【MOVIE COLUMN】text_浅野裕介(from asana)
LIVERARYをご覧の皆様はじめまして。
私、ちょうど3年ほど前から今池のとあるジャズバーでレコード寄席というものをやってまして。毎月テーマを決めてはそれにまつわるレコード、話のネタを用意してもう一人の相方とフリートークするという、まあ居酒屋での音楽談義の延長線上ともいえる楽しいものなんですが。
で、今年に入って店のマスターから映画をテーマにトークイベントをしないかと誘われ、映画大好きだったものですから喜んで引き受けた訳です。なにせやってたレコード寄席のタイトルも「地獄のレコード黙示録」とこれコッポラ監督のあの映画から取ってるものですから、まあ因果というか。
イベントのタイトルは「ファントム・オブ・シネマ・パラダイス!!」。僕が最も敬愛するといってもいいブライアン・デ・パルマ監督の名作から引用しました。
今年の2月から各月で始めて、次回11月で早9回目を迎えます。最初は開催場所がジャズバーという事もあり”映画とジャズ”というテーマでシネジャズに関してやりました。日本でも近年リメイクされた金字塔「死刑台のエレベーター」に代表されるシネジャズ。50年代~60年代~70年代~80年以降とディケイドを分けて3ヶ月に渡ってやったのですが、お客さんも沢山入り概ね好評でした。
それから官能映画、ロードムービー、恐怖映画、アートフィルム、実験映画特集と順にやりまして、今回は、読書の秋ということで”文藝映画特集!”と相成りました。
文藝映画っていうと皆さん何を思い浮かべますかね? 最近だと「ノルウェーの森」とか?、村上春樹さん原作でいうとデビュー作の「風の歌を聞け」も映画化されてますね。
最近見直したのは大好きな勅使河原宏監督の「他人の顔」。原作は安部公房。
この監督、元々華道の家元という珍しい方で素晴らしく芸術的な映画を3本ほど撮った後、さっさと引退して本元の華道家になりました。(80年代に監督復帰)どの作品も素晴らしく特に代表作「砂の女」は自分の生涯のベストに間違えなく入るであろう、とても美しく官能的な作品なんですが、
他人の顔は昔観た記憶はあるものの全然思い出せなくて、また観たいと思っていたんですよ。
いや~やっぱ面白かったです。他の作品もそうですがまずオープニングからして格好いい。いい作品は出だしから引きつけるものです。そして武満の緊張感溢れる音楽、最高。
武満徹や安部公房がドイツ料理屋(実在していた)の客としてカメオ出演しているとか、京マチ子がエロいとか、岸田今日子の看護婦姿がいいとか(この頃の岸田今日子さんってUAさんに通じるような野生のエロスが溢れ出していて堪らないです、その手が好きな人は「砂の女」も必見)若い頃の田中邦衛が精神病患者の役で出てるとか、市原悦子が知恵おくれの子の役で出てくるんですが異様なテンションで怖いとか(笑)見所も沢山。
市原悦子といえばこちらも名作、ゴジこと長谷川和彦監督の「青春の殺人者」(原作は中上健次)の母親役も思い出してしまうんですがとにかく圧倒的なテンションで観るものを凍り付かせる、まあ演劇的ではあるんですが、なにか動物めいた凄まじいものがありますよね。ATG(日本アートシアターギルド)関連映画に限らずこの時代の映画はとにかく熱量が半端ないので観れるものは全部観ておいて損はないと思われます。
で、「他人の顔」に話は戻りますが、あの大ヒットしたハリウッド映画「フェイスオフ」はこれからインスピレーションを得たらしいです。安部公房は海外でも人気の作家ですしね、ハリウッド映画って日本の小説を原作にした映画も沢山ありますよね。
もし自分が他人の顔をつける事が出来たら。自分の人格を決定つける”顔”を入れかえる完璧な仮面ができてしまえば、あっという間に社会秩序は崩壊するであろう。他人の目の判断によつて、自と他と区別する”顔”というものに深い洞察を加えていくこの映画、全編を通して芸術家の家系の監督としての格調の高さがありました。
文藝映画は他にもロベールブレッソン的な抑圧された観念劇で不思議な余韻を残す新藤兼人監督の”こころ”(夏目漱石原作)や谷崎潤一郎作品は「痴人の愛」、「刺青 」、「卍」 (増村保造監督)、 「細雪」、「鍵」(市村崑監督も良いが川島なおみが出演してる90年バージョンもなかなか・笑)、など沢山の監督によって何度も映画化されてますし、言い出すと切りがないので止めますが豊潤にあります。
原作の魅力そのままに、活字を優れた映像に置き換えた文藝映画があれば、原作を大胆にアレンジした監督の個性が刻まれた映画ならではの表現に満ちた作品も。原作を読んだうえで観るのも醍醐味。読んでから見るか、見てから読むか(by 角川文庫)
・・・
というわけで、次回の全方位型映画トークイベント として、名古屋近辺に生息する映画フリークスたちが集まり、各テーマにまつわる映画の魅力、その偏愛を語るトークイベント。
ファントム・オブ・シネマ・パラダイス!!!
映画好きな方は是非遊びに来てくださいね! って結局は宣伝かい!(笑)
ちなみに敷居は全く高くないです(笑)
志は高いですがっ!
(写真左:軽快なトークを披露する、浅野氏)
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