Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)
東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。 このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。
今回は、書籍の装画や「POPEYE」「BE-PAL」などの雑誌の挿絵、ミュージシャンのアートワークなどで活躍中のイラストレーター、オカタオカさん。
―オカタオカさんの絵のモチーフは、熊やキツネ、オオカミなどの野生動物やアウトドアテイストのものが多いですね。子どもの頃は、ボーイスカウトをやっていたそうですが、やっぱりキャンプとかアウトドアのレジャーが好きだったんでしょうか?
ボーイスカウトは親のすすめで、小学2年か3年のころから入っていました。今振り返ると、いい経験だったんですけど当時は嫌々行ってましたね。親としては、たぶん、活発になってほしかったんだと思うんですけど。
―そうなんですね!大人しい子だったんですか?
そうですね。スポーツ、特に球技が苦手だったんで、小学校の頃は、休み時間はずっと絵を描いてました。絵を描くのが楽しいっていうよりは、選択肢がなかったっていうか。僕、小1の時に交通事故にあって、1か月くらい入院してたんですけど、その時に同じ病室にいたお兄さんが絵がうまくて、ガンダムの描き方を教えてもらったのを覚えてますね。
―選択肢はあったと思うけど(笑)。オカタオカさんは一旦普通の大学を卒業してから、桑沢デザイン研究所に行かれたんですよね。いつ頃から絵の方向に興味を持ったんでしょう?
もともと物を作ることに苦手意識はなかったし、それに昔から音楽が好きだったので、ありがちですけどCDのジャケットのデザインがやりたいと思って、デザイナーになろうと思いました。高校三年生の夏に美大に行きたいと思って、部活を引退してから美術部に入ってデッサンとかやり始めたんですけど、当然間に合わなくて全部落ちて(笑)。親に美大のための浪人はダメって言われたので、一年間ろくに勉強もせず、半分自暴自棄で宮崎の大学に入学しました。大学ではメディア論のゼミに入ったんですけど、その先生が若いころ桑沢デザイン研究所の先生をやっていた人だったんです。このまま就職するという気持ちにもならず、ゼミの先輩で、卒業後に桑沢に入るという人がいたこともあって、僕も桑沢に入学することになりました。
―結構偶然の出会いで桑沢に行くことになったんですね。東京に対する憧れとかはあったんですか?
あんまりなかったんですけど、ここではない場所に出ていきたいっていう気持ちは大きかったですね。地元の大学を出て、地元の会社に就職してっていう流れが多くて、それが嫌だったんです。
―その頃はどんなものが好きだったんですか?
大学三年生の時、ゼミで夏休みの一か月間、タイのカオサンでフィールドワークをしたのがすごく楽しくて。ゲストハウスの値段を調べたり、バックパッカーにインタビューしたりして。それで味をしめて、四年生の夏休みにはインドとタイへバックパックでひとり旅したんです。その頃の経験が結構大きくて、桑沢に入学したころは、絵も服装もインドっぽい感じでしたね。
―へえ、今はインドのイメージあんまりないですね。よくカレーの話はしてますけど。
カレーはそれまでも普通に好きだったんですけど、インドに行ってもっと好きになって、カレー屋でバイトするようになりましたね。当時は横尾忠則や田名網敬一とか、Peter Maxとか、プッシュピンスタジオとか、サイケデリックな感じのものが好きでした。藤原新也とかも読みまくってましたね。その頃から民族ぽいものが好きで、PENDLETONのテキスタイルとか、刺繍とか集めたり。今でも好きですけど。
―なるほど。ヒッピーカルチャーからアメリカ~西海岸への興味につながってるんですね~。
あと、タトゥーも好きでしたね。格闘技が好きだったんですけど、みんなかっこいいタトゥーが入ってて。大学の卒論は「タトゥーとアイデンティティー形成」がテーマで、宮崎市のタトゥーショップに話を聞いたりしました。そのときにお世話になった彫師の方が、オールドスクールなスタイルで、線が太くてちょっとポップなモチーフだったりしてアートとして刺激を受けました。
―タトゥーは入ってないですね?
ずっと入れたいなとは思っていたんですけど、30歳になるまでに入れなかったらいれないなと思ってて、今もう30歳を迎えたので、もういれないかなとは思ってますけど。
―桑沢ではいろんな出会いもあったと思いますが、今の自分に直接つながるような形で影響を受けたものや人はいますか?
僕はインドとかサイケデリックしか知らなかったので、桑沢に入って他にも魅力的な世界がたくさんあるんだっていうのを知って、もともとポップでかわいいものが好きだっということもあり、アボット奥谷さん、本秀康さん、100%ORANGEさんなどに夢中になりました。僕はデザインはあまり得意じゃなかったので、自然と、絵を描く方に向かっていってましたね。同級生に、デザイナーの加瀬透くんとかイラストレーターの久野貴詩くんとかいて、学内でとにかく人気者だったんですよ。まだZINEが今みたいに知られてない頃からひとりで作って配ったりとかしてて。それで負けたくないっていう想いがあって、自分もイラストで認められたいと思いましたね。加瀬くんとは、水中図鑑というバンドも一緒にやってたり、2012年にはホトリというスペースを始めて、同世代の作家を集めた「とぶたましい」という15人くらいの展覧会もやって。anccoちゃんとかドラゴン(オオクボリュウ)とか、大河原健太郎くんとか。今でこそみんなと仲良くなりましたが、当時からみんな仕事したり、賞をとったり活躍し始めていたので、彼らに対してもコンプレックスがありましたね(苦笑)。あと、学校の外では小田島等さんにはめちゃめちゃ影響を受けましたね。桑沢時代に、美学校(東京神保町にある1969年創立の美術/音楽/メディア表現の学校)にちょくちょく遊びに行くようになって小田島さんと会って、いろいろと話聞いてくれるようになって、世界をひろげてくれたっていう感じですね。
―周りに刺激しあえる仲間がいっぱいいたんですね。それでは、今回の展示について聞かせてください。「NOT ONLY SLEEPING」というタイトルですが、どういう想いが込められているのでしょうか?
元々マイペースだねとか、のんびりしてそうだとか言われることがあるんですけど、でも別にぼけーとしてるわけじゃないというか。熊の冬眠に例えてるんですけど、ずっとのんびり寝てるわけじゃくて生死をさまよっている状況だから、実はそんな楽してるわけじゃないんですよ。自分もただイラストを描いてるだけじゃなくて、いろんな表現に挑戦したいという想いがあって。イラストレーターっていうよりは、何でもできるようになりたいんですよね。平面だけにとらわれたくないというか。
―なるほど、常に新しいものに挑戦する、自分はこういうスタンスでやっていくっていう決意表明の展示でもあるんですね。ON READINGで前回展示をしてもらったときからも、変化してきているなという印象です。今回は、木彫や陶器、張り子など立体作品も増えているし、絵画作品にしても以前より大胆な線が増えているなと思いますが、ご自身ではどう感じてますか?
そうですね、あまり細かいところにはこだわらなくなってきてます。今は自然体で、無理をしていない線に憧れていて。Kyle Field(Little Wings)や、Nathariel Russell、Ty Williamsのように自分の生活に作品が結びついているというか、絵も音楽もやって、どっちで有名っていうことじゃなくて、同じ重さでやっている人のあり方がいいなと思っていて。
―『Beautiful Losers』に出てたようなアーティストたちも、みんなそんな感じですよね。スケボーやって絵描いて歌うたって波乗って、みたいな。それがすべて表現になってるのがかっこいいですよね。
そう思うようになったのは、親の影響かもしれないです。僕の父は僕が0歳の時に亡くなっているんですけど、海が好きだった人で、サーフィンとかスケボーとかモトクロスとか釣りとかいろいろやってて、家にはスケボーとかサーフボードとか釣り竿とか残っていて、自分はやらないけど、そこに対する憧れはあるのかなと。もし父が生きてたら自然とサーフィンとかやってたのかなとか、でもそうしたら絵はやってなかったかもしれないなとかいろいろ思うんですけど。父親の実家が岐阜で、ログハウスとか小さいころから好きだったし、父親の影を追い求めているっていうのはあるかもしれません。
―またこれからも新しい作品がみられそうですね。
そうですね、今は木版画がやりたいなと思っています。音楽もやっていきたいし、昔から写真も好きでずっと撮っているし、やりたいことはまだまだたくさんあります。
2016年6月8日(土)~6月27日(月)
OKATAOKA solo exhibition 『NOT ONLY SLEEPING』
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00-20:00
定休日:火曜
http://www.onreading.jp
SPECIAL EVENT:オカタオカの動物ペーパーウェイト屋さん
日程:2016年6月25日(土)
時間:13:00~18:00
料金:3,000円(1個:所要時間30分程度)
ご予約優先:http://onreading.jp/exhibition/okataoka-not-only-sleeping/
OKATAOKA オカタオカ
1986年生まれ。宮崎県出身、東京都在住。2011年桑沢デザイン研究所デザイン専攻科卒業後、イラストレーターとして活動を始める。 主に書籍や雑誌の挿絵、ミュージシャンのグッズ,フライヤーのアートワークを手がける。 バンド『水中図鑑』としても活動。
http://momonga-pyonpyon-magazine.blogspot.jp/
1
2
3
4
5
6
7
8
9