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WHAT ABOUT YOU? #23 / 長谷川珠実

Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。

このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。 今回は、JAPAN PHOTO AWARDでシャーロット・コットン賞を受賞した写真家・長谷川珠実さんにお話を伺いました。


 

 

―長谷川さんはどうやって写真と出会ったのでしょうか。

私は、群馬県の女子高出身で、高校ではミュージカル部に所属していました。100人以上部員がいる大きな部活だったんです。その中で私は何故かおばさんの役しかやらせてもらえなくて。まあ別にヒロインがやりたかったとかじゃないんですけど、なんかついていけないなと思う部分があって、部活を2年生でやめちゃったんです。それで土曜日には、親には学校で自習するっていって東京に出て、「写ルンです」を買って新宿とか歌舞伎町を撮ったりしてました。それが写真の原体験かもしれないです。

―制服で歌舞伎町を撮ってる女子高生って想像するとなかなかすごいですね…。その時、カメラを手にした理由って覚えてますか?

なんとなく、自分のなかでスリリングな出来事を記録しておきたいって思ったんだと思います。その後、ちゃんと写真を撮り始めるようになったのは、大学で写真部に入ったからです。大学に入学すると、サークル勧誘ってあるじゃないですか。お揃いのスタジャンとか着てチラシ配ったり。でも私はどのサークルからも声を掛けられなくて、唯一声をかけてくれたのが、ファッションサークル「トレンド」ってとこと、写真研究会だったんです(笑)。

私が入った写真研究会は、大学のサークルとしては珍しく、結構環境が整っていて、モノクロだけじゃなくカラープリントもできたんです。そこで基本的なことを学びました。それで大学生活の最後に撮ってきたものを一度まとめたいと思って、「A WILL」というBOOKを作りました。

 

 

―僕が最初に長谷川さんに写真を見せてもらったBOOKですね。これは印画紙をそのまま蛇腹折につなげたものですね。

“will”は「~するつもり」とか、「意思」という意味をもつ単語なんですが、“a”をつけて加算名詞にすると「遺言」「遺書」という意味になるんです。私は、このころからずっとそうなんですが、自分の死に際にもし何か映像が流れるとしたら、こういうイメージが流れたらいいなと思って、写真を撮っているんです。

―走馬燈のイメージですよね。死に際に実家の冷蔵庫の写真?とか突っ込みどころは満載だけど(笑)、自分自身にとっては、大切な出来事や場面を撮っているんだな~というのは伝わってきます。

そうですね、すごく単純に、「うわ、面白い!」とか「気持ち悪っ」とか「かわいい」とかそう思ったときに写真を撮っているんですけど、全部覚えておきたいと思っていて。本当にすぐ、忘れちゃうんですよ。自分がいいと思ったものを抱え込んで、誰にも渡したくないっていうのが凄くあるんです。それが人よりも強いんだと思います。

 

 

―長谷川さんの写真を見ていて感じたのは、そういう誰にも渡したくない瞬間を留めておこうとシャッターを切ることで、その「瞬間」を「出来事」にしてるんじゃないかということだったんですよ。でもその「出来事」が自分にとって何かってことを写真で説明したいわけじゃないですよね?そういうことよりも、ふとした瞬間が、じぶんにとって特別な出来事になりうるっていうこと自体を写真で見せたいのかなって。自分の出来事にすることによって世界とつながってるっていうか。撮るときは絵としてのバランスはどれくらい考えているんですか?

わりと偶然出くわすことも多いので、じっくりカメラを構えてって感じではないですね。

―出来事としてはすごく重要なんだけど、絵としては成立してないってこともありますか?

そうですね、ピントがぼけてたり、構図が傾いていたり一見写真としては失敗っていうものでも私は写真集とかに入れちゃいますね。

 

 

―じゃあやっぱりその時の感覚とか想いを留めるっていうことの方が重要っていうことなんですね。今回、DMや写真集「LUCK ME」には、長谷川さんの日記を掲載させてもらってます。これがとても面白くて。文章と写真ではもちろん違うんだけど、長谷川さんが日常の中で、何を切り取るかというか、何を残すか、という感覚には通じるところがあるなと思って。

たとえば、すごくきれいな夕陽を見て、「わ~きれい!」と思ってシャッターを押すんですけど、そのとき残したいと思っているのって、夕陽そのものじゃなくて、その時の匂いとか温度とか、自分の感情とか、そういうものなんですよね。

-たとえ、その夕陽をばっちりきれいに写真におさめることができたとしても、たぶん「きれい」という感情自体を共有できたとしても、ただの答え合わせみたいなもので終わってしまいますもんね。だからそれを求める写真ていうのはそんなに面白くないんじゃないかなと思うんです。それよりも、何が写っているのかってことじゃなくても、「ああ、もしかしたらあの感覚なのかな」みたいな共鳴というか揺らぎが起こったほうが、写真としては面白いんじゃないかなと思います。長谷川さんが作品を制作する中で、一番重要視しているのはどの段階ですか?撮影するとき、プリントするときなどいろんなプロセスがあると思いますが。

編集の段階を一番重視していますね。展示だったら配置だし、写真集だったら隣り合う写真とかページネイションを決めるところに特に力を入れています。上下左右で隣り合う写真は、どうしたってお互いに作用しあうので。その段階では、一旦すべてフラットに考えています。

 

 

―影響を受けたものや、好きな写真家はいますか?

群馬には情報とかカルチャーってあんまりなかったので、当時からすごいネットやってて、東京の円盤とか行ってました。円盤で買った自費制作の500円のCDに電話番号が書いてあって、あんまりよくわかってなかったのでその番号に電話かけて、文通したり遊びに行ったり…その人からは、辛酸なめ子の本を貸してくれたり、サブカルをいろいろ教えてもらいました。そこでそういう、個人的な作家活動そのものの存在を知ったんです。

写真家でいうと、牛腸茂雄さんが好きですね。特に、被写体がカメラを見つめている近さとか、表情が好きで、写真集の解説とかでは、牛腸さんは目に見える形でのハンディキャップをもっていたので、被写体がカメラを見る顔には、異質な存在に対する怯えが読み取れます、とか書いてあるんですけど、私はそうかな、と思っていて。人が人を見ているときの顔なんてこんなもんだろうと思うんです。牛腸さんに対する視線と自分が思う「人が他者を見る視線」というのがイメージがとても近いんです。

―なるほど。長谷川さんの写真に見られる、すわりの悪さというかある種の違和感のようなものは、そこから来ているのかもしれないですね。長谷川さん自身と世界の間にある距離というか。「引き」の構図で撮っている写真が多いこともあるけど、観察の視線を感じるんですよね。独特な視線というか。今回リリースした写真集の「ラックミー」はどういう意味ですか?

ラックミーというのは豆乳の名前です。(笑)“私に「LUCK(幸運)」を”という意味だと思うんですけど、言葉の響きが好きで。普段の生活では、いやなこととか、大変だったことの方がどうしても心を占めてしまうんですけど、写真を撮っているときって、楽しいことを探したり、人に見せたいって思ったりして、自然と楽しい気持ちになるので、写真そのものが私にとって「ラック」だなと思ったんです。

 

 

―今後撮ってみたいものとか、やりたいことはありますか? 

そうですね。6月にON READINGで展示したようなシリーズは一生やり続けると思うのですが、今後はテーマをいくつか決めて撮ってみたいと思ってます。たとえば、今回も展示しているんですが、バレエとか社交ダンスとか、私は人が複数人で踊っているのを見るのがとても好きなので、ダンスのシリーズを撮りたいなと思ってます。

長谷川珠実 | Tamami Hasegawa
写真家
1991年群馬県生まれ、2014年専修大学文学部卒業。
JAPAN PHOTO AWARD 2014シャーロット・コットン賞受賞
2017年 写真集『LUCK ME』をリリース。

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