2025.07.12.Sat - 07.21.Mon | 愛・地球博記念公園(愛知|長久手)
「愛・地球博」開催20周年記念事業「愛・地球博20祭」が、9月25日(木)まで、長久手・愛・地球博記念公園にて開催中。
会期中、さまざまな企画が行われる中、開催当時の理念と成果を受け継ぎ、世界の文化を“楽しみながら学べる”イベント「地球大交流フェスタ」が7月に開催される。
世代を超えて楽しめるコンテンツが盛りだくさん!の「地球大交流フェスタ」。その中の1コンテンツである「もし100」ディスカバリーラボでは、『世界がもし100人の村だったら』の著者・池田香代子によるトークショーをはじめ、カードゲームやワークショップを通して多様性・格差・環境問題を体感的に学べる2日間となる。
さらに、2025年版にアップデートされた「100村パネル展」が、会場内「体験学習室3」にて同時開催。会期は、7月12日(土)〜21日(月・祝)。子どもから大人まで、地球の今と未来を見つめ、「わたしにできること」を考えるきっかけを提供する展示内容となるそうだ。
LIVERARYでは、こちらのパネル展に一部企画参加。「OUR VOICES FOR FUTURE」と題し、愛知所縁のさまざまなジャンルで活躍する10人のカルチャー・キーパーソンに「愛知万博開催時の20年前と、この先の未来」について尋ねてみた。
クリエイティブディレクター / アートディレクター
青木奈美
(株)ザ・ソーシャル 代表。SOCIAL TOWER / CASTLE MARKETリーダー。名古屋市生まれ。大学卒業後、鞄の企画卸製造会社でプレスとして勤務。その後、大須のデザイン会社「株式会社クーグート」に入社し、デザインの現場で経験を積む。同時期に、NPO法人「大ナゴヤ大学」の立ち上げに参画し、企画活動を通じて「街と自分との関わり方」に強い関心を抱くようになる。2012年、「テレビ塔のある街に新しいかたちの社交場を」というコンセプトのもと、SOCIAL TOWER PROJECTを立ち上げ、以降、企画・デザイン全般を手がける。2018年に独立し、2020年にはSOCIAL TOWER PROJECTを法人化。名古屋市役所出身のメンバーとともに代表となり、4人の役員とともに株式会社ザ・ソーシャルを設立。現在は、オアシス21で年4回開催される『SOCIAL TOWER MARKET』と、名古屋城で年1回開催される『SOCIAL CASTLE MARKET』の運営を軸に、名古屋を中心にさまざまな楽しいことを企画中!
─愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶もあれば教えてください。
何もできないくせにデザイン事務所に飛び込みで入れてもらい、付いていくのに必死だった時期。同時期に立ち上げに関わったNPOを通じて「まちづくり」という言葉も認知したのですが、なんか言葉自体が偉そうで気持ち悪いな…とムダに斜に構えていた記憶あり(笑)。
─20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか? また、どのようになっていたら良いと考えますか?
今の世の中を見渡すと分断は生まれ続けそうだし格差も広がりそう…。でも諦めていない人もたくさんいるし自分も諦めたくないなと思います。もっとお互いのことを思いやることができて、至るところで愛を感じられる穏やかでカラフルな未来になっていますように。
─あなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
他者を尊重する気持ち。思いやる気持ち。愛する気持ち。未来へと続く”気持ちの積み重ね”を大切にしていきたいなと思います。
漫画家
大橋裕之
1980年生まれ、愛知県出身。漫画家。2005年、自費出版で活動を開始。2020年にアニメーション映画「音楽」公開、2021年には『ゾッキ』が実写映画化。
─愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶もあれば教えてください。
20年前は地元蒲郡で就職して競艇場で働きながら漫画を描いていました。愛知県民ですが愛知万博には行きませんでした。理由は特にありませんが余裕がなかったんだと思います。モリゾーとキッコロのことは強く覚えています。
─20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか? また、どのようになっていたら良いと考えますか?
誰もが暮らしやすくなっていることを望みますが、大きく変わっている未来がなかなか想像できません。
─あなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
まずは誰もが弱い立場になる可能性があることを想像し認識することだと思います。
デベロッパー/映画ライター
小田井孝夫
2020年に北区清水~尼ケ坂の空き家をまとめた小冊子「NAGOYA AKIYA LOOK BOOK」を制作。手描きによる商品カタログ風の紙面が一部で評判を呼び、「コロッケ屋みね」をはじめ個性的なショップが空き家を改造して次々とオープン。3年をかけて改装した「金城市場」での各種イベントも話題を呼ぶなど、古い町並みが残る下町エリアに新風をもたらしている。
─愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶もあれば教えてください。
たしか「愛・地球博」と呼ばれていたようにも思う2005年の愛知万博は私的には入籍の翌年にあたり、べつだん「愛」に不足はなかったにも関わらず、平日の日中にいそいそと会場におもむき、チェコ館で「ピルスナー」なる当地のビールを注文し、ふたりで「昼ビー」の様子を平日勤めの知人にINFOBARで写メールまでしたのであるから、今から思えば「愛」がダダ漏れであったと自戒しないでもない。
─20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか? また、どのようになっていたら良いと考えますか?
20年後に自分が生きているとは思えない程度には常識的であると自負している以上、次の20年後の「多様性」を「格差」を考えよとはChatGPTで検索せよと言っているに等しく、そのワード先行の無邪気な問題意識に「多様性にひそむ格差」の萌芽を垣間見ぬでもない一方で「格差にひそむ多様性」には「なにかある」と仄かな期待を寄せぬでもないその当人がChatGPTでないとする保証はどこにもない。
─あなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
思いやり。
本屋店主/ブックデザイナー
黒田義隆
『ON READING』店主、『ELVIS PRESS』代表。2006年に書店『YEBISU ART LABO FOR BOOKS』を、名古屋・伏見にオープン。2011年に名古屋・東山公園に移転し、bookshop & gallery『ON READING』としてリニューアル。様々なイベントや展覧会を企画するほか、出版も多数手がけている。
─愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶もあれば教えてください。
大学を卒業して、店を始めるための準備をしていたと思います。伊藤桂司さんが手がけたポスターがめちゃくちゃかっこよくて、どうにかして手に入れたいと奔走した記憶があります。ペルーのパビリオンでアルパカの指人形を買いました。
─20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか? また、どのようになっていたら良いと考えますか?
アメリカの多くの企業でDEIの取組みが見直されてしまったりと、明るい未来を易々とは思い描けないかもしれません。しかし、多様性や格差是正は、実現に向けて取り組むべき普遍的課題であると思います。他者の存在を否定したり、格差を拡大させる向きは、どう考えても「不合理」です。
─あなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
自分が100%正しいと思わないようにすること。間違いがあったときに見直したり、訂正したりできること。自分に何ができるかを考え続けること。自分がいなくなった後の世界も想像していくこと。
学生
加藤海凪
明治大学に通いながら、「SAFEID」というブランドを運営し、ファッションを通じて障害のユニークさや面白さを広める活動に取り組む。障害のある人とない人が音楽やアート、マーケットを通じて交わるイベント「!⇄!(インターチェンジ)」をLIVERARYと共同主催し、社会に新たな価値観を提案。Forbes JAPAN「NEXT100」に選出され、東京都最大のファッションコンペNFDTで特別賞を獲得するなど多方面で評価されている。
ー愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶があれば教えてください。
愛知万博があった20年前、私はまだ1歳でした。残念ながら万博の記憶はありませんが、母からの話では家族で2〜3回ほど訪れ、フィンランドのパビリオンにも行ったそうです。当時は小さすぎて覚えていませんが、地元愛知が盛り上がっていた様子は後から聞いて知りました。
ー20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか?また、どのようになっていたら良いと考えますか?
20年後の未来は、今の社会と大きくは変わらないと思います。スポットライトの当たる社会問題は移り変わり、本質的な社会の仕組みは変わっていないからです。
しかし、「多様性」は少しずつ受け入れられると思います。SNSの普及で生き方が多様化し、自分の「好き」や「得意」を活かす仕事が増えています。AIが代わりに仕事をする分、人の「好き」が活かされる社会になることで、多様な知恵や考え方が混ざり合うと思います。
一方で、「格差」は広がるかもしれません。働き方や生き方の選択肢が増え、自分で情報を選び行動する必要があるからです。情報を持つ者と持たない者の差や、選択肢の多さから格差が拡大すると考えています。
ーあなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
理想の未来を実現するために大切なのは、「楽しみながら社会の問題を解決していくこと」だと思います。楽しい体験は人の心に残ります。例えば、音楽やファッション、芸術などです。これらを通じて社会に意味のあることを取り入れていくことが、持続可能な変化につながると考えます。若い世代が楽しめる遊びの中に、社会を良くする体験を作り、多様性や格差の問題をフラットに楽しめるものや体験として、未来に受け継いでいきたいです。
料理家
中條順子 (ちゅうじょうじゅんこ)
愛知県岡崎市にて、「at the table est 2015」主宰。季節に寄り添い軽やかに暮らす事を軸としたシンプルでストレスのない家庭料理を提案しています。
─愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶もあれば教えてください。
20年前は人生に苦悩中。残念ながら愛知万博に足を運ぶタイミングがなくて。行っておけば良かったな。
─20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか? また、どのようになっていたら良いと考えますか?
20年後は70代。怯える。「多様性」というそれぞれの自立は当たり前になり、「格差」は気になる人だけの言語になっている。
─あなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
先ずは自分を愛すること。
ミュージシャン
刃頭 (HAZU)
DJ / 選曲家。OBRIGARRD、ILLMARIACHI、KEMURI PRODUCTIONS、BEATKICKSの構成員でもある。
─愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶もあれば教えてください。
もう20年かあ。愛知万博で唯一、定期開催されてたDJイベント「村祭り」でもDJしてた。万博でのDJは、本当にいろんな人が集まってくれてメチャ面白ろかったなあ。
─20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか? また、どのようになっていたら良いと考えますか?
20年後、たぶん自分は生きてないけど、、、。世の中の多様性についての思想はなかなか進歩せず個々の違いがより「違い」として浮き彫りとなって格差は広がったままだと思う。そうは思うけど、完全に戦争には反対。
─あなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
まずは他の国から日本に来た人たちと普通に話せる勇気。
福祉施設勤務
水上 明彦
知的障害者施設(成人)「さふらん生活園」施設長。施設はアートコレクティブ「SFRN」としても活動し、メンバーの「すきなこと」や「こだわり」などを起点に、生活そのものやアート活動・工芸品を創り出すことを模索しています。
─愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶もあれば教えてください。
さふらん生活園に入職して4年目の現場スタッフでした。愛知万博は5回ほどメンバーと来場しています。食にまつわる記憶が鮮明で、マレーシア館で食べた「ロティチャナイ」がとても美味しかった思い出があります。
─20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか? また、どのようになっていたら良いと考えますか?
「多様性」や「誰一人取り残さない」という大きなスローガンが、難しいことを避ける方向にだけ向かうのはつまらないと考えています。障害者という言葉は無くなっていないと思いますが、20年後の時代の空気が、誰にとっても息苦しくないことを願っています。
─あなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
身近な生活の中での実践。自らの仲の良いグループに、あと一人だけで良いので、気心の知れぬ人が入ってくる余白を残すこと。そして、外から見て固定化している仲の良いグループに、最後の一人として入っていく楽しさを感じること、でしょうか。
ラッパー
呂布カルマ
名古屋天白JET CITY PEOPLE代表。プロラッパーでグラビアディガー。
─愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶もあれば教えてください。
大学卒業して、フリーターをしながらまだギリギリ漫画家を目指してた頃です。当時、彼女だった今の嫁さんと万博に行ってそこで初めて彼女のお父さんに紹介されました。
─20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか? また、どのようになっていたら良いと考えますか?
支配する側される側で二極化しつつもされる側は無自覚で、更にAIによって個人の能力の差が埋まり、あらゆる意味で一般人の格差は無くなると思います。
─あなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
20年後はほぼ人間ではなくなっている予定なので、今のうちに人間である不便や幸せを謳歌しておくといいでしょう。
障がい福祉業/ソーシャルワーカー
山口未樹(やまぐちみき)
1974年名古屋市生まれ。2005年NPO法人ポパイの設立時に職員として加わり、初めて障がいのある人の支援に携わる。2011年美術家によるワークショップをきっかけに、福祉にアート、表現活動を取り入れる。2012年2月より理事長。社会福祉士、精神保健福祉士。第16回(2016年)全国障害者芸術・文化祭あいち大会アドバイザー。2024年度名古屋市芸術賞奨励賞を法人として受賞。
─愛知万博開催から今年で20年が経ちました。20年前のあなたは何をしていましたか?愛知万博についての記憶もあれば教えてください。
障がいのある人の外出ボランティアで、まさにあいち万博を訪れていました。この出会いが私の障がい福祉への一歩。長蛇のアメリカ館に並ぶとスタッフが駆け寄ってきて、こっちから入りな、と手招きしてあっさり入場できた体験が鮮烈な思い出です。
─20年後の未来を想像した時、「多様性」や「格差」はどうなっていると思いますか? また、どのようになっていたら良いと考えますか?
あれから20年で「多様性」は日常に溢れるようになりましたが、格差は深刻です。さらに20年、便利なワードは増えども格差はより開くのでは。「格差」や「差別」のリアルで異なる文化を包摂する新たなデザインの台頭を期待したい。
─あなたが考える、理想的な未来を実現するためには、何を大切にすべきでしょうか?
文化や芸術、また2つを取り入れたインクルーシブな教育も。本来多様な人々は昔も今も、そして未来にも存在し続けるはずで、同じ時代を生きています。文化、芸術、教育から同時代にある出来事を捉え、混合文化を繰り返し形成する社会を望みます。
2025年7月12日(土)〜21日(月・祝)
100村パネル展
「OUR VOICES FOR FUTURE」
会場:愛・地球博記念公園 体験学習室3
時間:10:00〜17:00
詳細:https://aichiexpo20th.org/events/chikyudaikoryu.html#sec8
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国際芸術祭「あいち2025」とLIVERARYのコラボ企画
「灰と薔薇のあいまにファッションスナップ」in 森道市場2025の記録。
アーティスト・久保寛子による受賞者発表&コメントも!
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