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シネマパラダイスの怪人vol.3
〜映画の夢、夢の映画〜

Text by Yusuke Asano(asana,BEMBE)

こんにちは。暖かくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?

今回のテーマは夢と映画という、まあ真面目に語りだすとあまりにも深すぎてそのまま夢の迷宮の中に入ってしまいそうなものです(笑)

いろいろ紹介したい映画はありすぎて困ってしまうのですが、今回はこの3本を!

エクトール・ベハンコ監督<蜘蛛女のキス1985年

まずはアルゼンチンの作家マヌエル・プイグ作の小説を映画化した<蜘蛛女のキス>

原作はベストセラーになり日本でも何度か戯曲化されています。

特徴は全編モリーナとヴァレンティンという二人の男の対話で綴られていることで、映画も二人の会話が中心になって進みます。モリーナは刑務所の檻の中で青年革命家ヴァレンティンに昔観た忘れられない映画の話をするのですが、モリーナは実は仮釈放と引き換えにヴァレンティンのいたゲリラ組織に関する情報を聞き出そうとしています。しかしゲイであるモリーナは次第にヴァレンティンの優しさに惹かれ彼を愛してしまい葛藤します。

プイグ自体が元来映画監督志望だったこともあり原作そのものが非常に映像喚起力があり映画的なこの作品、見所はなんといってもラストシーンでしょう。

激しい拷問を受けたヴァレンティンの死の直前に突如、現実と思われていた刑務所に彼の恋人(モリーナの語っていた蜘蛛女と同人物ソニア・プラガの声がヤバい)が現れ、夢の島まで連れていくこのシーンの開放感は素晴らしい。夢が現実を破り、映画と夢が(物語的にもメタな意味でも)ひとつになる美しさ。自由の為に戦っていたにも関わらず、実は自分の殻から自由になれていなかった彼はそこで初めて自由になります。

そして、この映画でモリーナ役を演じ、1985年のアカデミー主演男優賞とカンヌ国際映画祭男優賞を受賞したウィリアム・ハートが出ているもう一つの映画、

ヴィム・ヴェンダース監督<夢の涯てまでも>1991年

原題はUNTIL THE END OF THE WORLD(世界の終わりまで、これは邦題の方が秀逸と思います・笑)

これ監督はあの有名なヴィム・ヴェンダース(ロードムービーの傑作パリ・テキサス、ベルリン天使の詩などで知っている方も多いと思います)の華麗なる大失敗作として(笑)DVD化もされていないどころかほとんど無かったかのように扱われています。なにを隠そう僕がはじめて彼の映画を劇場でリアルタイムで観たものなので思い入れがありますね。ただ今ビデオで見直してみてもやっぱり失敗作としかいいようがありません(笑)

米・日・独・仏・豪の五ヶ国合作による世界ロケの他、NHKの全面協力によるハイビジョンの導入、夢を映像化するという内容など何かと鳴り物入りで発表されたこの作品、80年代に入りベルリン天使の詩などでヒットも飛ばし、名声と金を手に入れてしまったヴィムが無駄に制作費を持て余してしまったような素ん晴らしいとっ散らかり具合。いやあ、怖いなあお金(笑)

しかしながら映画ファンには当時勢いに乗っていたウィリアム・ハートも出てるし、初期のロードムービー三部作の主人公リュディガー・フォグラーもいる、そしてヴィムが敬愛してやまない小津安二郎作品の常連、笠智衆も出てくる、音楽はデビット・バーンやルー・リード使い(僕が個人的におっと思ったのは車でアフリカのピグミーの音楽かけるとこ)しまいには母ちゃん役で、かのフランスの大女優ジャンヌ・モローもというまさにヴィムの夢叶ったりという感じで見所もあります。ただそこに浮かれまくって肝心の内容がまとまってなさすぎという(笑)よくあるパターンですねこれは(笑)

ストーリーはあって無いようなものなので、ただダラダラと世界中を旅するんですが(笑)まず、東京のシーン(竹中直人が出てきたりします)このカプセルホテルやパチンコ店など日本独自の文化をエキゾチックかつ近未来的に映すこの感じ、ソフィア・コッポラのロスト・イン・トランスレーションを10年先取りしていたというか、たぶんこの映画観ていると思います。

重要なのは話の最後、ある発明品で人の観た夢を映像化するというくだり。自分の無意識を覗いてしまった被験者がどうなってしまうかというと、、全員がその映像に溺れてしまい麻薬中毒者の様になって破滅するんですね。自己の無意識を完全に映像化したものがある意味究極の映画であるとしたら、禁断のパンドラの箱を空けてその映画を観てしまった者がどうなってしまうのか。そしてそれを癒すのが物語の力(無意識を再構成するものつまり意識)であるという。

黒澤明監督<夢1990年

最後にこれも外しては語れないだろう日本映画の巨匠、黒澤明の1990年の珍品、<夢> マーティン・スコセッシ監督がゴッホ役で出てるぞ!(笑)

監督の幼少の頃からの夢を映像化したというこの短編集、全編にわたって恐ろしほどの映像美(そしてその映像美でもって夢の本来持っている怖さが浮き彫りになっっている)でもって圧倒的なんですが、その中でも巷で話題にもなった<赤富士>は避けて語る訳にはいきません。

原発事故を予見していたこの映画、今だからこそ必見とだけ書いておきましょう。

しかし黒澤明の夢を出すとフェリーニのことや北野武の<3-4X10月>や<TAKESHI’S>、タルコフスキーの惑星ソラリス(夢のラストとソラリスのオープニングの水草の揺らめき!)などいろいろ繋げて語りたくなってきてしまいますが

続きは、、、

4月8日(火)に今池バレンタインドライブで定期開催中&リピーター続出中(なにげに女子率高し!(笑))の映画トークイベント、”ファントム・オブ・シネマ・パラダイス”で!!!

思う存分に語らせて頂きます。

刺激的な話を盛りだくさんでお届けしますので、興味持った方は是非遊びにきてね!!!

平日だからとか言わ・ない・の!(by 姫ちゃん)

ーーー

あと4/27に私の主催してますアフロビートバンド、BEMBEの自主イベント

AFRONOVA!!! vol.14 with JariBu Afrobeat Arkestra 開催!

こちらも、踊りに来てね!アフロビートに興味ないとか言わせな〜い!

詳細はコチラ

イベント情報
4/8(火)
全方位型映画トークイベント
ファントム・オブ・シネマ・パラダイス!!!
第12回 夢の涯てまでも 〜映画的幻想の行方〜
場所:今池ValentineDrive
スタート19:30 チャージ ¥500

【Starring】
浅野裕介(asana、BEMBE、レコード寄席「地獄のレコード黙示録」)
藤井あきのり
太田助手

https://www.facebook.com/events/1428001810774080/
■ファントム・オブ・シネマ・パラダイスとは…
名古屋近辺に生息する映画フリークスたちが集まり、各テーマにまつわる映画の魅力、その偏愛を語るトークイベント。それがファントム・オブ・シネマ・パラダイス!!! 春眠暁を覚えず…といわれる季節。今回のファントムは、劇場という闇の中で観る「夢」がテーマ!夢を題材として、幻視のイメージを映像化した映画について語ります。 何が真実で何が虚構なのか、どこまでが現実でどこまでが夢なのか…、過去と現在、他人と自分、狂気と冷静さが入り乱れ、思考の混乱が映像化されていく。そんな映画を観ていると、すべての境界線が曖昧となった迷宮世界に引き込まれていくような感覚に。 日常を脱し、現実を忘れさせてくれる、映画も夢の産物です。素敵な夢を観せてくれることもあれば、夢と同じように世界の不条理を不条理のまま突きつけられることも…。 銀幕に彷徨える、さまざまな夢の視線(まなざし)について語り尽くす一夜。 今池の夜があなたに囁く、うれしげに、悲しげに、楽しげに、淋しげに…夢で逢いましょう。
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