Text & Photo by Ayaka Torii

仕事を辞めずにバックパッカー。
名古屋在住アラサーOL海外一人旅日記
ヨーロッパ編8 心残りなハンガリー・ブダペスト旅。豪雨によるドナウ川の水位上昇、ルームメイトのアクシデント、謎の野外フェスで音楽を聴く。
2024年9月20日〜22日
ヘルシンキ中央駅で買ったおにぎりのおかげで胃の不調から復活した私は、夕方、フィンランド・ヘルシンキからハンガリー・ブダペストへ移動した。フライトは1時間ちょっと。次のハンガリーでこの2ヶ月のヨーロッパ旅も5カ国目に突入する。毎度フライトの時間が短く、また欧州諸国間の移動はほとんどの国で入出国手続きが免除されているのでパスポートにスタンプを押すこともなく、まるで国内旅行のようだった。
空港からバスで市街地まで行き、夕方、宿に到着した。ドミトリーには若い女の子2人組が先に来ていて、楽しそうに身支度を整えていた。ヒールの高い靴を履いて、髪を巻いている。お洒落して夜の街に繰り出すのかな。
さて、北欧から東欧にやってきた。ハンガリーというと東欧の中でも、なんとなく華やかで優雅なイメージがある。首都・ブダペストは「ドナウの真珠」と謳われ、ドナウ川には鎖橋が掛かり、川の両サイドに城や国会議事堂などの歴史的建造物が並んでいる。特に私は国会議事堂が気になっており、日没後、クルーズ船に乗ってドナウ川からライトアップされた国会議事堂を見ることを楽しみにしていた。youtubeで調べるとクルーズの動画がたくさん出てくるが、暖色のライトに照らされ黄金に輝く国会議事堂は本当に綺麗で、実際に自分の目で見ることができたらどれほど美しいだろうと色めき立ち、今回の旅の中でもブダペストは特に行きたい気持ちの強い都市だった。
だったのだが。
丁度数日前に近隣のオーストリアやチェコ辺りで記録的豪雨が発生し、ドナウ川の水位が上昇しているという情報がGoogleマップを通して出てきた。外務省のサイトでも情報が出ており、川周辺の道路が通行止めになったりしているらしい。
私がハンガリーに入国した時点では天候は良く、雨も降っていなかったが、川の水位に関してはまだ事態は収まっていない様だった。クルーズの予約サイトの予約受付は停止している。
なんというタイミングの悪さ。明日の夜にライトアップされた国会議事堂を見る予定だったのに、この土地での一番のお目当てが入国早々おじゃんになってしまった。旅に困難はつきものだけれど、胃の不調から解放され、ようやく元気になったところでまた出鼻を挫かれてしまい気が滅入る。
しょうがない。どうしようもないのでそれ以外のことで楽しもうと思い、ひとまず、夕食を食べに外に出る。
アジアのご飯を食べると元気が出ることが分かったので、ドミトリーのすぐ横にあった中国料理店で麺料理を食べた。


牛肉麺のようなものを注文した。
めちゃくちゃ美味しい。数日前までの胃のむかつきが、まるで無かったかのように箸が進む。箸を持つこと自体ジョージアでラーメンを食べて以来だった。
落ち込んだ時はアジア料理店に行こう。そう決めて宿に戻り、寝る支度を整えて就寝した。
買った水。平成を感じるデザイン

ここで思わぬアクシデントが。
ドミトリーで相部屋だった若い女の子のうちの1人が、お酒を飲みすぎたのか夜中にリバースしてしまった。深夜、部屋の電気が点いてスタッフが入ってきて、部屋の掃除を始める。女の子はお酒で粗相をしたことがこれが初めての事らしく、泣きじゃくってスタッフに謝っている。さっきまであんなにバッチリめかし込んでいたのに、気の毒だ…。その日の夜、アイリッシュパブ的な場所に行って飲んだお酒でやられてしまったらしい。一方でその女の子の友人はこの状況でも爆睡していた。
突然の出来事でそこから私は完全に目が覚めてしまい、結局朝までうまく寝付けなかった。
翌朝、部屋に差し込む日光で目が覚めた。寝不足で若干頭がぼーっとしている。
外に出るとかなり天気が良かった。雲一つない青空が広がっている。

ドナウ川は大丈夫だろうか。気を付けつつ、私は川の近くまで行ってみることにした。バスに乗って近くまで行ってみると、普通に人々が川の周辺を歩いている。バスから降りて私も人がいるところに混ざり込んだ。そして川の様子を見て驚いた。




茶色い水が流れていて、川が氾濫していた。水面があと少しで橋まで届いてしまいそうだ。一部道路が冠水している。異様な光景は寝不足の頭を刺激した。幸い街までは被害が及んでいないようで、観光客は普通に観光していたので、安全優先で散策を開始する。
まずは老舗カフェ、 Gerbeaud (ジェルボー)へ。
オペラを注文した。




ヨーロッパらしく、重厚感のある豪奢な内装。
ここでようやく私の想像していたハンガリーを感じることができた。
散策を進めていると、変わった建物が見えてきた。


Googleマップで調べると、ここはブダペスト民族博物館というらしい。
スケートボードの練習場みたいな形をしている。両端に向かって緩やかに反り上がっており、階段を登って端まで行ってみた。


緑が多く、公園のような雰囲気がある。ブダペストにこんな建築があるとは知らなかった。
その後も近場を歩く。
空に浮かぶ気球
歩いていると、遠くからいい感じの音楽が聞こえてきた。軽やかなインディーポップが流れている。近づいてみると野外フェスの会場みたな場所で、スタッフが設営を進めていた。音楽イベントだろうか。看板を見ると時間帯が記載されており、イベントは夕方から始まるようだったので後で行ってみることにした。ハンガリーでカルチャー的なイベントに出くわすとは。寝不足や川の増水でやや元気を無くしていたが、少し好奇心が戻ってきた。
昼食はハンガリーの家庭料理、グヤーシュを食べた。牛肉、パプリカなどの野菜が煮込まれたスープ料理だ。

昼食後、今回の旅で一番見たかった国会議事堂を見に行くことにした。川沿いに建つ国会議事堂橋を正面から見るには、橋を渡って向こう岸に渡らないといけない。再び、水位の上がったドナウ川を見ながら橋を渡り、目的地まで歩いて行った。段々国会議事堂が近づいてきた。

橋を渡ったこちら側も、普段なら道路である場所が冠水していた。街灯の下部が水に浸かっている。
ずっと川沿いをまっすぐ歩き続けると、ようやく国会議事堂の正面に来た。
国会議事堂は真っ青な空と、なみなみとした水量のドナウ川に挟まれて佇んでいた。せり上がった水面に建物が反射して映っている。普段なら船が行き交っているのかもしれないが、この水位上昇の中で稼働している船舶はひとつもなかった。
ちなみに写真は無いが、クルーズできないならせめて川沿いからライトアップされた国会議事堂を眺めたいと思い、夜にもう一度国会議事堂前に行ってみた。が、なんとライトアップがされておらず、建物は暗闇の中だった。この水位上昇の影響でライトアップは中止になっていたのかもしれない。遂に私はブダペストで一番見たい景色を見ることができなかったのだった。残念だ。
ドナウ川から離れ、地下鉄で例の音楽イベントに向かった。
ステージの真ん前は柵で区切られており、リストバンドがないと入れないようだったが、それ以外は出入り自由のようだったので柵の近くで開演を待った。
1人の女性がステージに登場し、DJが始まる。


昼間の設営の段階では爽やかな曲が流れていたが、うって変わってDJの女性はゴリゴリのEDMを流していた。その次の男性のアーティストはHIPHOPだったので、自分が想像していたよりもパリピな雰囲気のイベントだった。ステージのスクリーンにはなぜか招き猫と漢字の映像が映し出されて日本を感じる。一体どういうコンセプトの音楽イベントなのかよくわからなかったけれど、会場には若者から子供、お年寄りまで様々で、地域のイベントの一環だったりするのかもしれなかった。
日が暮れ始めた頃、宿に戻り、昨日行った中華料理店で夕食をとることにした。もうアジアの料理が恋しくなっている。
豆腐麺というメニューが気になったので、食べてみることに。

ちょっと写真がボケているが、なんだか思ったのと違う見た目の料理が出てきた。豆腐と書いてあるから勝手に細くて柔らかそうなヘルシーな麺を想像していたが、かなり弾力のある硬めの麺だった。味は確かに大豆っぽい気がする。けれどなんというか、日本で食べたことの無いような味がした。この前食べた麺料理は普通に美味しかったので油断していたが、ここはガチ中華料理屋なのだ。頼む前に豆腐麺がどんな料理なのか調べるべきだった。いつも直感とフィーリングで物事を判断してしまうのをやめたい。なんとか食事を済ませ、宿に戻り、明日に備えて寝た。
翌日。今日は13時半発の列車でハンガリー・ブダペストからスロバキアの首都・ブラチスラバに向かう。これまでずっと飛行機で国を跨いできたが、このヨーロッパ旅で初めての鉄道移動だった。
ブダペスト西駅の窓口で、ブラチスラバまでの切符を買う。最初窓口がどこにあるのかわからず、案内版を見ながら進むとかなり辺鄙な場所にあった。

買えた。これまで航空券はネット予約だったので、海外の窓口で直接鉄道の切符を買うのは小さな達成感があった。
移動前に最後の食事をする。駅舎内にあるマックへ向かった。
この駅舎はエッフェル塔を作ったギュスターヴ・エッフェルが設計しており、併設されているマックは世界一美しいマクドナルドと言われている。2024年8月にリニューアルオープンしたばかりだったので、私が行ったタイミングは丁度リニューアル直後だった。

天井が高く、壁にはヨーロッパらしいレリーフが施されていて、確かにマックとしては珍しい内装だった。

何を注文したか忘れてしまったけれど、スタンダードなセットメニューを食べた。
マクドナルドはどの国でもほぼ同じ味がするので、日本食を食べた時と同じような安心感がある。この時ちょうど日本では月見バーガーの季節だったので、月見バーガーが食べたいなとぼんやり高い天井を見ながら考えていた。
ハンガリー・ブダペストでの滞在は、致命的では無いけれど小さな不運が積み重なった旅だった。国会議事堂の夜景は見れず、ルームメイトはリバースし、寝不足で散策し、最後の夕食は口に合わず、なんだか不完全燃焼気味な旅になってしまった。ブダペストの街自体はもちろん素晴らしい。ただ滞在したタイミングと自分のコンディションの問題で100%楽しめたかと言われれば嘘だ。現に、このコラムは正直あまり筆が乗らず、iPhoneのメモに書きかけをずっと保存したままにしていた。今後ブダペストに行く予定がある人は、ぜひ私の代わりに国会議事堂の夜景を目に焼き付けて来てほしい。
ブダペスト西駅の様子

旅の途中でモチベーションが下がり無気力になることをバックパッカーの間では「沈没」という。胃を痛めたフィンランド滞在から体調は回復したものの、今度はメンタル面が若干落ちており、これが沈没なのかもしれないと思ったりした。
なんとなく沈んだ気分を引きずったまま、次の国、スロバキアのブラチスラバを目指したのだった。
Ayaka Torii / 鳥居 絢香
1992年生まれ。名古屋在住の会社員。LIVERARYスタッフ。
海外旅行と名古屋のカルチャー、飲食店が好き。
沢木耕太郎と誕生日が同じ。
Instagram: ayaka_10r
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