ジョンのサン・立石草大による連載コラム
エヴリ・アポイントメント・キャンセル
このよく判らない季節はいつまで続くのか。まだ裏張りできていない黒と白のダンスシューズのみを日ごと履き分けて、生まれ育った東海圏を中心としたローカルレビューをやってみることにしました。(今回は前回掲載の第2話の続きとなっています)
9月20日(日)
19:30
思いがけずゆっくりとした時間を確保され、残された展示、つまり2010年頃からの「畔柳」を進路通り見ていくと、まずここで「畔柳」が再び内省し、少年の頃のように、収集からインプットという長いサイクルへもう一度帰っている事が分かりました。 バンド活動をほぼしなくなった事、戸川純への執着、地元のリサイクルショップへの出入り、生業とする郵便配達(とてもまじめそう)の場面、そして三ツ矢さんも講師として勤める写真教室に入塾し三ツ矢さんと出会った事、これら現在の「畔柳」につながるのかも知れない燻りと再生のようなものが、ギャラリーの最終コーナーあたりで表され、一枚一枚を眺めているとついうっとりと没入してしまうのですが、その度に、 【この人は少し変わった特性こそあれ、ふいに展示されてしまった、重要ではない人物「畔柳」であり、しかもその男は脈絡のない事故によりまさに現在手術中で、私たちの共有するこの時間は本当に何なのだろう!】 という醒めたアラームが後追いで襲いかかってくる仕組みになっていました。
そしてここからこの展示がじっくり盛り上がってくるのですが、まず、現在のYODOメンバーとの出会いや、かつてのエルシドスタジオではなく、私たちが繰り返し見せられてきたあの部屋、「畔柳」家での練習風景、どう贔屓目に見ても報われなさそうなのですがその報われなさ自体が絶妙な魅力となっている新メンバー達の無表情な音楽的探究と試行錯誤の様子、そしてその中心にいる一番普通の人「畔柳」、ここでもう一度始めようという小さな決意が各構図の端々から滲み出ていました。
そして最後の壁面、ぼんやりと見始めたばかりの私より先に、隣で鑑賞していた横山匠さん(トゥラリカというバンドのギターとボーカルをやっています)がだいぶん興奮気味に共感を求めてきました。
「これ、最後、家が無くなるってすごくないですか?すごいなあ。家が無くなって終わるんだ。」
その最後のコーナーは「畔柳」家の建て替えに伴う、取り壊し工事の様子を丁寧に追っており、壊される前の家の窓から顔を出し微笑んで手を振る親子三人の写真や、ポスターや「畔柳」の収集物が当たり前のように並べられた部屋兼スタジオの写真、容赦ない工事全体の作業工程をとらえた写真、そしてこちらも言葉を失ってしまう様な更地の写真、壁面前のスペースには実際にはがし取った建材や、土などが配置され、その先に展示の最終地点として完成したYODO「MEMORIES」のアナログレコードとCDが飾られていました。
19:50
三ツ矢さんから、予定されていたオープニングアクトであるジェット達によるパフォーマンスがホールのロビーで始まる事、そして「畔柳」がここに間に合うかという事については未だわからない事が案内され、私たちは階上にあるホールへ移動しました。
この日のジェット達のパフォーマンスは、三方に置かれた鉢植えの観葉植物(ホールに元々あったもの)をバンドメンバーに見立て、自分がフロントマンになり、わがままなメンバー達の要望に渋々応えながらバンドサウンドを確立しようと努力し、改めて自分が離れてサウンドチェックしてみると、三体の観葉植物だけで演奏が成立しており、実は自分が要らないのではという事に気づき、絶望し、気分転換として床に寝そべってマンガを読みふけるという至高のプロットでしたが、サウンドチェック→絶望のあたりで、ホール外のメンバーと三ツ矢さんが騒ぎ始め、マンガを読んでいるジェット達を(形態こそ違えど同じ芸術家ともあろう者が、その事実に対する感激のあまり)遮って、半ば叫ぶようにして私たちにこう伝えました。
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立石草太(たていしそうた) 名古屋出身。1982年生まれ。2002年、高校の同級生だった友達とジョンのサンというバンドを結成し、現在まで活動。 http://jonnoson.web.fc2.com/
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