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WHAT ABOUT YOU? #27 / shunshun

Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

 

東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。

このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。 今回は、目の前の物や風景の美しさを、緻密な筆致で描き出す素描家、shunshunさんにお話を伺いました。

 


 

 

―しゅんしゅんさんは、もともとは建築のお仕事をされていたんですよね?

そうですね、もともと小さいころから絵が好きで、描いてはいたんですけど、表現としての絵画よりもデッサンとか、好きなものを写実的に描くことの方が好きだったんですよ。高校3年生の時に美術の先生に相談したらあなたは理系の方が得意なようだから、建築とかいいんじゃないかといわれて。もともと父が大工で、その父の背中を見てたし、ものづくりが好きだったので、いいかもなと思って、芝浦工業大学の建築工学科に入りました。そしたらそれがすごい楽しくて。そこから、図書館に通っていろんな建築の本を読みまくったりとか、世界にある建築を知って、じゃあ実際にそれを見に行こうと思って、旅をしたりとか、建築にどんどんはまっていきました。卒業後は、建設会社で8年間働いていました。

―絵の活動はどのように始まったのでしょう?

学生の頃からスケッチブックを持ってヨーロッパを旅して、建物や風景をスケッチするのが好きで。社会人になってからも、休みの日に出かけた喫茶店でちょっとスケッチしたりとか、枕元にスケッチブックを置いて、寝る前にひとつ、部屋とか身の回りのものとか、学生時代に旅行先で撮った写真を取り出してきたりして、15分くらいで気が向いたものを描く、ということを続けていました。そういう絵が断片的にたまってきて、これは人に見てもらいたいなと思うようになって、「点と線の間にあるもの」(2005年)という作品集をつくりました。それを見てくださった方がギャラリーを始めるということで、原画を展示しませんか、とお誘いをいただきまして、2009年に初めての展示を開催しました。当時僕は社会人6年目で、このままでいいのかなと考えていた時期でした。展示をやってみたらすごく楽しかったんです。いろんな人が僕の絵を見に来て感想を伝えてくれて。それがすごい励みになって、また描きたいと思えたんですよね。

そこからの2年間はまた仕事が忙しくなってしまって、あまり絵も描けないでいたんですが、2011年に震災が起きて。新宿の52階で仕事をしていた自分がすごく揺さぶられて、今まで普通に楽しく暮らしていたはずのまちはこんなにもろかったんだ、自分のやってきた仕事の内容ってなんだったんだろう、と、はっと我に返ったんです。こうやってぼんやりしているうちに、急に死んじゃうかもしれないんだと思ったりもして、本当に自分のやりたいことを考え始めたんですよ。そんなときに、嫁さんが「もう会社やめて好きなことやりなよ」と言ってくれて。え~いいんだ辞めてって(笑)。その時娘は3歳で、嫁さんは専業主婦で、収入も0になるんだけど、震災から半年後に飛び出すように仕事を辞めました。

 

 

―その先のことはあまり決めてらっしゃらなかったんですか?

やってみたいことはいろいろあって、例えば、僕、器のギャラリーとかカフェとかが好きだったので、そういうお店をやりながら絵を描く、みたいなこともありかな?と思っていた時もあったんですよ。それで、会社にいたころはずっと忙しく働いていたので、とりあえず行きたかった場所に行こう、と思って、1か月間車をレンタカーして、家族3人で放浪の旅をしたんです。多治見のギャルリももぐささんとか全国の行ってみたかったお店や場所に行ったり、以前から交流のあった、滋賀にある器のギャラリー、季の雲(ときのくも)さんに会社やめた報告しに行ったりとか。で、そういう人たちに会ってどうやってお店を始めたのか、とかどんな暮らしをしているのかとか聞いていたら、お店やりながら絵を描くなんて無理じゃないか、と(笑)

 

 

―意外と忙しいんですよね、お店って(笑)

半端じゃないな、すごい大変じゃないかと。お客として見てたらすごい楽しそうでいいかなと思ってたんですけど、こんな大変なんだというのがわかってきて。じゃあやっぱり絵しかないなと思ったんですね。それで、会社を辞めて3か月後に、小泉誠さんが内装を手掛けられた、tocoro cafe(東京・三軒茶屋)で展示をさせていただくことになったんです。それまでは、自分は建物が好きだったから、空間ばっかり描いてたんですが、いざ表現として描きたいものってなんだろうな、と悩んでいたときに、たまたま友人たちと富士吉田にキャンプしにいったんですよ。山中湖を朝起きて散歩していたら、すごいきれいな富士山と出逢って。雄大な富士を目の当たりにしたときにすごい感動しちゃって、生きていく勇気みたいなものをもらった気がしたんです。それで展示では、富士山を描いたり、雪の結晶を描いたり、自然界にある、僕が見て感動したものを翻訳するようなつもりで絵を描きました。

その展示で、僕の絵を見た人の顔が明るくなったような気がして、その表情を見たときに、僕は絵で生きていきたいという決心がついたんです。その後、2012年3月に東広島に引っ越しして、そこからはもうがむしゃらに、個展が決まったらそれに向かって描く、個展に来てくださった方から受けた注文とか、挿絵の仕事とか、一つ一つにとにかく集中して、つなげていった感じですね。

 

 

―しゅんしゅんさんの線は、ボールペンで描かれているんですよね。道具にはこだわりがあるのでしょうか。

ボールペンを使うようになったのは、大学に入ってからで、それまでは鉛筆を使ってたんですけど、旅をして鉛筆で描いてると、すれてぼやけちゃったりするんですよ。それでボールペンだったら旅のあいだに描いても傷まないかなと思って使うようになりました。最初は、「ハイテックC」の0.3mmを使ってたんですが、ある時描いてたら雨が降ってきて滲んじゃったんですよ。「ハイテックC」は染料インクなんですね。こりゃいかんと思って、顔料インクの三菱の「ユニボールシグノ」を使い始めて、そこから14年くらい愛用してます。

 

 

―今回、展示している海や雨の作品は、海や雨をそのまま描いているとも思えるし、線を重ねてできた抽象的な表現にも思えます。こうした線の表現はどういうところから生まれたのでしょうか?

2013年に、広島のkantyukyoというギャラリーで展示をすることになって、「頑張っていい絵を描きますね!」と言ったら、店主の方に「いや、いい絵はいらないんです。しゅんしゅんさんが失敗したと思った絵だったり、無意識の線が描けたと思ったら、そういうの全部とっておいてください。自分がいい絵を描こうと思って描いたものじゃないものが見たいです。」って言われたんです。それで、どうやったら無意識の線が描けるのかなと悩んでいるなかで、その店主の方が虫の生き様からいろんなことを学んでいるとおっしゃっていたのを思い出して。「人の方が劣っていて、虫たちは本当に健気で、生きることに正直でとても美しい生き様なんです。」と。そうか、虫かあと思ったときに、小さいころに見た、蚕が桑の葉っぱを食べるしぐさが急に思い起こされたんです。むしゃむしゃむしゃと食べてって、下まで行ったらもっかい戻ってまたむしゃむしゃむしゃ…とそれを繰り返していくんですよね。なんか、その気持ちになって線を引いてみよう、と思ったんですよ。

それで65×50センチのフランス銅版画用紙に、端から端までまずは点線を描いていったんです。むしゃむしゃむしゃ…と蚕が葉っぱを食べる気持ちで、右端まで行ったら、また左端から点線を引いて行って、それをずっと繰り返していったんです。すると、でてきたのは芝生のような模様で、途中で気分が変わったり、密度が浅かったりする部分が出ていて、逆になんか光って見えてきて、なんか海にも見えるなとか。その後、次は線だけでやってみよう、と、今度は同じ紙に途切れない線をびっしりとフリーハンドで敷き詰めたら、自分は抽象画として描いてるんだけど、定規を使わずに人の身体でやってるんで途中でやっぱり揺らいだり、曲がったりするんですよ。その時は失敗した、と思って落ち込むんですけど、とにかく最後までいこう、と描き上げてからもう一度見たら、それは波のうねりに見えてきたんです。こうやって、ただただ繰り返して線を引いたことが具象にも見えてくる、というのが自分の中でも発見でした。それ以来僕にとっては線というのはとても大事な表現手段になっています。

 

 

―“線を引く”ということをひたすら続ける、というのは相当な集中力が必要だろうな、と思います。線を引いてるときってどんな気持ちなんですか?

線を描こうと思ったら、忙しいと描けないんですよ。仕事がたてこんで気になることがあると、線が引けなくなっちゃうので、やらなきゃいけないことをまずは片付けて、すっきりした気持ちで、今日は一日線だけ引いてたらいいんだな、っていう状態にして取り組みます。線ってほんと、何の役にもたたないから、途中ではまだ何も生まれてない気がするんですよ。そういう無の状態を許容できる余力が自分にないと描けないんですよ。線は、身体の動きと1対1という関係があって、自分のしたことが全部出るというか。身体の動きとして見えるってことが面白いな。と。ある程度すすんでいくと、自分が意図しない模様がでてきたりするんですよ。今、描いている線が前に描いた線と影響しあって進んでいくので、自分が絵を描こうと思って描くんじゃなくて、導かれて、おのずと出てくる自分の状態の記録のような気がしてきます。

 

―こころの状態、体の動き、呼吸、全部ですよね。全部、自分というか。今回の展示では、海を感じられる作品が多いのですが、具体的なモチーフはあるのでしょうか?

子どものころによく見た高知の海や、今暮らしている広島から見える瀬戸内海の海など、そういう海を思い出して描いています。自分が海を見たときに感じる安らぎを線に宿したいと思っていて。でも、視覚で感じたものをうつすんじゃなくて、感じている波動みたいなものを振動として記録したいというのがあって。それが積み重なっていくと、僕の身体のなかにある海のようなものが要素として出てきたらいいかなと思っています。描くときは縦ストロークなので、「こういう絵にしたい」というのがあっても最終的な仕上がりとは90度のズレがあるので正確なコントロールはできないんですよね。なので、それよりは、線を描くという作業に集中することで、でてきたものは僕にとっても新鮮に出会えるようなものになる。

 

 

―全部引き終わらないとどんな絵になるのかわからないってことですね。安易な言い方ですけど、人生そのものって感じですね。一歩一歩重ねていって、あとで振り返ってようやくそれがどういうことだったのかが見えてくるというか。しゅんしゅんさんが、影響を受けたもの、好きだった人はいますか。
 

沢山ありますね。パウル・クレーが大好きです。大学生のころは、ゲルハルト・リヒターが好きで、初期のフォト・ペインティングも、その後作風がアブストラクトになっても、とても格好良くて、抽象画への興味が高まりました。あとは、子どものころ好きだったのは、安野光雅さんの絵本。線画でいうと、安西水丸さんの気の抜けた線や、寄藤文平さんの線にも惹かれて、そういうイラストレーションの世界にも影響を受けつつ、でも憧れていたのは、画家の方でした。

あと僕は、絵を描くようになった入り口としてクラフトの世界のなかで絵を描き始めたという意識があります。僕が、器やクラフトに興味を持ち始めたのは、tocoro cafeさんの影響が大きいです。tocoro cafeさんでは、岡田直人さんという石川県の作家さんの器を全部使ってらっしゃって、そこで気に入って、買って家で使ってみたら、暮らしが変わったような気がして。いい緊張感が生まれたんですね。器で暮らしが変わるんだ、という経験から興味を持つようになりました。同時期に三谷龍二さんの「木の匙」という本に出逢ったり赤木明登さんの「美しいもの」という本から、安藤雅信さんたちの存在も知って、そこからほかの作家さんや取扱をしている器のギャラリーを知って…というようにつながっていきました。工芸やクラフトの作家さんの、作品や生き様からも大きな影響を受けています。

そうやって社会人の頃に客としてお店の人や作家さんと話をしたり、空間をスケッチしたりしたことで、お店の人がすごく喜んでくれたり、それを他のお客さんにも教えてくれたり。ただただ好きな場所に行って好きなことをしてただけなんですけど、それがつながりになって、助けてくれましたね。いつも見に来てくれて応援してくれて、その支えがあって、今までこれたなあと思ってます。

イベント情報

2018年1月20日(土)~2月5日(月)
shunshun 個展『ゆだねる』
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A&2B
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
www.onreading.jp

【SPECIAL EVENT】Name Drawing 〜新しく出逢うあなたの名前〜
2018年1月20日(土)、21日(日)、2月4日(日)、2月5日(月)
時間:12:00~20:00
料金:お一人税込3,000円(ハガキサイズ)
ご予約不要、在廊日に随時受付します。
約15分間、いろいろとお話を伺いつつお名前からインスピレーションを得てドローイングします。
描き上げた線画はその場でお持ち帰りいただけます。

shunshun しゅんしゅん
http://www.shunshunten.com/

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