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FEATURE / 特集記事 Feb 25. 2017 UP
【SPECIAL INTERVIEW】
地酒を通じて、人を知る、風土を知る。
東濃5市9蔵が集結する日本酒の祭典「MEETS TONO」が伝えたいこと。

名古屋テレビ塔(愛知|栄)

 

東濃5市から9つの酒蔵が名古屋テレビ塔に集結する日本酒の祭典「MEETS TONO」。3月10日(金)、11日(土)、12日(日)の3日間に渡って開催される予定だ。当日はおそらく名古屋市内外から酒好きたちが集い、大いに盛り上がることだろう。

ところで、「東濃」と聞いてピンと来る人はどれくらいいるだろう? 

東濃とは、岐阜県内の南東部エリアにある、多治見市、土岐市、瑞浪市、恵那市、中津川市の5市を指す言葉。この5市が一丸となって観光PRを働きかけるうえで共通項となったのが、豊かな自然からの恵みである清らかな山水。それによって作り出される「酒」だった。

当日、会場内には各酒蔵が用意する日本酒はもちろんのこと、お猪口や料理皿などはすべて「美濃焼」で統一され、設えも東濃ヒノキを一部使用するなど、東濃の持つコンテンツ一色に。

東濃にとことんこだわり抜いた同企画は、単に観光PRをしたいということ以上に、熱い思いが込められているようだ。LIVERARYでは、今企画のキーパーソンとなる5市の取りまとめ役を買って出た多治見市役所・長谷川昭治さん、東濃の酒蔵と厚い信頼関係を持つ中津川市の酒屋「中山道 大鋸(なかせんどう おおが)社長・大鋸伸行さんのお二人に(撮影用のお酒を少しいただきながら)話を伺った。

 

FEATURE:

MEETS TONO

INTERVIEW WITH : 

NOBUYUKI OOGA and SHOJI HASEGAWA

Interview,Text & Edit : Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE,LIVERARY ]
Photo : Takayuki Imai

 


取材場所は、大鋸さん(写真中央)の店舗2階のフリースペースにて。実際に「MEETS TONO」に並ぶ、東濃の地酒でまずは乾杯!

 

−そもそも今回、「MEETS TONO」が開催されることとなった経緯から教えて下さい。

長谷川:もともと中津川は中津川、多治見は多治見、みたいなそれぞれがそれぞれの市のためだけに観光PRするってのが、これまで通りのやり方で。かといって、それだけだとどうしても飛騨高山とか、そういったすでに知名度のある観光地に比べてどうしても弱く、くすんでしまう。だったら、東濃のみんなで一丸になって、点じゃなくて面でPRしたらいいのではないか、そんな思いが担当者レベルではあったんです。じゃあ、東濃5市に皆共通してPRできる魅力的なものってなんだろう?と考えたとき、「酒だ」ってなったわけです。でも、単に酒や酒蔵を紹介するだけでなく、それをきっかけに、東濃に実際に訪れてもらえたら…そんな思いでこの企画は立ち上がりました。

−なるほど。東濃が酒どころだってこと自体、知りませんでした〜。

長谷川:そうそう。まだまだ知られていないんですよね。じゃあその企画をどこでやろう?って考えたときに、外へ発信したいという思いから「よし、名古屋でやろう!」となったわけです。今回、やるならとことん東濃にこだわったイベントにしたくて、酒はもちろん、その酒坏も「美濃焼」にして。日本酒イベントではありがちな利き猪口に統一してしまっては「美濃焼」が持つ「特徴がないという特徴」を知ってもらえない。食器類の生産が全国シェアの約60%を占める「美濃焼」は日常生活のなかで何気なく使われ、知らないうちに生活に溶け込んでいるのであまり意識されていないかもしれませんが、本当に多種多様なんです。

 


多治見市役所 経済部産業観光課 課長代理・長谷川昭治さん。

 

−「多治見」って言われたら「陶器のまち」のイメージがありますが、「美濃焼」って言われると、その具体的なイメージがたしかに思いつかないですね。

長谷川:だから、今回会場受付には本当にいろんな色や形の器を40種類集めて並べます。そこからお客さんがそれぞれ気に入ったものを選んで使ってもらおう、という試みです。器を選ぶ楽しさも、酒とともに味わってもらいたい。そして「美濃焼」が一言で言い表せないくらい、こんなにも種類があるんだ!ということも同時に知ってもらえたら、きっと驚いてもらえるんじゃないか、と。

 


受付に用意される予定の多種多様な美濃焼の数々。使ったお猪口は持って帰ることができるというのも嬉しいシステム。※写真はイメージです

 

東濃の酒、食材、器といった物だけでなく、
人も東濃の人じゃないと伝えられないものがある。

 

長谷川:で、とにかく今回すべて東濃の人たちで作り上げたかったという思いがありました。もともと僕は大鋸さんのことは存じ上げなかったんですが、いろんな酒蔵をまわって取材同行していたら、大鋸さんの名前がいろんなところから聞こえてきたんですよね。それで、大鋸さんのお店に寄ってみたんです。そしたら、たまたま社長がいらっしゃって、「MEETS TONO」の話を少ししたら、東濃の酒に対する熱い思いをその場で語って下さって。これはぜひ今回のイベントに関わってもらいたいということで、イベント当日の日本酒物販コーナーに仕切っていただこう!となったわけです。東濃の酒、食材、器といった物だけではなく、人も東濃の人じゃないと伝えられないものがあるって思っています。

大鋸:僕は全国すべての酒蔵に行った、というわけではないですが、地元岐阜の酒蔵だけでなく、全国さまざまな酒蔵に訪れました。酒蔵での酒造りも手伝いに行きます。だから、しっかりやってる酒蔵さんは僕はわかるんです。実際に自分の目で見て確かめることで、その酒蔵さんの酒を仕入れたいって思うんです。全国を探せば、そりゃもちろん有名な酒蔵も多々ありますが、まずは、地元の蔵を応援したいという気持ちが強いです。

 


自分が酒屋としてどう郷土に貢献できるのか?という思いを貫いてきた、大鋸さん。

 

酒はその土地の風土、
食文化にあわせてつくられるもの。

 

−では、そんな大鋸さんにお聞きしたいんですが、東濃の酒の特徴って一言でいうと何なのでしょうか?

大鋸:水ですね、水がいいんですよ東濃は。岐阜県は海がない地域なので、山水を使った〈山の酒〉なんです。で、〈山の酒〉は味が濃い。新潟とか北陸の〈海の酒〉は反対に味が薄いんです。それはなぜかって言うと、海の幸、山の幸っていうように、それぞれの地域の食文化がありますよね。今でこそ、地産地消っていいますけど、昔はもともとその地場の食材を食べるのが当たり前だったわけで。だから、〈海の酒〉はお刺し身とかね、そういう海鮮に合うように淡麗の辛口になるわけです。で、〈山の酒〉はというと、例えば、岐阜だったら朴葉みそとか味噌文化でしょ。そしたら味が濃い料理に負けないような濃い酒がつくられたわけです。

−なるほど〜!

長谷川:今回、「MEETS TONO」では酒に合わせて用意されるつまみもすべて東濃の食材を使ったオリジナルメニューが並びます。酒と食、両方で東濃を知ってもらいたいと思っています。

−まさに、今の大鋸さんのお話とリンクしますね。

大鋸:昔はね、東濃の酒はもっと味が濃かったんですよ。時代が変わってきて、淡麗辛口の方が日本酒の味としては人気があるんだけど、それは日本人の食文化が変わってきていろんな料理に合う酒が求められるようになったからなんですよね。そうなると、味の濃い酒よりも味の薄いスッキリとした酒のほうが好まれるようになったわけです。ちなみに、もともとなかったんだけど、「鯨波」の淡麗辛口ができたのは、実は「俺がちゃんと売るから作ってよ」と蔵元に持ちかけて作ってもらったんですよ。

−え、そんな風に酒屋さんが蔵元に味のリクエストとかできちゃうもんなんですか?びっくりです。

大鋸:自分も酒蔵に行って蔵人(全体の味を決める長である杜氏のもとで酒をつくる人)として手伝ってますから。そこで作り手である蔵元との関係性が築かれて、信頼関係が生まれてからしか取引ができない、なんて酒蔵もありますよ。

−信頼関係が築けた間柄でしか取引しない、そんなストイックな世界なんですね。

大鋸:みんな職人ですからね。そういうプライドを持った酒蔵さんは多いですよ。


「MEETS TONO」当日に配布されるブックの一部。

 

一杯の酒を作る蔵元たちの
思いも感じて飲んでもらいたい。

 

長谷川:当日、来場者に手渡されるものは、お酒や料理と交換できるタイル製コインだけでなく、今回参加していただく東濃の酒蔵さんたちをまわって取材・制作したブックというお土産もあるんです。自分も取材同行をさせてもらって知ったことがあって。今ではほとんどの酒蔵が規模縮小、さらに後継ぎ問題に悩まされていることも知りました。「日本人の酒離れ」とかって言われてますが、どんどん蔵が小さくなっていって後継ぎもいなかったら代々300年も続いてきたような伝統的な酒蔵さんも、いつ閉鎖してもおかしくない、そんな現状があるわけです。もしかしたら、今飲んでるこのお酒も、もう二度と飲めなくなってしまうかもしれない、そんな可能性だってある。時代の移り変わりによって、仕方がないことと言えばそれまでかもしれませんが、自分たちの地元にはまだまだ頑張っている酒蔵があって、自らプライドを持って酒を一生懸命につくっている。そのことを知るきっかけは作りたい、そう強く思いましたね。

大鋸:そういう声もあって、うちで5銘酒セットを作ったんです。第三者から「お前しかいない」って言われてね。でも、こだわりの強い蔵元たちの間に入って、セットをつくるのも一苦労ありましたけどね(笑)。

長谷川:そんな蔵元たちが一同に会す、今回の「MEETS TONO」のようなイベントは本当に千載一遇のチャンスだと思っています。

−今までに今回の様なイベントはないんですよね?

大鋸:岐阜の柳ヶ瀬とかでね、飛騨高山とかも含めた日本酒のイベント!みたいなのはあったと思うけど、東濃だけでここまでこだわって、こういう規模のイベントをやるってのは前例がないはずです。

−では、今回「MEETS TONO」に参加する酒蔵についてよ〜く知っていらっしゃる大鋸さん、長谷川さんにそれぞれの蔵の特徴についてお聞きしたいと思います。

 

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イベント情報

2017年3月10日(金)、11日(土)、12日(日)
MEETS TONO
東濃の地酒と美濃焼。

会場:名古屋テレビ塔下「タワースクエア」※テレビ塔入口前の1階スペース(名古屋市中区錦3丁目6-15先)
時間:10日(金)17時~21時 11日(土)12時~19時 12日(日)12時~17時
料金:(各日)前売2500円/(当日)3000円(前売チケット・Pコード:634-398はなくなり次第、販売終了)
・会場受付で、入場チケットと引き換えに、スターターセット(オリジナルタイルコイン8枚(通貨)+選べる美濃焼の酒器(1個)+和らぎ水+東濃の各酒蔵を紹介した冊子)をお渡しします
・地酒とおつまみは、全てオリジナルタイルコインで引き換え
・会場は基本的に立ち飲みです。
※開催初日3月10日(金)19時からは、東濃5市の市長が参加しての鏡開きと振る舞い酒も予定。
問:東濃ぐるりん観光事業実行委員会 ミーツ トーノー事務局
info@meets-tono.com  TEL 052-241-7803(株式会社クーグート内)
主催:東濃ぐるりん観光事業実行委員会(構成団体:多治見市、土岐市、瑞浪市、恵那市、中津川市)
後援:名古屋国税局、名古屋市、中日新聞社、久屋大通発展会、多治見市観光協会、土岐市観光協会、瑞浪市観光協会、恵那市観光協会、中津川市観光連絡協議会、NPO法人大ナゴヤ大学
詳細:http://www.meets-tono.com/

 


 

取材協力:

物語のある酒と食品 中山道大鋸
岐阜県中津川市本町1-2-9
TEL: 0573-65-2625
http://nakasendo-ohga.com/

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