Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)
東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。 このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。搬入中のざっくばらんな会話をお楽しみください。
今回は、雑誌やパッケージ、広告などで活躍中のイラストレーター、ますこえり。どこか昭和っぽいレトロな作風が人気の彼女のイラストを、目にしたことがあるという方は多いのではないでしょうか。最近は、マスコハンコやマスコテープ(マスキングテープ)、LINEのスタンプなども話題です。思わず笑顔になってしまう、彼女の作品はどのように生まれるのでしょう。
_いつ頃から、イラストレーターとして活動しているんですか?イラストレー ターになるまでの経緯を教えてください。
4年くらい前です。小さいころから絵を描くのとお話を考えるのが好きだったので、自分の適職は漫画家だと思って目指してました。でも根気がなく漫画は全然完結せず(笑)、高校くらいになると絵だけ描くようになりました。大学は普通大学の文学部に行きました。いつかは絵を仕事にしたいけど必ずしも美大に行かなくてもいい気がする、と。ひねくれ者でして。卒業後は印刷会社のデザイン部に入りました。知識も技術もなかったのに、絵を見せたら受かってしまって。働きながらデザインや印刷のことを勉強させてもらって4年後に退職、東京で一人暮らしをはじめ、神保町の美學校に通ったりしているうちに、いろんな人と知り合って、気付けばお仕事をもらってイラストレーターというのになってました。
_ちょっと懐かしい、レトロな感じと、にんまりとしちゃうユーモラスなところが素敵だなと思うのですが、現在の作風はどのように生まれたのでしょうか?
よく言われますが、自分では特にレトロを意識して描いてはいません。ただ、見てきたものが少し前の時代のものが多かったので、自然とそういう感じがにじみ出てしまってるのかなと。近代文学を読んで雰囲気に酔いしれたり、図書館で昔のアサヒグラフを漁ったり、昭和の子どもの写真集とかを眺めている高校生だったので…。昔のものが好きというより、いいと思うものが大抵昔のものだったという感じです。しっくりくるというか、落ち着くんです。
_アサヒグラフを漁ってる高校生!なかなかいないですよね(笑)
描いている人物の姿というか、行動(?)が本当に面白くて、愛らしいですね。こういったアイデアはどんなときに浮かぶのでしょうか?
アイデアは、全然関係ない何かに刺激を受けて急に降ってきたりします。小さい手帳を持ち歩いてそこにメモってます。あとは、ただ何も考えずに人の顔を描いたときに、そこからその人物の性格、何をしているところでどんなポーズを取っているかが見えてきたりすることもあります。なりゆきで描くと自分でも思いがけないものが描けたりしておもしろいです。
_なるほど~。ますこさんの描く人物って、なんとなくバックグラウンドが見え隠れするというか。ストーリーのようなものも感じられますよね。影響を受けた作家さんっていますか?好きなものとか。
絵に関して言えば、意外かもしれないけど松本大洋さん。高校のとき初めて読んで、こんなかっこいい漫画があるのか!と。そのあたりからキラキラ目の少女漫画から卒業しました。あと、岩館真理子さんの90年代以降の作品。文学的で、絵も繊細で美しくて少し闇がある。影響を受けたかどうかは分からないけど、特別な存在として稲垣足穂。小学生のころ『一千一秒物語』に出会って、大学の卒論もそれで描きました。唯一無二の世界観を持っている人に惹かれます。真鍋博さんの絵もずっと眺めていたい。「たま」の音楽も好きです。定期的に俗世間から遠く離れたどこかへ連れて行ってくれるものが必要なんです(笑)絵にしても漫画にしても映画にしても、描かれている場面以外にもちゃんとその世界が続いていると思える作品が好きです。
_あ~、でも松本大洋さんが好きってなんとなくわかります。「絵」自体に物語性が感じられるところとか共通してますもんね。足穂も真鍋博もずば抜けた想像力で本当に面白いし、なんといってもユーモアに満ち溢れてて。ますこさんのユーモラスな部分はそういうところから培われてきたのかもしれないですね。作品を描く際に大切にしていることってありますか?
特に意識していないですが、強いて言えば「生きている」人物を描くということでしょうか。さっき言った、描かれていないところでもちゃんとその人の人生が存在している、というようなことです。
_こんなお仕事してみたいとか、こんな作品を描いてみたい!とか、今後の野望 (笑)はありますか?
お菓子とか食べ物のパッケージに使ってもらえたらうれしいなぁと。「小梅ちゃん」や「カールおじさん」みたいにロングセラーになったりして…(妄想)。グッズとの相性がよい気がしているので、キャラクターのお仕事とかもしてみたいですね。長く愛されるものを作りたいです。あと絵本も作ってみたいです。桃太郎とか白雪姫とか、昔話を自分流に作り直すシリーズとか。それから、やっぱり情熱をかけた漫画を少なくとも1本発表してから死にたいです。
_山形の老舗洋菓子店 木村屋のお菓子のパッケージも手掛けられてましたよね。すごくハマってました~。漫画や絵本も楽しみにしてます!
2015年8月12日(水)~8月31日(月)
ますこえり個展 『てさげ気分』
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
※14日(金)はイベントのため通常営業は17時まで。
※17日(月)~21日(金)は夏季休業となります。
イベント:うちわ気分
8月15日(土)、16日(日)
時間:12:00~20:00
お題をいただき即興でうちわに絵を描きます。
料金:1,500円(似顔絵は2,000円)
ますこ えり|masco eri
埼玉県生まれ。東京都在住。大学卒業後、印刷会社デザイン部勤務を経て2010年(頃)よりイラストレーターとして活動を始める。雑誌・web・広告等イ ラストレーションのほか、デザイン、まんが、グッズ制作など。東上野の文房具屋GOATのオリジナル商品「マスコハンコ」、「マスコテープ」、スマート フォンアプリLINE cameraにて「マスコスタンプ」も好評発売中。
[展覧会履歴]
2011年 個展「おひろめ会」(東京/千駄木空間)
2012年 個展「図案と工芸」(東京/浅草橋天才算数塾)
2012年 二人展「わたくしたちの展示」(東京/カフェギャラリー maruchan)
2013年 企画展「ビバ!プリントゴッコ展」(東京/ブックギャラリー ポポタム)
2013年 二人展「わたくしたちの皿」(東京/檸檬の実)
2013年 企画展「おっぱい展」(東京/ブックギャラリー ポポタム)
2013年 二人展「わたくしたちの盆」(巡回展・京都/喫茶ムギ)
2014年 企画展「妄想ロックフェス」(東京/ブックギャラリー ポポタム)
2014年 企画展「まつわる展」(京都/喫茶ムギ)
2014年 企画展「100人のTシャツ展」(埼玉川口/tanabike)
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