2015.05.02.Sat - 05.03.Sun | とこなめ陶の森、INAXライブミュージアム(常滑市)
1000年の歴史を持つ「常滑焼」の産地として知られ、陶芸を始めとしたモノづくりに関わる人々が集う町・常滑を舞台としたクラフトイベント「TOKONAME CRAFT FESTA 2015」(通称:クラフェス)が今年も開催。5月2日(土)、3日(日)の2日間に渡り行われる。
同イベントは、廃校となった「旧常滑高校」の利活用を目的として2008年にスタートした。掲げられたテーマは<常滑のファンづくり>。回を重ねる毎に、出展者、来場者数ともに増え続け、今年は、全国からクラフトマン80名(店)、フード12店が出店。
今年は、旧常滑高校跡地から「とこなめ陶の森」「INAXライブミュージアム」の2会場に拡大。この2つの会場は、常滑の歴史・文化や、やきもののおもしろさ、奥の深さを知るうえでも重要なスポットでもある。複数会場にしたことで行き来する道中、つまり、常滑の町そのものを見て、歩いて、町の風景の魅力も体感してもらいたい、そんな思いが見えてくる。
さらに、今年は「とこなめ陶の森 陶芸研究所」にて、
“食と器とものづくり”をテーマとした「陶の森CAFE」もオープン。
常滑の作家がつくった器で、常滑・知多半島の土地に根ざした料理を食すことで、シンプルに地産地消を提唱する、この企画は今年初の試み。また、その他にもスタンプラリーや、フリーペーパーの配布も行われ、複合的にこの町の魅力を掘り起こし、浮かび上がらせる。
さて、そんなクラフェスは、一体どんな人たちつくっているイベントなのだろうか。
どんなに格好のいい見せ方をしても、町の魅力を伝える人間がいわゆる外側の人間だけでは、おそらくその<町おこし>は続くことはないだろう。なぜ、このイベントがここまで続けてくることができたのだろうか。
同イベントの実行委員会リーダーで、陶製品の販売業を地元常滑で営む「常滑焼 ヤマタネ」社長・伊奈義隆さん、サブリーダーで「INAXライブミュージアム」館長・住宮和夫さんの2人にお話を伺った。
—ではお二人の自己紹介を簡単にお願いします。
伊奈:現在は、販売業をやっておりますが、大正時代は、うちも窯屋でした。窯屋というのは製造業のことで、土管や植木鉢等を焼いていました。子供の頃は学校から帰ってきてそのまま工場へ行って、泥でつくった自作の陶芸品のようなものを窯炊きの方に渡して、次の日になったらそれが焼き上がってくる…なんていう今考えると、かなり変わった遊びをしていました(笑)。
住宮:私は名古屋市出身で、INAXライブミュージアムに着任した2年前から、常滑に単身赴任で住んでいます。この町はやはり職人の町、働く町なので、夜は早いんですよね。20時頃には人通りはなくなって静かなもんです。海が近いので、新鮮な海の幸も手に入る。住み心地は本当にいいですよ。
—陶器の町として知られる常滑ですが、現在も窯屋さんってのは残っているんでしょうか?
伊奈:急須屋さんなどは今も家内工業としてこの町には点在していて、電気窯で焼いていますね。こちら(写真後方)に展示しているような大きなトンネル窯は、今現在で稼働している所はもうないんですが、当時は土管や焼酎瓶を焼いていました。
住宮:ちょっと中に入ってみますか…。
ークラフェスをやることの意義について改めて教えて下さい。
住宮:常滑はやはり、モノづくりの町なんですよね。だからそこにモノづくりにかかわるクラフトマンや職人さんたちを集めて、さらに外からのお客さんたちも入って、交流が生まれるなかで、この町のモノづくり文化を体感してもらえたら、と思っています。
—今回のクラフェスが、2会場に拡大する新たな試みも増えているのは、みなさんで意見を出し合って決めたんですか?
伊奈:会議を重ねて、その中で自然にみんなの声を聞いたうえで2会場で開催することになりました。実は、旧・常滑高校跡地が使えなくなってしまったことで、今年はどうしようか?と開催中止もあり得る状況で悩んでいたんです。
開催の決め手となったのは、
毎年、参加するクラフトマンや職人たちからのうれしい声だったのだそう。
住宮:5月の連休は毎年、楽しみにして予定を空けてあるよ」って言ってくれるんですね。参加者自らが楽しんでイベントに参加している姿はクラフェスの大切なカラーなんです。そういう声もあって、開催に踏み切りました。そして、今後もずっと続けていきたいと思っています。だから次回はまた違う場所でやってもいいとも思います。そして、もっと多くの人のご協力を得られたらうれしいですね。
ーでは、最後に…常滑の町の特徴って何だと感じていますか?
伊奈:今も常滑って餅屋が多いんです。カロリーの高い餅は、重労働が必要とされる窯屋の職人や労働者を支える力の源になっていました。そして、今でも職人文化みたいなものは残っていて、先輩・後輩の縦軸も、同輩・同僚の横軸のつながりもその両方が強いのが、常滑の人たちの特徴だと思います。
住宮:町内ごとに山車を引き回す、春の祭礼に向けて冬のうちから準備に励む姿も見られるこの町の人たちは根っからの祭好きのようです。
昨今、常滑はりんくうエリアの開発が進み、セントレアをはじめ、コストコ(=巨大ディスカウントストア)などの誘致も行う中で、焼きもの以外の観光資源への注力が目立っている。しかし、一方、昔ながらの煙突工場の面影がぽつぽつと残るこの町並みは、工場町が残した観光資源となっている。
また、民家の壁面や石垣などに使用された茶褐色のやきものの残骸たちがあちらこちらに眠っている。その風景は、この町とこの町に住む人々の記憶の結晶だ。一時の役目を終えたやきものたちは、地味で無骨な表情を浮かべながらも、今現在も力強く鈍い光を放ち続ける…。
代々窯屋としてこの町で生まれ育ってきた伊奈さんと、市外から引っ越してきたことで町の魅力を肌で感じている住宮さん。終始、笑顔で常滑について語り合う2人を見ていると、どうしたってこの町にもう一度訪れてみたくなってくる。
クラフェスが開催されるこの機会に、道中の何気ない景色にも目をやりながら、やきもの民芸文化が眠る町・常滑の静かなる熱量を、あなたもぜひ体感してみてはどうだろうか。
2015年5月2日(土)、3日(日)
TOKONAME CRAFT FESTA 2015
入場無料
会場:とこなめ陶の森、INAXライブミュージアム周辺
主催:常滑クラフトフェスタ実行委員会
Text & Edit : Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY ]
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