2025.09.13.Sat - 11.30.Sun | 愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか、他(愛知)
「あいちトリエンナーレ」の後継芸術祭「あいち2025」が2025年9月13日(土)から11月30日(日)までの79日間、開催される。先日、芸術祭のテーマと第一弾参加アーティストが発表された。
テーマは、「灰と薔薇のあいまに」。
これは、モダニズムの詩人アドニスが、1967年の第三次中東戦争の後に書いた詩から着想を得たもの。アラブ世界を覆う「灰」の存在に疑問を投げかけ、自身を取り巻く環境破壊を嘆いた。いっぽうで嘆きのみならず、消滅のあとに訪れる「薔薇」の開花という、未来への希望も示している。
今回のメイン会場である瀬戸市は陶器産業が盛んであり、陶磁器生産によって発生する「灰」は環境の汚染や破壊よりも街の繁栄を意味し、アーティストの創作活動の成果を表している。
本芸術祭の芸術監督フール・アル・カシミは、人間と環境の関係を見つめ直し、これまでとは別の、その土地に根差した固有の組み合わせを掘り起こしたいと考え、テーマに反映されている。
第一弾として発表された参加アーティストは以下の4組。
ダラ・ナセル[レバノン/レバノン]
小川待子[北海道/東京都]
沖潤子[埼玉県/神奈川県]
アドリアン・ビシャル・ロハス[アルゼンチン/アルゼンチン]
参加アーティストは国内外から約50組を想定。続報をお楽しみに。
2025年9月13日(土)~11月30日(日)[79日間]
国際芸術祭「あいち2025」
会場:愛知芸術文化センター/愛知県陶磁美術館/瀬戸市のまちなか、他
主催:国際芸術祭「あいち」組織委員会(会長 大林 剛郎(株式会社大林組取締役会長 兼 取締役会議長))
公式Webサイト:https://aichitriennale.jp/
ダラ・ナセル
1990年スール(レバノン)生まれ。ベイルート(レバノン)拠点。
多様な素材を用いて、抽象概念とオルタナティブなイメージを表現す る芸術家、ダラ・ナセルは絵画、パフォーマンス、そして映画などのジャ ンルを横断した作品を手掛ける。ナセルの作品は、資本主義と植民地 主義的な搾取の結果として悪化していく環境、歴史、政治的な状況に、 人間と人間以外のものがどのように関わり合っているかを探求する。 ナセルは、伝統的な風景画の広大な視点とは対照的に、土地をイン デックス的に捉えた絵画で、政治や環境における侵食に焦点を当て る。彼女は自らの作品を通して、人間の言葉が届かない中で環境が ゆっくりと侵され、侵略せし者が搾取を行い、インフラが崩壊する様子 を、人間以外のものの視点から表現する。
小川待子
1946年北海道生まれ。東京都拠点。
東京芸術大学工芸科を卒業後、1970年からパリ国立高等工芸学校を 経た後、人類学者の夫の調査助手として西アフリカ各地で3年半を過 ごし、現地の土器づくりの技法を学ぶ。パリ滞在中に鉱物博物館で、鉱 物の美しさの中に「かたちはすでに在る」という考え方を見出し、ゆが み、ひびや欠け、釉薬の縮れなどの性質を活かし、つくることと壊れる ことの両義性を内包する「うつわ」として、始原的な力を宿す作品を制 作している。
沖潤子
1963年埼玉県生まれ。神奈川県拠点。
生命の痕跡を刻み込む作業として布に針目を重ねた作品を制作。下絵 を描く事なしに直接布に刺していく独自の文様は、シンプルな技法で ありながら「刺繍」という認識を裏切り、観る者の根源的な感覚を目覚 めさせる。古い布や道具が経てきた時間、またその物語の積み重なり に、彼女自身の時間の堆積をも刻み込み紡ぎ上げることで、新たな生と 偶然性を孕んだ作品を生み出す。存在してきたすべてのもの、過ぎ 去ったが確かにあった時間。いくつもの時間の層を重ねることで、違う 風景を見つけることが制作の核にある。
アドリアン・ビシャル・ロハス
1980年ロサリオ(アルゼンチン)生まれ。ロサリオ(アルゼンチン)拠点。
アドリアン・ビシャル・ロハスは、共同制作やコラボレーションによる長 期的なプロジェクトを構想してきた。その大規模でサイト・スペシフィッ ク な イ ン ス タ レ ー シ ョ ン の 数 々 は 、堂 々 と し た 印 象 を 与 え る の と 同 時 に、どこか脆さも感じられる。ロハスは、彫刻、ドローイング、ビデオ、執 筆、行為や事象の痕跡などを組み合わせながら、すでに絶滅に遭った か、絶滅に瀕して危険にさらされている人間の状態を研究し、過去、現 在、未来が折り重なるポスト人新世時代における、種間の境界線を探る。
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