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WHAT ABOUT YOU? #12 / 成重松樹+きくちゆみこ

Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

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東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。 このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。

今回は、 東京で小さな美容室koko mänty (kissa)を営みながら、写真の制作を続けている成重松樹さんと、翻訳業をしながら、「嘘つきたちのための」文芸誌(unintended.) L I A R Sを発行するなど、言葉で表現活動を行うきくちゆみこさんです。


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―おふたりの作品との出会いは、「髪が裸なのでとても怖い、ときみが言う。」でした。2013年のTOKYO ART BOOK FAIRで写真集を初めて見て、すぐにお取扱いさせていただきたいとお願いしました。まるで小説のような写真集だなと思ったのを覚えています。被写体の女性も風景も、現代なのに、80~90年代の日本のようにも見えて、不思議な湿度を帯びた既視感を感じました。そして、とても印象的なタイトルとことば。何度も口の中でころころと唱えたくなる、ことばの置き方も、この写真集をとても魅力的なものにしていたと思います。

まずは、成重さんにお伺いします。成重さんは、どのように写真と出会ったのでしょうか。

成重松樹(以下:N):僕は今ひとりで小さな美容室を営んでいるのですが、20代前半の下積み時代は、何か自分自身の在り方に焦りや不安を感じていました。そんな気持ちを振り払うために、仕事以外の時間でいろいろなことを試しはじめたんです。絵画や粘土細工、彫刻、部屋のリノベーション…そのうちのひとつに写真もありました。27歳の時、自分で店をオープンすることになって、友だちと一緒に内装やらなんやら準備をしていた時に妻と出会いました。その時からです、今みたいにたくさんの写真をとるようになったのは。

―写真を撮り始めた頃から、きくちさんとの出会いがあったのですね。それでは、写真で作品を作り始めたのはどういったきっかけがあったのでしょうか。

N: “僕は写真を撮っている”と意識的になったのは、2012年の夏。実家(大分県の国東半島)で初めて三脚を使って両親を撮りました。仕上がったものを見たとき、ようやく撮りたい写真が何か、どう撮ればいいのか、わかった気がしたんです。その後、Facebookやtumblrや、Flickrにあげていた写真を、美容室のお客さんだったTAKAIYAMA inc.の山野英之さんが見てくれていて、写真集を制作して2013年のTOKYO ART BOOK FAIRに出すことになりました。それが、第一作の「髪が裸なのでとても怖い、ときみが言う。」だったんです。この写真集をきっかけに、駒沢の本屋「snow shovelling」さんが展示をしませんか?と声をかけてくれたんです。そこから、僕にとっての写真はスクリーン上の二次元的なものから、三次元のものになっていったんです。

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―きくちさんが「ことば」を意識し始めたきっかけを教えてください。昔から文章を書いたりされていたのでしょうか?

きくちゆみこ(以下:K):2歳のころから大学生まで、ラボ・パーティという外国語・異文化教育団体に入っていて、その影響が大きかった気がします。詩人の谷川雁さんが創立した団体で、外国の歌(イギリスのナーサリィ・ライムから韓国のわらべうたまで)で踊ったり、世界中の物語を英語と日本語で演劇発表したり。「ことばがこどもの未来をつくる」というスローガンからわかる通り、とにかく言葉を中心にした活動だったんですよね。物語も、日本の民話からインディアンの神話、シェイクスピアから宮沢賢治、さらにはオバケのQ太郎までと、ものすごく幅広いんです。とにかく物語の世界ということと、言葉というものに触れた経験でした。中学生の時、一カ月アメリカへ一人旅をして、その時に英語にふれたのも大きかった。ラボでは文法や英会話みたいなことはやらないのですが、小さい頃からからだと心に蓄積された「言葉」が口をついて出てくる、みたいな感覚をはっきりと感じて。日本語でも英語でも、とにかく言葉の裏にはいつでも言葉以前の「思い」が必要なのだなあと、当時から感じていました。あとは英語の持つリズム感覚みたいなものが、たぶんからだに染み付いて、口に出して気持ちのいい言葉、というのをその頃から実感していた気がします。

―おもしろい取組みですね。子どもの頃から言葉に親しんでらっしゃったんですね。

K:そうですね、でも、とにかく何かを書きたい!みたいな気持ちは特別なくて、幼稚園のころはファッション・デザイナーとか漫画家とかになりたかったです。洋服の絵を描くのがとっても好きで。文章として書くことに興味が湧いたのは高校生のころで、仲良くてかつ、憧れていた女の子と手紙の交換をする時に。それはそれは熱心に読んだ小説や好きな音楽や、恋の話なんかをルーズリーフに綴ってました。あとは大学生の時にやっていたブログや、渡米先で先生に勧められて始めたTumblr。それで、アナリティクスを使って何人くらい見てくれているかチェックするといいよ、って。人に見られることを意識することが何かの解放になる、と先生は思っていたのかな? 昔から文章は、わりと人に見られることを前提として書いていた感じがします。何者でもない自分が書いたものを、読んでくれる人がだんだん増えていく、という実感をもらえたことはとても大きかったです。だからインターネットの申し子、という世代には少し早かったのかもしれないけれど、インターネットのあれこれはとても好きなんです。わたしにとってはやさしい空間。あと、中学の時にパソコン部でタイピングの練習を早いうちからしていたのも大きかったかも。タイプする指と頭の思考回路がぴったり来る感じがして、今でも手書きではぜんぜんかけません。タイプの音もしっかりリズムになっている気がします。

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イベント情報

2016年2月17日(水)~2月29日(月)
成重松樹+きくちゆみこ展『わたしがぜんぶ思い出してあげる/あなたがぜんぶ思い出してくれる』
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
問:052-789-0855
www.onreading.jp

成重松樹
目黒の不動前にて小さな美容室koko mänty (kissa)を営み、写真の制作を続けている。
http://mtk-ooma.tumblr.com/

きくちゆみこ
翻訳業をしつつ、言葉を使った作品制作・展示を行う。「嘘つきたちのための」文芸誌(unintended.) L I A R S 発行人。
http://www.yumikokikuchi.com/

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