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WHAT ABOUT YOU? #22 / Suguru RYUZAKI 龍崎俊

Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。

このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。 今回は、VICE Magazineのフォトエディターも務めていたTim BarberらとZINEを制作したりと国内外の様々なシーンで写真の新しい可能性を探っている写真家、龍崎俊さんにお話を伺いました。


 

 

―まずは、写真を始めたきっかけをお話しいただけますか?

大学の授業で始めたのがきっかけです。もともと両親が映画好きで、週末は家族総出で映画館に行ってました。僕は特に、「スター・ウォーズ」が大好きで、「スター・ウォーズ エピソード7」を撮りたいっていうのが夢で、武蔵野美術大学映像学科に入学しました。でも実際に大学に入ってみると、プロットを作ることに興味がわかなくて。映画は、自主映画でも関わる人数が多くて、自分が最初に発想したことからどんどん変容していくものだと教えられて、それは自分が想像していた映画と違う、もっとスピーディーにできることがいい、と思って。そんな中で写真の授業があって、今朝撮影した写真が、夕方にはプリントになってるっていうのが自分にとっては新鮮だったんです。写真に触れるうちに僕がSF映画でやりたかったことは、写真の方が明確にできるんじゃないかと思ったんです。

―龍崎さんは、ずっとスナップ写真を撮っていますよね。SF映画っていうのは、結構がっちりと世界観を作り込むイメージで、スナップ写真とは一見対極にあるような気がしますが…。

写真を撮る、選ぶ、見るという一連の行為が、「手紙」と似ていると思っていて。それはジャック・デリダの「存在論」の中で、存在という概念を郵便事故に例えていたことからの影響もあるんですが、手紙を書いて投函して、それは誰かに届くはずなんだけど、手紙を書いた瞬間から過去になってしまうから、手紙を届けたい相手はもう死んでるかもしれないし、届かないかもしれない。でも、相手に読まれることを意識して書くのが手紙だと思うんです。それってすごいポジティブな行為だと思うんです。「スター・ウォーズ」も父が昔に投げた手紙が未来の子供によって開かれるっていう物語だと僕は思っていて。それはまさに写真と一致することで。写真はシャッターをきった瞬間から過去のものになって、絶対的に未来に見ることになる。その時間差が写真の本質だと思っていて。これは、僕の写真に対する考えの基盤になっていて、今でも展示やZINEのタイトルでそのエッセンスは入れています。

―時間的、空間的なねじれを、ある種のリアリティを持って伝えてくれるSF映画的なものを「写真」にまつわる行為に見たってことでしょうか。その上で、スナップという手法をとられたのには理由がありますか?

映画は全てにおいて作り込むことができるのが魅力なのかなと思うんですが、写真は静止画になることによって、作り込んだとしてもドキュメンタリー性が残っちゃうんですよね。それならば、作り込むことよりも、スナップの方が、写真でしかできない面白さがあるんじゃいかなと思っています。僕28ミリの広角レンズを使っていて、構図は全然決めていないんです。ノーファインダーまではいかないんですけど、何が写っているかとかは全然気にしていなくて、撮りたいと思ったモチーフが入ってればいいやという感じで。たとえば、この非常口の看板避けよう、と思ったりして撮るのは僕はあんまり好きじゃないっていうか。そこのありのままを撮りたいというか。行為がもうプロットなのかもしれないですね。けっこう膨大な量を撮るんですよ。600枚撮ったうちの1枚しか展示では使わなかったりするんです。

 

 

―まばたきのようにシャッターをきっているというか、とてもフィジカルな印象を受けます。反射神経というか。

そうなんです。これはスナップ写真を撮っている作家に共通する感覚かなと思います。森山大道さんも、「カメラになりたい」という発言をされていて、撮る行為に重点を置いている。もちろんプリントもめちゃくちゃうまいので重要な要素なんですけど。

スナップ写真を撮るときの反射神経という意味で言えば、5年前10年前ていうのは、その当時の技術だと、フィルムコンパクトカメラが一番フォーカスの速度が速かったんです。デジタルだと半押ししてから3分の1秒くらいまで時間があるのが遅すぎて、撮りたいものがとれない状況だったんですよね。自分の身体性と一番合っているのがフィルムコンパクトカメラだと思っています。これが一眼レフだったら、非常口の看板は避けちゃうと思うんです。ファインダーで見たものと映るもののずれがあるコンパクトカメラは、自分でどう映るかわからないから楽しみがあるし。

―無意識の部分を入れたいってことですね。撮影の時だけでなく、最終的なアウトプットとしてもコピーを使うなど、端々までこだわった「作品」制作とはすこし違うものがあるように感じます。

そこにリアリティがあると思っているんです。元々は白黒で撮影をしていて、現像液を自分でブレンドして使ったり、撹拌時間をコントロールしたりして、コントラストを下げたり粒子をたたせるようにして現像していました。今ではカラーネガで撮影したものをスキャンデータにしてからカラーコピーして、それを古いコピー機で拡大コピーして、それを原稿にしてさらに大判出力しています。それいるの?ってくらいのプロセスなんですけど(笑)自分が手を加えるのは、シャッターを押す時と、セレクトする時のみにして、あとはコピー機にゆだねています。コピーを重ねると、どんどんディテールがそぎ落とされていくんですね。写っているのは猫だけど猫じゃなくなって、上質紙とトナーになっていく。それでも「イメージ」は残っているし、それが写真だと思うんです。

 

 

―モノクロコピーのイメージだったので、現像や制作プロセスにもすごくこだわっているというのは意外でした。

アリ・マルコポロスもヴォルフガング・ティルマンスも、コピーで出したりするけど、プリントもめちゃくちゃうまいんですよね。なんなんでしょうね(笑)フェティシズムなのかな。コピーでほとんど絵みたいになっちゃったりしている部分に、この日の、例えば日差しとか空気とか、五感にまつわるすべてのことが、凝縮されているような気がするんです。ディテールはデフォルメされちゃっているんですけど、そこにリアリズムを感じるんです。これはプリントを見ているだけではわからなくて、昔は手焼きしたプリントをかたっぱしからコピー機にかけてましたね。

―今回の展示について聞かせて下さい。

展示タイトルの「Broken, Your Ray / new map from another country」というのは、森山大道さんのエッセイ集「もうひとつの国へ」から引用させてもらっているんですが、見たことのない地図を見るのは、今自分はここにいて目的地はここだとか、自分の所在と全体を照らし合わせていく作業だと思うんです。これは写真にも似ていて、例えば他人の家で仏壇の遺影を見て「うちの親父元気かな」とか「親父が死んで何年目だっけ」とか記憶を探ったりするのって「父」が共通項としてあるからだと思うんですけど、写真を見るときって、そういう自分の経験との照らし合わせが起きるんですよね。ステイトメントにも書いたんですが、写真っていうものの実体は、プリントやコピー用紙上にはなくて、「イメージ」を見る人の中で記憶や経験が想起されることによって現れるものだと思うんです。

―なるほど。展示では大きなモノクロコピーの作品と、カラープリントの作品が並列で展示されていますね。

大学ではアカデミックな教育を受けているので、写真というのはコレクティブで印画紙は高尚なもの、と教わっていて。コピーは紙だから破れるし、しわにもなるし、タッカーで貼ったら1回限りでダメになっちゃう。たかが紙でしかないし、されどやっぱりこれも写真だって思っていて。一方で、アーティストしか作れないCプリントがあって、もう一方で”誰でも作れるもの”のメタファーとしてのコピー出力した写真があって、その往復運動によって、「イメージ」というものに触れてほしいと思って両方を展示しています。

 

 

―龍崎さんの作品からは、写真家の視点を強く感じます。龍崎さんがそこに立って、撮ったっていうのが重要な気がします。写真に日付が入っているのも、その存在を強く感じさせる要素かもしれません。

日付って、ボタンをいじればいくらでも変えられるじゃないですか。だからその日じゃない可能性の方が高いけど、その日の日付が書いていることで、反証的に、撮影したのが日付の日だったんじゃないかっていう擁護するための唯一の手段でしかないから、その役割をさせているんです。あとこれって、わざわざネガに傷をつけるような行為じゃないですか。それは写真には現実が写ってるということになっているけど、でもそれはあくまで、ある誰かが切り取った視点であるということを知覚させたい、という二点の理由で日付を入れています。

―鑑賞者へのメッセージとしても機能しているんですね。

根本的な考えとして、家族写真がすべての基本にあると思うんです。ペットや家族の写真をパスケースや写真たてに入れて近くに置いて、空間的にも、時間的にも遠くにいる存在に思いを馳せることができる。例えば「adress to the raven」というZINEでは、恋人と行ったアメリカと、家族と行ったアメリカの写真で構成されているんですけど、旅先ではいつも、その場にいない人のことを思うんですよね。つまり、写真を向ける相手は遠くにいるというか。ravenというのは、北欧神話に出てくる大ガラスのことで、全知全能の神オーディンが思考と記憶を司る二羽の大ガラスを飼って地上のすべての情報を収集しているんです。僕は写真をravenにあてて撮っていて、それを遠くにいる人、家族だったり恋人だったりに伝えてもらいたいと思ったんです。

 

 

―写真は誰のためにあるのか。今ここにいない人のために撮っている。それはまさに、龍崎さんの写真の一貫するテーマである「手紙」なんですね。龍崎さんは、定期的に展示やZINE、グループショウを企画するなど、さまざまな形で発表を続けていらっしゃいます。このあたりのことは、4月15日(土)のアーティストトークで詳しく聞くことにしましょう。

 

イベント情報

2017年3月29日(水)~4月17日(月)
Suguru RYUZAKI Photo Exhibition 『Broken, Your Ray / new map from another country』
会場:ON READING  名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日 ※3月30日(木)~4月4日(火)の期間は臨時休業
問:052-789-0855
http://onreading.jp/

作家在廊日:3月29日(水)、4月15日(土)、4月16日(日)

アーティストトーク: 4月15日(土) 19:00~ 入場無料 GUEST: 龍崎俊(写真家) × 鈴木理恵(写真家・BIG SOMBRERO)

龍崎俊 Suguru RYUZAKI
写真家。1983 年生まれ。東京を拠点に活動中。武蔵野美術大学造形学部映像学科中退後、ZINE の製作や個展を中心に活動している。2013 年には、「インディペンデントな意思を持ったアーティスト達による、インディペンデントなプロジェクト」というコンセプトに基づいたプラットフォーム / パブリッシングハウスであるSTAY ALONE を発足。
また2016 年には、音楽家とのコラボレーションワークであるSAVAGE AND THOUGHT を自身で刊行している。
www.sugururyuzaki.com

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