツアーをやってみたけど、こっから先、どうしていったらいいかわからなくなってしまって。伝手もつながりもないし、でも大人が結構絡んできちゃったから、よくわかんない企画とかに誘われるわけですよ。で、「これじゃいかん!」ってなって、2009年の9月にアルバムを出したあと、沈黙が続くんですが、2009年の終わりに僕がメンバーに「もう1回デモからやり直そう」って言ったんです。で、2010年は「DEMOSINGLE SERIES」と銘打ったCD-R作品(4曲入り)を3枚出したんですよ。それに、「渚」とか入ってるんですけど。
 

※「渚」は今もライブでは欠かせない、シャムキャッツを代表する名曲のひとつ

 


―デモ音源っていう原点に立ち返ったことで、シャムキャッツは再起動したわけなんですね…。普通に、1st出した後、2ndアルバムの制作に向かっていたら、もしかしたらバンドがダメになってしまっていたかもしれないですね。

だから、僕らは変な流れなんですよね〜。2009年に1stを出して、2010年はデモを3枚出して、次は、2011年にミニアルバムを「自主制作盤」で出すんですよ。でも、やっぱり自主盤じゃ拡げにくいなっていうことで、2012年の終わりにやっと2ndの「たからじま」がP-VINEから出るんですよ。「たからじま」の流れを2013年の始めまでやって、そして、2014年に、今回の3rd「AFTERHOURS」が出るっていう。


1stアルバム「はしけ」(2009年)、mini Album「 GUM」(2011年)、2nd「たからじま」(2012年)

はしけGUMたからじま


最新アルバム(3rd)「AFTER HOURS」(2014年)

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<「AFTER HOURS」が見せる景色とは>

―では最後に、既に他のメディアからも沢山聞かれていると思うんですが、今回のアルバムのテーマが「ローカル」とか「郊外」ってのがキーワードだって聞いたんですが、そこらへんの話を教えて下さい。

最初にイメージしていたのは、地元の千葉でした。実家が浦安で、最近、実家が引っ越したんですよ。千葉の内陸部に…っていうのも(震災後の)液状化現象がすごくて、ここにはもう住めないっていう判断を親はして、引っ越したんです。多分、もう一回、地震来たらもっとヤバくなるし、だから、もしかしたら浦安ってどんどん人がいなくなるかもしれないと思って、そしたら、僕たちが青年期に過ごしてた故郷の街が変わるというか無くなってしまうわけじゃないですか?だったら、ちゃんとそういう景色を思い出せるものを音楽作品っていう形でも残しておかないと、自分たちの風景が消えちゃうなって思って。で、それでそういうイメージからアルバムを作り出したんです。だから、自分たちとしては具体的な場所とか、人物とか全部、想定して曲を作っています。郊外のイメージって、それぞれ違う土地であっても、イメージをぽんぽん出して行くと意外と全部共通した、統一された景色を想起させるんですよね。名古屋も中心部から、少し郊外へ出れば、高速道路バンバン走っててとかでかい道路があって、でかい川が流れてて…とか、そういう郊外の景色ってどこにでもあると思うんです。広島もあったし、大阪もあるし。そういう郊外都市やベッドタウンに住んでる人たちの歌であり、そういう土地に対するレクイエムです。

—郊外地域って、平穏で淡々としたイメージですか?

 

割と平穏なんですけど…何かその平穏に隠れて、孕んでるものがある、みたいな?

—うんうん、ありますよね。何かの小説で、<残虐で凶悪な事件ほど、平穏で何も無い田舎町で起こる>みたいなことを読みました。一見して普通なんだけど、見えない部分に、何かあるって感じ。

中途半端だしね。ド田舎より、都心より、郊外が一番、ヤンキーが多いって思うんです(笑)

—なるほど、なるほど。



あと、どこで読んだ記事か、分からないんですけど、「ヒップホップは郊外の音楽だ」っていう…。

—それ、都築響一さんの本(『ヒップホップの詩人たち』新潮社刊)ですね。僕も読みました。

その記事を読んで思ったのは、ロックもそうなんじゃないかなって。俺らも郊外出身だし。都市型じゃないなっていうのが自分たちにあったので、常に。

—都市型の人は何やるんですかね?エレクトロとかやるのかな?

でもどっちかだと思ってて、要は地方出身者で東京出てきた人って結構、都会っぽいものを逆にやったりするでしょ?それこそさっきの話、ハード(外面)が強めのバンドを組んでとか…。で、東京で生まれて東京で過ごして東京に暮らしてる人たちの音楽って、ちょっとした余裕があるじゃないですか。スチャダラパー然り。

—やっぱり地方から出てきた人たちって、東京にいつまでもいられないっていうプレッシャーみたいなのがあるから、早期決着をつけるために、ハードをかっこよくするのかもしれないですね。

勝負感がね、ハードに出るんですよね。僕らちょうどその中間のものをやりたかったっていうか、東京の空気も十分感じてとってるんですけど、ちょっとそこから距離をおいた感じ、のイメージですね。

 

———

 

あくまで、ハード(外見やパフォーマンス)じゃなくて、しっかりとソフト(曲)で勝負しようとしてきたシャムキャッツが、だからこそ葛藤し苦しんだ末に行き着いた前作「たからじま」。

そして、今作「AFTER HOURS」で選んだ「郊外都市」というテーマ。大都会でもド田舎でもない位置づけの「郊外都市」というキーワードと、この作品の完成とともに、2ndで振り切った針をニュートラルに戻し、丁度良い位置を見定めたバンドのスタンス。

作品とバンド、双方の内面性が絶妙にリンクしているように思えたのは、決して気のせいではないはず。

●このインタビューの翌日に行われた、いわば「AFTER HOURS」な特別対談「シャムキャッツ夏目君×ジョンのサン立石君」の記事は後日upします!お楽しみに〜!

 

 

 

そして、


4/20今夜、シャムキャッツは、最新作「AFTER HOURS」リリースツアー名古屋ワンマンライブを敢行!

今回は、KDハポンじゃなくて、TOKUZOです。お間違いなく(笑)!
果たして、どんなライブになるのか?!

詳細は下記↓

イベント情報

2014年4月20日(日)
“シャムキャッツ『AFTER HOURS』release tour
supported by jellyfish”
愛知・今池得三
開場18:00 / 開演19:00
前売2,800円(1ドリンク別) / 3,300円(1ドリンク別)
※プレイガイドで購入された方には「ご飯」缶バッジをプレゼントします

——————–

2014年5月11日(日)
“森、道、市場2014″
@蒲郡市大塚海浜緑地
開場10:00/終演20:00
<事務局特別販売>
1日券¥1,500/2日通し券¥2,800
<プレイガイド販売>
1日券¥1,700/2日通し券¥3,200
出演(5月11日):
シャムキャッツ / Sugar’s Campaign / THE ACT WE ACT / RHYMESTER / トクマルシューゴ / ハンバートハンバート / YOUR SONG IS GOOD / Galileo Galilei / 栗コーダーカルテット / 0.8秒と衝撃。 / DE DE MOUSE / EYE / PUNPEE

出演
シャムキャッツ (ワンマン公演)
チケット
e+, ローソン(46696), ぴあ(225-100)
チケット発売中
問い合わせ
jellyfish

シャムキャッツ/
藤村頼正 (Drums&Chorus) 、菅原慎一 (Guitar&Vocal) 、夏目知幸 (Vocal&Guitar) 、大塚智之 (Bass&Chorus)による、東京を中心に活動している4人組ロックバンド。 2009年4月に1stフル・アル バム『はしけ』をリリース。その後、自主制作で連続リリースしたCD-R作品(全3作)「DEMO SINGLE SERIES」、シングル「渚」「サマー・ハイ」は全てソールドアウト。2011年にミニ・アルバム『GUM』をリリース。 2012年12月、P-VINE RECORDSより最新フル・アルバム『たからじま』をリリース。収録曲”SUNNY”がテレビ東京系「モヤモヤさまぁ~ず2」のエンディング曲に起用される。代官山UNITでのワンマンやアンコール・ツアーが大好評のうちに幕を閉じた「たからじま リリースツアー」以降も、ASIAN KUNG-FU GENERATION主催「NANO-MUGEN CIRCUIT 2013」ツアーファイナル東京公演への出演をはじめとし、各地のフェスティバル/イベントに出演。 2013年夏以降は京都のバンドTurntable Filmsと制作したスプリット12インチアナログシングルを引っ提げて全国ツアーを開催。2014年1月29日、シングル「MODELS」を発売し、ワンマンツアー「GO」を開催!2014年最新3rdアルバム「AFTER HOURS」をリリース。

http://siamesecats.jp/

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