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FEATURE / 特集記事 Nov 18. 2020 UP
【SPECIAL INTERVIEW】
名古屋発現在進行形還暦パンクバンド、the原爆オナニーズを追いかけて。
映画『JUST ANOTHER』監督・大石規湖が今作で本当に撮りたかったものとは?

−2020.11.27 Fri|シネマテーク(愛知|今池)

 

活動歴まさかの38周年!というパンクバンドが名古屋にいることをあなたは知っているだろうか。その名もthe原爆オナニーズ。どこをどうとっても口にし難いバンド名を敢えて掲げる生粋の名古屋のパンクスたちを、東京在住の映像作家大石規湖が追いかけた。その記録映像が、ドキュメンタリームービー『JUST ANOTHER』となって全国順次上映中だ(名古屋は、今池シネマテークにて11月27日(金)まで上映中)。

BLANKEY JET CITY中村達也や、Hi-STANDARD横山健をメンバーとして活動していた時期があったり、名古屋随一のオルタナティブ商店街による奇祭「今池祭り」や、愛知・豊田を拠点に独自のアクションを続けるバンド・TURTLE ISLAND主催「橋の下世界音楽祭ほぼレギュラー出演していたり、近年では若手バンドとの対バン企画を自主開催したり……。the原爆オナニーズのマインドは常に前を向いていて、話題に事欠かない。Vo.でありリーダーのTAYLOWがすでに還暦を迎えた今もなお、彼らは息を切らしながら走り続ける。紛れもない現在進行形のパンクバンドだと言えるだろう。

東京からわざわざ足を運び、カメラを持って彼らを追いかけた大石規湖は、何が撮りたかったのか。その先に見えた答えとは?

 

SPECIAL INTERVIEW:

大石規湖

Interview, Text & Edit : Takatoshi Takebe [LIVERARY]
Photo:Shota Kato[LIVERARY]

 

大石規湖(おおいし・のりこ)
フリーランスの映像作家として、SPACE SHOWER TV や VICE japan、MTV などの音楽番組に携わる。トクマルシューゴ、 DEERHOOF、DEATHRO、怒髪天など数多くのアーティストのライブ DVD やミュージックビデオを制作。独自の視点で切り取られたライブ映像、特にワンカメでのライブシューティングには定評があり、音楽に関わる作品を作り続けている。映画では『kocorono』(2010年/川口潤監督)で監督補助を担当。2017年8月には、初の長編映画「MOTHER FUCKER」が公開。2020年10月、劇場公開第二作目となる the 原爆オナニーズのキャリア初となるドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』の公開された。 また、2018年に名古屋・栄でLIVERARYが企画開催した「Extra LIVE -道/未知との遭遇/SoGood!-」(環ROY、小林うてな、食品まつりら出演)にて映像撮影・ディレクションを担当。 https://www.norikooishi68.info/

 

−今回のインタビューでは「大石さんがなぜこの映画を撮ろうと思ったのか?」について探っていきたいと思っています。

大石:なんでこの映画を撮ったか?については辿っていくと実は私、名古屋シーンからの影響がすごいあるな〜って思ってるんですよ。名古屋というか、武部さんとか、その周りの動きにも!

ーいきなりめっちゃ褒めてくれるじゃないすか!(笑)

大石:やっぱすごいなと思うんですよ〜って。なんかこう独自の、ココでしかないカルチャーをちゃんと作ろうとしているように見えて。武部さんたちがやっているLIVERARYはWEBマガジンですが、自らも発信して自分たち独自のカルチャーを作っていっているし。

 

深夜の名古屋・栄の地下モールを会場に開催されたライブ+撮影イベント「Extra LIVE」。企画主催はLIVERARY。大石規湖は同イベントに撮影・映像ディレクションで参加。大石さんとLIVERARYは再びタッグを組み、12月末にイベントを開催予定。詳細は追って。お楽しみに!

 

大石:なんか名古屋の人たちの動きにはいつも驚かされるんです!五味さんと林くんと武部さんが企画した「#departures」。あれもすごいイベントだと思います。東京ではできないと思うんですよね。私は静岡の田舎出身から東京に出て行った身で、東京にいるからこそ感じる、東京じゃなくてできることっていうのがあると感じていて。正直、そういった地方独自のシーンの作り方とか生み出し方とかを取り上げたい思いがずっとあって。

 

名古屋を拠点に活躍するハードコアパンクバンドのボーカル・五味秀明(THE ACT WE ACT)林隆司(Killerpass)「LIVERARY」の編集者のひとり武部敬俊による共同主催企画「#departures」。今池にある石井ビルの地下1F「HUCKFINN」〜地上1Fの「HUCKFINNFACTORY」、3Fの「ホテル長楽」までを使ったアルティメットイベント。

 

あ〜。以前お話しした際にもそういう作品を作りたいってお話されてましたね。

大石:そうそう。だからVICEとかいろいろなところでプレゼンはしていて、札幌のシーンを取り上げた企画は通ったんだけど。本当はあれをシリーズ化したかった。札幌の次は名古屋で、その次は郡山で……とかいろいろ考えてたんですよ〜。そしたらどこいっても企画通らなくて!

 

 

ー(笑)。そういう思いもこの映画にぶつけたんですね。

大石:そうそう!放送業界や、WEB媒体に出しても企画が通らないので、もう自分で勝手に撮りに行くしかない、てなって。地方に自費で行っていた中で出会えたのがthe原爆オナニーズでした。

ーそれがちゃんと映画になったなんてすごいことですよね!

大石:どんどんバンド自体引退していっちゃうとかもあるし、早く撮らなきゃって思いもありました。この歳になると自分でも思うんですよね「やっぱりダメなのかなあ」「続けていくの難しいかな〜」みたいな。それでもなんとか続けていくことや、その理由みたいなのが、自分の中で追いかけたいテーマとして見えてきて。それで、今回のthe原爆オナニーズは、ローカルでやり続けている人たちのなかでも、日本のパンクバンドとして代表されて、まさに自分が探していた答えを持っている様な存在だなって思って。でもその裏には、さっき話した、私が感じたLIVERARYとか周りの名古屋の人たちの魅力も伝えたいっていうベースがあって、そこも伝えられるんじゃないかって思ったんです。自分たちの場所でちゃんとやり続けている人たちをもっとみんな見たらいいのに!っていう気持ちで。……と、説明が長くなりましたが、なぜこの映画を撮ったか?については、そういう気持ちがあったからです!

 

 

ー逆に今、東京も地方も関係なくなってきてるなと思いつつも、でも片ややっぱり東京が中心っていう揺るぎなさはどうしても否めない。やっぱり東京が中心でその外側から地方の人たちが見てるような関係性はあると感じます。ただ、近いところにいる人しか見えないものがあるから、大石さんのような人が取り上げてくれて、その面白さが引き立つわけで。the原爆オナニーズさんはどう考えているのかわからないですけど、名古屋で活動しているけど名古屋外でもちゃんとライブもしない、すごくかっこいいのに名古屋でしかライブしてない人たちっているんですよね。

大石:活動のスタイルは個々に違っていたとしても地道に活動し続けている人たちを記録した映像制作はやるべきだといつも思っていて。

ー名古屋の音楽シーンは東京とか県外から来た人にも十分衝撃力を与える人たちがいるし、特に最近だとヒップホップがブームになってて呂布カルマさんやCampanella、C.O.S.Aといった名古屋のラッパーたちが評価されていて。なんでかわからないんですけど、実はどこにも負けないくらいの個性を持った人が多い街なんじゃないかなって。音楽に関してはかなり。

大石:本当思います。撮影で入らせてもらった「森道市場」みたいな大きなフェスにもちゃんとMILKとか地元のバンドたちが堂々とでかいステージでライブやっていて、その状況はめっちゃおもしろいし、県外の有名アーティストが出ている同じステージに地元の人たちが出演することは一番かっこいいな〜て思っていて。

お恥ずかしい話、ぶっちゃけthe原爆オナニーズのライブ今までちゃんと見たこと一度もなかったんですよ。「今池祭り」でふらっと見かけたくらいで。で、今回の映画で見させてもらって、え!すげえかっこいい!とシンプルにやられましたし、彼らの凄まじさを感じました。バンドのカッコ良さってライブにいかないとわからないって思ってるんですが、今作で初めて見たthe原爆オナニーズにハートを鷲掴みにされちゃいました。

大石:今回は私なりにすごく分かりやすく説明的にしたんですよね。構成も、インタビューでも。分かりにくいところでは私の声で説明として入れていたり、知らない人にもわかってもらいたいと思いました。自分なりに「伝える」っていうことをちゃんとしてかないとって、最近本当強く思っていて。

ーあまりにも分かりやすく演出を入れ過ぎちゃうと嘘になっちゃうから、そうすると本当の格好良さじゃない間違った伝わり方になっちゃうし、だからこそこの映画は本当すごいなって思いました。ちゃんとリアルだった。わざわざ豊田スタジアムをバックにしてTAYLOWさんのインタビューを撮っていたりとか。

大石:そういう細かいところ、わかってくれた? 超嬉しいんだけど!

ーわざわざゆかりのある背景とか土地性を入れているところは、大石さんから愛知の人たちに対する愛情のようにも映りました。

 

 

大石:名古屋っぽい場所性は意識的に入れてますね。頑張って入れ込んだので、もし気づいてもらえたら嬉しいなっていうのがちょっとあります。ちなみにクアトロの周辺のワンシーンとしてヒップホップ系のクラブが入ってる丸美観光ビル(ClubJB’s、FLEX LOUNGE、TIGHTROPEなどのクラブ、ライブハウス が複数入居するビル)も映っています

ーなるほど〜。やはりライブハウスシーンだけじゃなくて、そういうところでヒップホップとかそういった別のシーンも補填しているってことですよね?

大石:やっぱりいろんな人に見てもらいたいし、特に20〜30代の若い層に見てもらいたいなと思っていて……。それはなぜかというと、多分私もそうだけど、周りの友達に続けていってもらいたいから。みんなでずっと楽しいことをやっていきたい。この映画は何かを続けていく為のヒントでもあり、自分が続けていくためのヒントでもあるって思っています。

ーすでに何かをやり続けている人たちは自分たちのスタンスがあって、それで多分やっていくのも止めるのも俺たちの勝手でしょ?!って思ってそうですけど……単純に仕事が辛くて辞めてしまいたいくらいで悩んでるような人たちにも、勇気を与えてくれる気がします。何かを「続ける」っていうキーワードに焚きつけられない人はいないかもしれないです。

大石:なるほど。

ーでもなんか前回の谷さん(谷ぐち順:LessthanTVの主宰者でありバンドマン。普段は介護職)たちを取り上げた映画(『MOTHER FUCKER』)もそうでしたけど、とにかく何としてでも好きなことを続ける為に、生活という軸は放り投げず仕事もどっちも続けていくっていう生き様が描かれてましたよね。今回の『JUST ANOTHER』の中でSHINOBUさんが電話で若い従業員が辞めるのを引き留めたり、ライブ前に仕事の電話で忙しそうにしてたり、とかああいうシーンからも、谷さんもそうだしthe原爆オナニーズの他の方々もそうですけど、ちゃんとしてるな〜って思っちゃいますね。

 

 

大石:いや、めちゃくちゃ思いますよね〜。

ーもっとダメな人だったら、好きなことにハマりすぎて、もう生活が崩壊するかなって(笑)。生活を保ちながら、それでも続けていくってのがひとつの生き方だな〜と思いました。

大石:大体、パンク=好きなことさえやってりゃいい!みたいなイメージが世間にはある気がして前作をVICEが記事にしてくれたときに、〈パンクを勘違いしているサブカル好きへ〉っていうサブタイトルつけてくれてて。本当にそうだなと思って。パンクとかハードコアパンクとかヒップホップもそうだけど、実は本当にすごい細かく考えている人たちで、人への気遣いとかもそうだし、発信の仕方ひとつにしてもすごく考えてやっているし、繊細な人たちなんだよって、わかってもらいたいなとは思ってる。

ー何か表現している本物の人たちって結局繊細だったりしますよね。どんなに激しい音楽をやっていても。

大石:そうそう(笑)NICEVIEWテライショウタさんもステージではあんなだけど、これあんまり載せられないかもしれないけど、すごく繊細な人じゃないですか。もう人間らしいっていうかすごい魅力的だと思うし……。

ー名古屋の人は、特に繊細な人が多い気もしますね。

大石:名古屋の人ってなんか打ち解けるまでなかなか心を開いてくれないって、よく聞きません? 撮影の最初の方で、TAYLOWさんとまだ打ち解けてないと感じる時期があって。それがとても分かるのがUPSET(池下のライブハウス)のシーンで。カメラの方を向きもせず話してる場面があるんですけど、結構あの感じがずっとだったから「うわー!どうしよ〜」って思って(笑)。そんな時期に、とある人から「名古屋の人は、人をなかなか受け入れないんですよ」って言われて。

 

 

ー(笑)。以前に「BRUTUS」で名古屋特集があって、編集部の人たちもそれ言ってましたね。最初は受け入れてくれないんだけど、どっかでいきなり受け入れられて、そこからはもう全然フレンドリーな感じで来られるって(笑)。だからシャイな人が多いんですよ単純に。その防御しているわけでもなく、多分怖がりというか臆病、どっちかというとそっちの方が多くて。だからその外部からくるものを一旦拒絶するという習性はあるかもしれませんね。

大石:まあ何でもひとくくりにするのはよくないとは思うんですけどね、なんか名古屋で何かやってる人たちって、みんなそれぞれ独立してて、普段はそんなに交わらないけど、大事なタイミングで一気にガーっとなる感じがあるな〜って。「森道市場」もだし、「#departures」も。実は私、その距離感が人と人としてすごくちょうどいいなとも思うんです。毎日会っててなあなあになってしまうよりは、プロフェッショナルは点と点でいて、やるとなったらその時だけ点が集まる、みたいな。まあなあなあになってるところもあるかもしれないけど(笑)。

ー僕とかも毎日会うなあ〜みたいな人いますよ(笑)。

大石:そっか(笑)。

ーでもやっぱりなんか毎日同じ人と会うのも飽きてきますよね、いくら仲良くても。だから一旦会わなくなって、何かのタイミングで急接近する感じはあるかも。

大石:なんかそうなんですよね。レスザン(Less than TV)周りとかもそうですもん。

ーでもその関係性って、まさに「JUST ANOTHER」じゃないですか!「所詮は他人」みたいな。このタイトルって、the原爆オナニーズの関係性を表す意味でタイトル付けしたんですか?話が繋がりましたね!

大石:それもある!でも、あともう一つの意味でいうと、「JUST ANOTHER」って英訳すると「なんてことのない」みたいな意味もあって。なんてことのない毎日が、何かちょっとしたタイミングですごく楽しい一日が生まれたりとか、なんてことのない何の変哲もない一日一日の積み重ねがそのうち大きな変化につながる、みたいな意味も含めて付けました。で、なおかつthe原爆オナニーズのファーストシングルのタイトルでもあるんです。

ーうわ!そうなんですか!今の話聞いてて、TAYLOWさんがインタビューで「バンドなんて2年で解散するもんなんですよ」って言って、大石さんが「でも38年も続いてるじゃないすか!」ってついツッコミを入れるシーンを思い出しました。

大石:そうそう!「JUST ANOTHER」は彼らを本当に表している言葉だなって思います。ファーストシングルのタイトルの通りに、実際にその「なんてことのない」日々がずっと続いていって、それが38年も続いているって、すごくないですか!?

 

イベント情報

2020年11月27日(金)まで上演中
JUST ANOTHER
会場:今池シネマテーク
http://cineaste.jp/

全国順次上映!
公式HP:genbaku-film.com

大石規湖(おおいし・のりこ)
フリーランスの映像作家として、SPACE SHOWER TV や VICE japan、MTV などの音楽番組に携わる。トクマルシューゴ、 DEERHOOF、DEATHRO、怒髪天など数多くのアーティストのライブ DVD やミュージックビデオを制作。独自の視点で切り取られたライブ映像、特にワンカメでのライブシューティングには定評があり、音楽に関わる作品を作り続けている。映画では『kocorono』(2010年/川口潤監督)で監督補助を担当。2017年8月には、初の長編映画「MOTHER FUCKER」が公開。2020年10月、劇場公開第二作目となる the 原爆オナニーズのキャリア初となるドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』の公開された。 また、2018年に名古屋・栄でLIVERARYが企画開催した「Extra LIVE -道/未知との遭遇/SoGood!-」(環ROY、小林うてな、食品まつりら出演)にて映像撮影・ディレクションを担当。 https://www.norikooishi68.info/

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