Text & Photo:フクイカズトモ(SIKASIKA)
忘れもしない2016年11月某日、午後。
とても面白くないニュースがヒビだらけのiPhoneに飛び込んできた。
「安倍首相、ドナルド・トランプ次期米国大統領に祝辞。」
・・・最悪。
でも、それ以上に目の前が真っ暗になったような気分にさせられたのは、
そのトピックスの真下に表示されていた1行だった。
「American Apparelが日本撤退 全店舗閉鎖へ」
大好きなAmerican Apparel(アメアパ)が日本国内から完全撤退を決めた。
あの日から一ヶ月、もう既にこの国にはアメアパの店舗が一つも残っていない。
1989年にカナダの地方都市・ケベックで産声を上げたアメリカンアパレル。
創業後、拠点をサウスカロライナ、ロサンゼルスと移しながら急成長を続け、
日本に進出を果たした2005年には、アメリカの有名経済誌「Inc.」が毎年発表する
Inc.500 (アメリカ合衆国で急成長中の500の企業) にもランクイン。
世界20ヵ国以上で200店舗以上を運営するまでに巨大な企業になった。
しかし、サブプライムショックなど様々な経済影響を受け徐々に業績は悪化。
その後も創業者のダブ・チャーニーのセクハラ問題や不法移民雇用などがアメリカ国内で問題となり、
2014年にダブ・チャーニーが解任され、経営陣が一新された。
同時に日本でもスタッフの不当解雇など、様々な問題を経ながらも何とか運営を続けていたものの、
ついに2015年10月には米国連邦破産法第11章 (日本でいう民事再生法) を申請するまでになっていた。
ゼロからの経営再建を宣言してからちょうど1年。
あっけなく日本でのアメリカンアパレルの活動は終了してしまった。
全体での経営不振が明らかだったとは言え、
過去には渋谷店(レディース館)が世界一の売上を記録し、
世界中で“日本の店舗が一番売れている”時代もあった。
それなのに、なぜアメリカンアパレルは真っ先に日本から去ってしまったのか。
東京・大阪・福岡しか展開しておらず全国的には知名度もイマイチだったから?(名古屋に作らなかった理由の“噂話”はめちゃ笑った・・・)
アメアパかっけー、けどタッケー!ってそんな感じだった?(確かに当たり前のように溢れるファストファッションと比べると・・・)
パンチが効いていてオリジナリティが溢れたデザインが日本人には好まれなかったから?(経営者が変わって迷走、クソダサくなった時期もあったね・・・)
日本の若者の間で流行り、ブランドの代名詞にもなっているアメアパのロゴバッグ。
九州唯一の店舗だった福岡店は5年以上前に閉店したけれど、
ロゴバッグを肩から下げて街を歩く女の子を未だに九州でもよく見かける。
それを考えると、必ずしもアメアパのセンスが日本に溶け込めなかったとはあまり思えない。
国内完全撤退の裏には、流行や人気の盛衰の影響が当然あったとは思うけれど、
それ以前にアメアパと僕らの生活や価値観との間には大きな溝があったように感じる。
東京から大阪、そして名古屋をシカトして福岡で束の間のバカンス。
わずか11年という短い時間で、極東の島国を足早に駆け抜けて行った。
結局、アメリカンアパレルとは一体何者だったのか。
アメリカンアパレルという企業が日本から去ってしまったことが純粋に悲しい。
それは、自分自身がアメアパのファンだったからという理由もあるけれど、
それ以上に、アメアパの正体や彼らのメッセージが広く知られることもなく
静かに僕たちのそばから居なくなってしまったことが何よりも悲しいと感じる。
2014年8月、家族旅行でロサンゼルスに行った。
そこで「アメリカンアパレル」のLA本社へと訪れた。
その時、現地で垣間見たもの、そこから考えたことは今でもカラフルに思い出せる。
特別にアメアパに詳しいワケでもないし、ファッション業界やビジネスに精通しているワケでもない。
ただ、ちょっとだけ洋服が好きな一人の日本人が現地で思わず考えてしまったことを文章に留めておいた。
それ以上でも以下でもない。
あと、誤解のないように一つだけ。
アメアパのこの現状は日本だけに限った話ではなく、
アメリカ本国でも一人で立ち続けることは完全に出来なくなっている。
カナダのアパレルメーカー「GILDAN」が買収に名乗りを上げたものの、
これからどのような形で生き続けるのか、それとも消えて行くのか、近い未来のことさえまだわからないけれど、
世界中から居場所が無くなるかも知れない「アメアパ」とは一体どんな存在だったのか。
文章は当時のままなので最新の状況とは異なる部分もあるけれど、
もし、興味を深く持つことがあったらみんなで調べて欲しいです。
みんな忙しくてシカトしちゃってたけれど、アメアパってなかなか面白い会社だったみたい。
(誤った情報や間違いがあれば指摘もやんわりお願いします。)
いつも派手にギラギラと無邪気で最高にイカしてた。
沢山のドキドキをありがとう。
これからもずっと大好きでいるよ。
…我ながら前置きが長過ぎた。
それでは本題に入ろうか。
あれは、忘れもしない、2014年8月某日。
僕らは、いともたやすくアメアパ本社へと乗り込んだ。
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Text & Photo : Kazutomo Fukui [ SIKASIKA ]
Edit : Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE , LIVERARY ]
SIKASIKA
長崎から愛知へ出てきた、フクイカズトモ(Vo / Key)を中心に、名古屋で結成された、4人組パンクバンド。その他のメンバー3人は女性で、村門ちあき(Gt)、meme(Dr)、Suzy(Ba)。現在、フクイは九州へ戻り、メンバーが九州、関西、愛知と散り散りになっているため、飛行機等を使ってスタジオに入ったりしている遠距離パンクバンドでもある。
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