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WHAT ABOUT YOU? #14 / 林青那

Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

whataboutyou14
東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。 このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。

今回は、大胆でシンプルなモノクロの世界に豊かな静けさが漂う作品を描きだす、注目の作家、林青那さん。2014年にHB FILE COMPETITIONで大賞を受賞後、じわじわとファンを増やし続けています。


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—子どもの頃から絵を描いていたんですか?

そうですね。物心ついた時からずっと絵を描いていました。小学校2年生の時、近所のアトリエに頼んで入れてもらって、そこで絵を習っていました。本当は高学年からじゃないと入れなかったんですが、私がどうしても入りたい!と親に頼み込んで、入らせてもらったんです。そこでは絵を習うというより、デッサンも油絵も、陶芸も、立体のようなことも、そこにある道具で何でも自由に作っていいという場所でした。ろくろや窯もあったので陶芸もできたり。美大受験で行くようなデッサンのアトリエと違っていて、とてもいい経験だったと思います。その後、高校は美術の学校へ進んで、卒業後は桑沢デザイン研究所に入学しました。

—絵の道をまっしぐらですね!

そうですね。私は勉強も運動もほんとうにできなかったので、親もそれを伸ばすしかない、と思ったようで(笑)

—桑沢ではデザインを勉強していたんですか?

そうです。絵で食べていけるとは思っていなかったので、今までのことを活かせる仕事はデザインだろうなと思って。桑沢では3年間グラフィックデザインを勉強しました。でも、卒業の頃に体調を崩して、就職活動ができずに卒業してしまって。アルバイトしながらずっと絵を描いていたんですが、その頃、たまたま安西水丸さんに絵を見てもらう機会に恵まれたんです。そこで「線がいいね」と言ってもらえて、それだけなんですけど、その言葉にとても助けられて、コンペにも出してみようと思えたんです。

aona5©林青那

—2014年に「HB FILE COMPETITION vol.24」で大賞(鈴木成一賞)を受賞されました。このコンペには初応募だったんですよね?

その前にも他のコンペに少しだけ出したことがあったんですが、「コンペってこういう感じの絵かな」と考えて描いてしまって、全くダメでした。HBの時には、本当に自分の好きなことをやって出したんです。そうしたら、まさかの大賞をいただいて。いろんなコンペの中でも一番とりたかった賞だったので、とてもうれしかったです。とはいえ、すぐにものすごくお仕事が増えたりすることはなく、「あれ?」というのはありましたが(笑)マイペースにやり続けて、最近ようやくいろいろと声をかけていただけるようになりました。

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©林青那

—風景や人物はあまり作品には見られないですよね。もともと「もの」を描くのが好きだったんですか?

そうですね、モチーフは、身の回りのものが多いんですけど、小さいネジとか、トイレットペーパーの芯とか、ゴミも好きで。ひたすらそういうものを描いていました。ものを描くようになったのは、フィリップ・ワイズベッカーの影響もあります。なんでもないものも、あんなににかっこよく描けたらいいなと思いました。

—描かれているものって、鑑賞者としてはやはり気になるんですが、具体的に「これは何を描いたんですか?」と聞いても、林さん自身もあまりわからなかったり、覚えていなかったりしますよね。「もの」を描いている人って、対象物に思い入れがあるのかな、と思いがちなのですが、どうやらそういうことではなさそうですね。

モチーフに思い入れは全くないです。私、印刷物のようなものというか、ただの陰影とか、かたちを描きたいんです。「世界観」や「自分の表現」じゃなく、ただ単にかっこいい図案が作りたい、というだけでずっと描いていて。気持ちは全く込めずに、画面も対象物もあまり見ないで描くこともあります。想像だけで描くこともあまりないですが、見過ぎないくらいがちょうどいいです。ひとつのモチーフで、何十枚も描いて、最終的にそこから選ぶという制作方法です。なぜか、描いているときの記憶があまりなくて、わーっと描いて、できあがったのを見て、私これを描いたんだ。もう二度と描けないなっていつも思うんです。

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—ご自身の絵に驚いているってことですよね。すごい集中をしているんでしょうね。感情とか、意識の影響からの逸脱を目指しているというのは、シュルレアリスムにも通じるものがあるのかも。

個人的にはシュルレアリスムはそんなに触れてきていない気がするので、影響を受けた実感はなかったです。ただ、20世紀美術のあれこれには影響を受けているとは思います。マティスやピカソはもちろんですが、戦後の反芸術、フルクサスなどを知った時の衝撃も凄くありますし、大人になってからはモダニズムや民藝の影響も強かったです。 昔はそれをイラストレーションの世界に持ってこようとは全然思ってなかったので、多分HBのコンペ作品を制作しているあたりからじわじわ滲み出てきて、今に至るという感じです。そういえば、昔から家にアンドレ・ブルトンの本があったりしたので、知らず知らずにシュルレアリスムも身近にあったのかもしれません。父はイヴ・クラインが好きで、私の名前の青はインターナショナル・クライン・ブルーから来ているそうなのですが、根本はそこかなとは思います。だんだんとモノクロームに固執してきたのもその影響が大きいです。

—へぇ~!クラインブルーの「青」なんですね!

そうみたいです。そういうこともあって、その頃の美術が身近に感じていたような気がします。私は、新しいものを作りたいとは思っていなくて。本当をいうと、どうもこの21世紀がしっくりこないというか、20世紀に生まれたかった、という願望が密かにあって。そこで評価してもらえるもの、当時の印刷物にあるようなものを作っていきたいなと思って今は描いています。

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—その考え方は面白いですね!何百年先も見てもらえるような作品を作りたい、というのはよく言いますが、逆なんですね。普遍的である、という点では同じことだと思いますが。当時の作家たちと切磋琢磨しながら作品を作りたい!ということですよね。ウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」のような話ですが、いちばん行きたい時代はいつごろですか?

戦争はもちろん嫌ですが、いいとこ取りだったら20世紀初頭~戦後の欧米とか、でも50~60年代も好きですし、いろいろありすぎて絞れないです。切磋琢磨…というか、あくまで憧れなだけなので、陰で見ているだけでいいかも知れません。

—今年、お名前の表記を「はやしあおな」から「林青那」に変えられましたが、なにか気持ちの変化などがあったのですか?

迷っていたんですが、タイミングをずっと逃していて。学生の頃は絵本作家にもなりたかったんです。字面が渋いので名前もひらがなの表記にしていたり、色も使っていましたし、タッチもいろいろと変化しました。画家になりたいなどとも全く思っていなくて、雑誌の挿絵などを細々と描きたいと思っていました。

最近になって「作品をつくる」という意識が奥底から出てきたと感じています。もっと強い何かを作りたいと思うようになって、名前の表記も思い切って今年漢字に戻しました。モチーフも、今まではものを描いていたんですけど、ここ1年くらいはただの図になってきていて、ものじゃなくてもいいというか。いっそ絵じゃないほうがいいのかな、とも。

—わ、気になります。今回展示されている版画もいいですもんね。

版画は実験的に作ったものなのですが、最近は原点に戻って油絵や彫刻やオブジェも作りたいなとも思っています。自分の絵の周りに散らばっているゴミの方がかっこよく見えてきたり、試し書きが一番いいような気がしてしまったり…。だんだんとイラストレーションとは別のことに興味が湧いてきているので、並行していろいろ製作を続けていきたいと思っています。

イベント情報

2016年5月21日(土)~6月6日(月)
林 青那 個展「紙と図」
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00-20:00
定休日:火曜
http://www.onreading.jp

林青那 Aona Hayashi
イラストレーター。東京都在住。
2014 HB FILE COMPETITION vol.24 大賞(鈴木成一賞)
これまでにCLASKAなどのクライアントワークを手掛けている。
http://www.aonahayashi.com/

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