Text & Photo by Ayaka Torii
仕事を辞めずにバックパッカー。
名古屋在住アラサーOL海外一人旅日記
香港・マカオ編① 深夜特急の舞台・チョンキンマンションに宿泊。
私は海外旅行が好きだ。社会人になってから、長期の休みを取っては海外に行っている。
2020年頃のコロナ禍の間、全く海外に行けなくなってフラストレーションが溜まっていた私は、このパンデミックが収束したら一旦社会人生活から離れて、長期で旅に出ようと思っていた。この数年はYouTubeで海外のvlogを漁り、図書館で「地球の歩き方」を読み、iPhoneのメモに行きたい国を書き留める日々だった。ヨーロッパの国々を制覇したい。インドを1周してみたい。アメリカでCoachella を見たい。ウズベキスタンの青いモスクを見たい。ジョージアで本場のシュクメルリを食べてみたい…..。
ようやくコロナが落ち着いてきた2023年。会社を辞めて1年間の海外旅に出たい、と満を持して上司に申し出た。…..が、なんと退職が叶わなかったのだった。仕事を辞める気満々だった私はまさかの展開に拍子抜けした。理由は詳しくは書かないけれど、会社の都合と自分の今後を考え、今まで通り普段は会社員をしつつ、休みが取れるタイミングで旅をすることにした。
そうこうしているうちに気づいたら30代に突入。これからの人生を考えると、体力があるうちに行きたい国に行っておきたいと思い、コロナ後初の海外旅として、まずは香港・マカオを訪れることにした。なぜ香港・マカオを選んだかというと、バックパッカーのバイブルと言われている沢木耕太郎の小説「深夜特急」で、著者が最初に訪れた国だからだ。私は深夜特急が大好きだった。この香港・マカオ旅を皮切りに、私は再びバックパッカーになったのだった。
1日目 2023年11月22日(水)
中部国際空港14:10発の便で出発。航空会社は香港航空。
機内から見えた景色
香港航空の機内食
17:30頃に香港国際空港に到着。
宿のチェックインを22時までにしなければならなかったので、予定より早めに到着し、ひとまずほっとした。
地下鉄の表示
深夜特急で沢木耕太郎が香港初日、行きずりで泊まることになった重慶大厦(チョンキンマンション)に宿泊することが、まず今回私が選んだ沢木耕太郎コースの第1ポイントだった。
チョンキンマンションの入り口
チョンキンマンションは香港の繁華街・尖沙咀(チムサーチョイ)の中心部にある。立地が良く、安宿が密集しているため、バックパッカー御用達のビルとして有名らしい。
建物の中は香港人よりも外国人の割合が多い印象で、1階に関しては香港というかほぼインドだった。
インド系の飲食店や食料品店が並び、香辛料とフルーツや野菜などの生鮮食品の匂いが1階に充満していた。店員も客もインド系。インドに行ってみたいけど、ハードルが高くて躊躇っているという私のような人がいたら、まずはチョンキンマンションの1階に行ってみて雰囲気を味わうのもいいかもしれない。
チョンキンマンション1階の様子
エレベーターの列に並んで、予約している15階のゲストハウスへ向かった。
ここで問題発生。
インターホンを押しても返事がない。何度押しても反応がないので、ドアの張り紙に書いてある電話番号に電話を掛けたが、私が使っていたeSIMは電話番号がないので電話が繋がらない。
どうしようかと考えていたところに、ラテン系の青年が通りかかったので声を掛けた。この階にはいろんなゲストハウスがあるけどみんな同じ系列のようで、彼が宿泊している宿のレセプションに案内してくれた。そこのスタッフに聞いてみたものの、私が予約した宿とは経営元が違うようで、対応できないと言われてしまった。
どうしようもないのでインターホンを鳴らし続けるしかなかった。
海外での些細なトラブルは、たとえそれがわずかな時間の出来事だったとしても永遠のように長く感じる。一人旅は自由で気楽な反面、何か起きた場合は自分でなんとかするしかない。話し相手もいないので、予想外の状況に直面した時に悪いことばかり想像してしまう。このまま連絡が取れなかったらどうしよう。別の宿を探すか、最悪廊下で野宿か…..。
途方に暮れていたところで、インターホンからガチャ、と受話器をとる音がして人の声が聞こえた。ようやくスタッフと連絡が取れたのだった。良かった…..!
「今から扉の鍵を解除するよ。中に入るとレセプションがあって、そこにカードキーがあるから16号室のものを持って部屋に入って」とのこと。扉を開けると無人のレセプションがあり、カウンターの裏側にカードキーの束を見つけたので16号室のものを探した。セキュリティ的に、果たしてこんなことをセルフでやっていいものか…..という気持ちが湧いたけど、スタッフの言う通りにした。
が、ここで更に問題が。
16号室のカードキーがない。聞き間違えたのかな。扉の外まで戻ってもう一度インターホンを押し、カードキーが見当たらないことを伝えた。16号室で合っているかと聞いたら相手は「シックスティーン。ワン、シックス。」と言ったのでやっぱり聞き間違いでは無いようだった。え、見当たりませんけどどうしたらいいですか…..。
と、ようやくここにきてどこからともなくスタッフが登場した。インド系の青年が特に悪びれる様子もなく、謝ることもなく私に「ハロ〜」と陽気に声を掛け、カードキーの束を漁った。カードキーが無いことを確認すると、またどこかへ行き、16号室のカードキーを持って現れた。
ようやく入室できた。
ようやく手に入れたカードキー。ボロい
荷物を置いて靴を脱ぎ、ベッドに横になった。一安心。
Wi-Fiのパスワードが壁掛けのドライヤーに隠れてギリ読めない
ベットの真ん中のタオルをどけると、シーツに穴が
洗面の蛇口の位置がギリギリ合っていない
このクオリティで1泊約5,000円。他の近場のホテルと比べるとかなり安い方ではあるけれど、これで5,000円である。
他にも部屋のライトが傾いている、シャワーのホースの根元が何故か謎の布で固定されている、浴室の扉がきちんと閉まらない、なんかもう全体的に汚い、などツッコミどころを挙げればキリがなく気にならないと言えば嘘になるが、個室、お湯が出る、高速Wi-Fi、立地が良い、という個人的海外ホテル選びのチェックポイントの最低ラインをギリギリクリアしていたので、自分を納得させることにした。
一方で、自分が名古屋で暮らしている築35年家賃4万円の、およそ女性が住まなさそうな壁の薄い築古の安アパートでさえ、いかに快適かということを思い知らされた。
もちろんお金を払えばそれなりの宿に泊まり、快適な旅をすることもできると思うけれど、香港到着日は絶対にチョンキンマンションに泊まると決めていたので、叶えることができたのは感慨深かった。
ちなみに私が宿泊したのは「Canada Hotel」という名前のゲストハウスだった。スタッフも宿泊者もインド系の人が多く一体どのあたりがカナダと関係しているのか全く分からなかったが、横には「Kyoto Guest House」というゲストハウスもあった。おそらくこちらも日本とは無縁の宿なんだろう。有名な国や都市をホテルの名前に入れることで、その国の人を取り込もうという戦略なのだろうか。
エレベーター横の案内にはゲストハウスの名前がびっしりを名を連ねる
チェックインを終えたので、近くを散歩してみることにした。
ガイドブックに必ず載っている夜景スポット、ビクトリア・ハーバーの眺め
香港を代表する高級ホテル、ザ・ペニンシュラ香港の外観。CHANELとコラボ中
チョンキンマンションの向かいにある建物
至る所にある漢字のネオンサイン、行き交う人々から発せられる広東語。ここにきてようやく香港に来た実感が湧いた。行きたくてしょうがなかった海外旅行。またこうして海外に行ける日常が戻ってきたことに、気持ちが弾んだ。
宿に戻る途中、セブンイレブンで小籠包を買って夕食に食べた。
1日目はこれで終わり。沢木耕太郎に一歩近づけたと思えたら、破れた布団の上でもぐっすり眠りにつくことができた。
次回は現地人が集う朝食屋、レインボーカラーの集合住宅、某MVの撮影地として有名な場所へ。
鳥居 絢香 / Ayaka Torii
1992年生まれ。名古屋在住の会社員。LIVERARYスタッフ。
海外旅行と名古屋のカルチャー、飲食店が好き。
沢木耕太郎と誕生日が同じ。
Instagram: ayaka_10r
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