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第32回林忠彦賞を受賞した写真家、奥山淳志の写真集『BENZO ESQUISSES 1920-2012』の出版記念展がON READINGにて開催。初日にはトークイベントも。

2024.06.29.Sat - 07.15.Mon | ON READING(愛知|東山公園)

 

写真家・奥山淳志の写真集『BENZO ESQUISSES 1920-2012』の出版記念展が、6月29日からON READINGにて開催される。

写真家が北海道の丸太小屋で自給自足の暮らしをしている「弁造さん」と出会い、14年にわたって撮影し続け、弁造さんとの日々や記憶の断章を綴った『庭とエスキース』(みすず書房)。本作『BENZO ESQUISSES 1920-2012』はその続編にして集大成的作品となるもので、奥山が「弁造さん」亡き後に預かっていたエスキースを、弁造さんが作った庭に持ち込み撮影した写真集。

本展では、奥山淳志の写真作品と、本書に収録された井上弁造のエスキース(原画)作品が展示販売される。

―――

BENZO ESQUISSES 1920-2012について

1920年に北海道で生まれた井上弁造さんは、2012年に92歳で逝くことになる。
遠い少年時代、北海道開拓の過酷な生活のなかで絵を描くことに目覚め、通信制の似顔絵講座からはじまった絵描きへの夢は、弁造さんの人生そのものだったといえるだろう。
ただ、人生は思い通りにいかないことの方が多い。誰の人生にもあることだが、弁造さんは結局、自らの夢を叶えることができなかった。一生を通じて絵を描き続けたにもかかわらずたった一度の個展を開くこともなく逝ってしまった。果たして、そのような人を“絵描き”と呼んでいいものかと迷うときもある。そんなとき、僕は決まって弁造さんが暮らした小さな丸太小屋に遺されていた膨大なエスキース(習作)を思い起こす。晩年の弁造さんはエスキースばかり描き、絵を完成させることをしなかった。「自らの理想とする絵に近づくために」というのがその理由だったが、執拗にエスキースを描き続けた弁造さんの姿を思い返すと、僕には別の目的があったのではないかと思えてくる。弁造さんは最期まで切実な思いを持って絵を描き続けるために、最期まで絵を描くことを愛していると言い放つために、絵を完成させなかったのではないだろうか。

弁造さんが逝って今年で11年目、僕は変わることなく弁造さんが遺した庭に立ち、「弁造さん」という存在を僕のなかに取り込んでいった。僕はそうすることでしか、弁造さんが生きることが遠ざかるのを防ぐことができなかった。でも、今思うのは、庭と絵を愛し続けたその人生は弁造さんのものだ。この気づきがカメラをエスキースに向けるという行為のはじまりでもあった。
今日、エスキースを弁造さんに返そうと思う。

2023年7月5日
奥山淳志

 



イベント情報

2024年6月29日(土)~7月15日(月祝)
井上弁造 / 奥山淳志『BENZO ESQUISSES 1920-2012』出版記念展覧会
会場:ON READING (名古屋市千種区東山通5ー19 カメダビル2B)
時間:12:00~20:00
問:052-789-0855
http://onreading.jp/

奥山淳志『BENZO ESQUISSES 1920-2012』スライドショー&トーク
日程:2024年6月29日(土)
時間:18:30~ スタート
会場:ON READING GALLERY
料金:1,000円(ON READINGお買い物券500円分付)
予約:https://onreading.jp/exhibition/benzo2/

奥山 淳志 おくやま あつし
写真家
1972年 大阪生まれ。京都外国語大学卒業。
1995〜1998年 東京で出版社に勤務した後、1998年、岩手県雫石に移住し、写真家として活動を開始。以後雑誌媒体を中心に北東北の風土や文化を発表するほか、近年は、フォトドキュメンタリー作品の制作を積極的に行っている。

posted by Y.KURODA

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