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WHAT ABOUT YOU? #34 / 木村和平

2019.07.03.Wed - 07.22.Mon | Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

 

東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。

このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。 今回は、第19回写真1_WALL審査員奨励賞受賞(姫野希美選)し、現在は雑誌や広告を中心に活躍しながら精力的に作品発表を続ける写真家、木村和平さんにお話を伺いました。

 


 

 

 

_木村さんはどのように写真を始めたんですか?

僕は、小学生のころから高校までずっとテニスをしていて、その後も続けるつもりだったんですけど、高3の時に怪我しちゃって。それまでの熱が冷めてしまい、テニスはスパッとやめてしまいました。

大学は東京に決まっていたので、とりあえず田舎を出ようと上京して、丸2年遊んでましたね。その時、ファッションが好きでなかなかヤバイ格好してたんですけど(笑)、学校が終わってすぐに原宿に繰り出す日々で、当時「TUNE」とか「FRUITS」とかファッション・スナップのメディアが全盛期で、表参道とか歩くと、30mおき位にカメラマンが待機してるみたいな状況だったんですね。僕もたまに撮られているうちに、カメラマンさんたちと仲良くなって、それでカメラや写真に興味を持ちだしたら、あるカメラマンさんが、カメラを1台譲ってくれたんですよ。それが写真を撮り始めるきっかけでしたね。

 

_撮り始めたときはどんな風に写真を撮っていたのですか?

その頃は、ただ友達とか身の回りのものを撮って、タンブラーなどのSNSにあげていました。それを見てくれていた編集者の方が声をかけてくれて、高円寺のいろんなカルチャーを伝える「concent」っていうWEB MAGAZINEで、ポートレートを撮る連載を担当したのが最初の仕事でした。その後、またその写真を見てくれた女性誌の編集者の方が連絡をくれてって感じでつながって。でも仕事もらったのも写真はじめて一年も経ってないくらいだったので、技術も知識も何もなくて、ほぼ勘だけでなんとかやってたんですけど、やっぱり思い通りにいかないことも多くて、このままではヤバイってなって(苦笑)。友達の写真家に聞いたり本読んだりして自分なりに勉強しました。でも最初の頃の編集者さんたちも本当に優しくて、いろいろと教えてくれたので恵まれていましたね。

 

―その頃はまだ大学生だったんですよね。

そうです。だんだん同世代で写真を作品として発表している作家とも知り合うようになって、あ、作品発表っていうものがあるんだ、って思うようになって。2015年に最初の写真集『piano』で、はじめて作品といえるものを作りました。小さいころから、戦隊ものよりシルバニアファミリーとか、「かっこいい」と言われるものより「かわいい」とされるものの方が好きだったり、友達がいなくてずっと図書館にいたりとか、そういう自分の持つ、“弱さ”について考えて作った作品でした。でも当時は手探りでしたね。

 

 

 

 

 

_その後も、仕事と写真集制作を継続して続けていらっしゃいますね。僕たちは、『piano』の頃に木村さんのことを知ったんですが、光が印象的な木村さんの写真のスタイルというか作風は、今もそこまでは変わっていないですよね?

そうですね、もちろん単純に技術的なことが育っていったりはしているんですけど、根本としてどういうことがやりたいかっていうのは変わってないですね。もちろん始めた当初は、いろいろやりたいこともあっていろんな写真家に影響されたり、誰も見たことのないものを作りたいとか思っていたときもありました。でも今は、自分のこれまでの体験をひとつひとつ引っ張ってきてというか、自然発生するもので撮っていこうと思うようになりました。

光に関して言うと、親が言うには、幼いころから、キラキラしたものとか光っているものにたいして凄く興味をしめしていたみたいで。昔、おおきな犬を飼っていたんですけど、犬と一緒に窓から入ってくる光を追いかけて寝ていたり、ステンレスに反射している太陽光を見て、太陽はひとつとは限らない説を母親に唱えてたり(笑)。光に対する関心は人一倍強かったようです。

僕がシャッターを押す動機って、まずそこに光があるかどうかなんですよね。例えば展示をしている写真の中に、猫の写真がありますが、これも朝日があたって猫の毛が光ってなかったら撮っていなかったと思います。いつでも僕の中では光の優先順位が一番上で、人の表情とか構図とかはその次の話なんです。

 

 

 

_影響を受けたものや人はいますか?

具体的に強い影響を受けてるなと思うのは、やっぱり映画ですね。高校生の頃から映画は片っ端から観ていて。岩井俊二やミヒャエル・ハネケが好きでした。映画の好みは、その頃からあまり変わっていません。特に、篠田昇さんが撮っていたころの岩井作品の影響は相当大きいと思ってます。

 

_今回の『灯台』もノイズがテーマだったり、これまでに発表してきた『piano』『楽譜』も音楽的なタイトルですが、音楽に対して特別な想いがあるのですか?

これは意図していたわけではないんです。でも、普段から音楽にはかなわないなぁという気持ちがあって。映画と同じくらい音楽もずっと好きで、音楽に感動して救われて生きてきたんです。

母親がピアノの先生で、朝起きたらリビングでクラシックがかかっているような家で育ったこともあって、小さいころから音楽はそばにありました。高校生頃から音楽が詳しい友達に教えてもらいながら、どんどん掘り下げていって、灰野敬二さんや大友良英さんの音楽に出合い、ノイズとかアンビエントを好きになりました。一時はリズムがあるものは聞けなかった時期があるくらいで(笑)。

 

_灰野さんは、今回、写真集にテキストを寄せてくださってますよね。

本当に自分にとっては奇跡のようなことですね。灰野さんのことは、音楽だけでなく存在や人間性も全部好きなんです。「灯台」は、僕がノイズやドローンを聞いたときに感じたことを扱っているのですが、その中でも特に灰野さんの音楽が僕の中に根を張ってできた作品なので、もしテキストを書いてもらうなら灰野さんしかいない、灰野さんがダメだったらもう無しでいいやと思っていて。灰野さんは、ノイズを通して感じていることをそのまま言葉にしてくださったんだと思います。とても光栄なことでした。

 

 

_『灯台』でまずは、すべてモノクロで撮られていることに驚きました。モノクロは以前から撮ってたんですか?

モノクロはこのシリーズをやるまでは全然使ったことがなかったんです。yo asaというファッションブランドのコレクションを何度か撮らせていただいているのですが、そのデザイナーさんが毎回僕にとって新しいことを提案してくれる方で。今回、モノクロだけでお願いしたい、と言われて、それで撮り始めたのが2017年の1月くらい。そこから「灯台」のアイデアやモノクロでやりたいことが浮かんでって感じですね。

 

_そうなんですね。でも、まったく違和感がなく、「木村和平の写真」として自然に入ってくるというか。とても似合ってるなと思いました。カラーとモノクロって、撮るときの意識って普通だったら大分変ってくるじゃないですか。単純に色彩構成のこととか全く見方が変わるわけで。

今までたぶん色のこととかあんまり考えてなかったんですよ。人によっては、例えばあそこに赤があるから、このバランスにしようとか考えて構図決めたりしてると思うんですけど、僕、そういうのまったく考えたことがなくて。今見ても、この写真に写っているものががもともと何色してたか覚えてないくらいです(笑)。カラー写真も、「ここのこの色が効いてるね」と人に言われて初めて気付く、ということが多いです。

むしろ、今までカラーで苦労して撮ってきたことが、モノクロだとすんなりできちゃった感覚があったんですよ。あ、これは向いているかもと。これからも、モノクロでは撮っていくと思います。

 

_今回の『灯台』では、特に粒状感が際立っていますね。より「光」が強調されているように感じました。

フィルムは超高感度のものを使っていて。もともと夜用のものなんですけど、昼間に撮ってみたら、理想的な粒子とグラデーションがでてきました。

 

_今後やってみたいことはありますか?

今までは自分の中で写真集が先行していたのですが、今回展示をいくつか経験して、展示に対する興味が強くなってきたので、展示だけで成り立つ作品も作りたいなと思っています。

 

イベント情報

2019年7月3日(水)~7月22日(月)
木村和平 写真展『灯台』
※作家在廊予定:7月3日(水)
※7月12日(金)~7月15日(月)は臨時休業
会場:ON READING  名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
問:052-789-0855
http://onreading.jp/

木村和平(きむら・かずへい)
1993年、福島県いわき市生まれ。東京都在住。第19回写真1_WALL審査員奨励賞受賞(姫野希美選)
個展 : 『piano』 gallery SEPTIMA(東京/2015)『袖幕/灯台』B gallery (東京/2019)
出版 : 『piano』(私家版/2015) 『楽譜』(私家版/2016)『袖幕』(aptp/2018)『灯台』(aptp/2019)
http://www.kazuhei-k.com

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