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飴屋法水、原マスミらが声優で参加!20台以上のスピーカーを駆使して上映/演される『サロメの娘/アクースモニウム』。監督・七里圭の最新作上映も。

2019.03.09.Sat - 03.10.Sun | 愛知県芸術劇場 小ホール(愛知|栄)

 

映画監督・七里圭による“音から作られた映画”プロジェクト作品『サロメの娘/アクースモニウム』が、3月9日(土)、10日(日)の2日間に渡って愛知県芸術劇場・小ホールにて上演される。

七里圭は多彩な表現者とコラボレートして映画という表現形式を拡張させてきた人物。今作は、映画製作のプロセスを逆転させた「音から作る映画」。20台以上のスピーカーを用いて、電子音響音楽を空間化させた演奏ツール “アクースモニウム” を利用した檜垣智也のライブ・パフォーマンスと映像上映を同時進行させた作品として上演される。

 

 

各回上演後には本作品のアフタートークも。9日は映像作家の前田真二郎(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]教授)、10日は音楽家の有馬純寿(帝塚山学院大学人間科学部准教授)が登場予定。3月16日(土)~22日(金)には、名古屋シネマテークにて、七里圭監督最新作『あなたはわたしじゃない』の上映も行われる。

 

 

最後に、自身も作編曲家・パフォーマーとして活動している池田萠による「サロメの娘/アクースモニウム」についての書き下ろしテキストを掲載。同作が一体どんな作品なのか?イメージを膨らませながら読んでみてほしい。

 

母親と娘との関係は濃厚だ。それが母子家庭だとなおさらである。

物心ついた頃から私は母とふたりだった。それが自分にとっての「普通」だったので、何か不自由さや寂しさを感じることはなかった。それは、母が猛烈な愛と犠牲を払っていた結果かもしれない、と思うようになったのは30歳になる目前だった。

「サロメの娘」は、母と娘の物語である。娘は目的を理解せずに母(と他の人たち)と山へ登る。そこで交わされる彼女の中でのいろいろが淡々と語られる。淡々と、なのだけど、その後ろに隠れた激しい感情の揺さぶられが見える。小川洋子の小説や、シベリウスのピアノ曲みたいだ。こういうの本当に大好きだなぁ、と考えながら、「サロメの娘」のアクースモニウム上演を観ていた。20161月、京都芸術センターで行われた音楽家の檜垣智也の「アクースマティック作品による音の個展」での上演であった。

黒紗幕の奥、音響卓の前に「演奏家」として檜垣が立つ。23日に名古屋で行われたレクチャートークでも触れられていたが、アクースモニウム演奏において、卓の前に立ちフェーダーを操作する者は「演奏家」である。これは、そう聞いただけではちょっと想像しにくい。「演奏」の定義はいろいろと議論されるところではあるだろうけど、ここでは仮に「なにかしらの技術的な修練が必要であり、なおかつ解釈する行為が伴う」としたい。技術が必要なことはもちろん納得できる。音量や響きなどの音楽的な中身を会場によって調整したり、という解釈的なことも、音響エンジニアは普通にやっていることだろう。いちおう定義は満たしたようだが、それで「演奏」と言い切るには何か足りない気がする、と、彼の「演奏」を観る/聴くまでは思っていた。

学生の頃、神戸で行われた檜垣のワークショップに参加した際、それは文句なしの「演奏行為」であり、それまでのモヤモヤが一気に払拭された。スピーカーの配置、その性質、音色、微妙な音量、方位、距離、音の移動、特徴的な音への演出。それらを繊細に構築してライヴする!音楽で出来ることがまだまだいっぱいあるんだ、と衝撃を受けたことをはっきりと覚えている。

母と娘の物語は進んでいく。その娘が母へ向けるのは、羨望でもあるし、母の状態への不安さでもあるし、分からなさでもあった。分からなさ。何年も生活を共にする親子なのに、そんなことは普通にあるのだ。私だって母を全然分かってはいない。どんな女性として生きてきて、生きていくのか。私を育てる過程で、彼女に何が起こってきたのか。その娘と自身とを重ねていく。怖かった。そんな感情を、檜垣の音楽が包んだり刺したりしてくる。

音楽や映像が感情を表現/伝達することを目的としていないのは自明だ。感情は鑑賞者の側にある。それらが揺さぶられ、えぐられ、時に鼓舞され、時に落胆する。3年ぶりに観る/聴く「サロメの娘」を、私はどう受け止めたらよいのだろうか。怖い。でも、また観たい/聴きたいと思うのはなんでだろう。

Text:池田萠

 

イベント情報

2019年3月9日(土)、10(日)
サロメの娘/アクースモニウム
会場:愛知県芸術劇場・小ホール(愛知県名古屋市東区東桜1-13-2)
時間:9(土)18:00~、10(日)15:00~
料金:全席自由・整理番号付 一般販売 2500円 当日 3000円 U25 1500円
監督:七里圭
出演:檜垣智也
テキスト:新柵未成
声の出演:青柳いづみ、sei、原マスミ、山﨑阿弥、飴屋法水、山形育弘、太田真紀、さとうじゅんこ他
※U25は公演日に25歳以下対象(要証明書)
※未就学児童入場不可。託児サービス有(3/10のみ)  有料・要予約〇託児サービストットメイト TEL : 0120-01-6069(9:00~17:00)
詳細リンク:https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/000106.html#000106

七里圭
映画監督。1967 年生まれ。早稲田大学卒。在学中から映画の 現場で働き始め、約 10 年間の助監督経験の後、『のんきな姉さ ん』(2004)で劇場デビュー。その後、『マリッジリング』(2007)の ような商業映画を監督する一方で、声と気配で物語をつづる異色の作品『眠り姫』(2007)を自主製作・配給。上映 10 年のロン グランを機にサラウンドリマスター版(2016)も製作・公開。建築 家と共作した『DUBHOUSE』(2012)が国際的な評価を受ける。近年は、『To the light』シリーズ(2013~)、「音から作る映画」プロジェクト(2014~)など実験的な映画作り、映像パフォ ーマンスにも取り組んでいる。2017 山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション審査員。

檜垣智也
愛知県立芸術大学大学院修了。博士(芸術工学、九州大学)。ドニ・デュフール、ジョナ タン・プラジェ各氏らのもとで作曲とアクースモニウムの研鑽を積む。ハーバード大学、 ケルン大学、INA/GRM(仏)、Motus(仏)、Musiques&Recherches(白)、M.ar.e(伊)、佂山 国際電子音楽祭、ヒルヴィ(日本)など世界中のアクースモニウムを演奏。Futura 講習 会講師(2005〜)。Espace du son 国際空間演奏コンクール審査員(2014)。2枚の CD 『Mahoroba』(2011)、『囚われた女』 (2015)。大阪芸術大学客員准教授。同志社女子大学、相愛大学非常勤講師。

posted by T.TAKEBE

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