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WHAT ABOUT YOU? #17 / 濱田 晋

Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

howaboutyou17

東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。 このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。

今回は、BRUTUS、GINZA、HOUYHNHNMなど、様々な雑誌や広告を中心に活躍し、数多くのクライアントワークを手掛ける注目の若手写真家、濱田晋さんにお話を伺いました。


pro
 

―写真はいつから撮り始めたんですか?

高校生の時、中古カメラ屋でPENのハーフサイズカメラを買って、部活の合宿の時とかに撮ったりしていて。その頃はただ単に、ファインダー覗いて、構図決めて、シャッターを押すっていう行為自体が面白くて撮っていました。

―もうだいぶ前からになると思うんですけど、「CHILL!」っていうZINEをよくうちにも送ってくれてましたよね。「CHILL!」を作りはじめたきっかけは何だったんですか?

2008年に、雑誌の「HUGE」のZINE特集で平野太呂さんとNo.12ギャラリーの存在を知って。平野さんの影響は大きかったですね。それで自分もZINEを作りたいと思うようになりました。大学に入って20歳の時に、ニューヨークに旅行に行って、ガラッと価値観が変わるような衝撃を受けました。ニューヨークでスケーターを撮って帰国して、大学のコピー機で「CHILL!」の第一号を作ったんです。この写真で、No.12ギャラリーで初めての展示をしました。思えば、初めての一人旅、夢のニューヨーク、本場のスケーター、写真展示っていう全てが20歳の時で、そこが僕のスタートです。

No.12ギャラリーでの展示は刺激的でした。いろんな人と出会えましたし、神戸と違ってやっぱり東京はすげえって思いましたね(笑)。僕にとって初期のキーマンとはけっこうその個展の時に出会った人が多いです。もちろん太呂さんも見てくれたし、こないだの展示でもお世話になったBEAMSの方に初めてお会いしたのもその時でしたね。あと最終日に、今「CHILL!」を一緒にやっているスズキ・ショーン・ショウスケがホームページ見て来てくれて、同い年で絵を描いていて自分も見てほしいと思ってる、と話してくれて。じゃあ一緒にやろう、ということで、2号目からはショウスケと二人でやることになったんですけど。その後も大学在学中に、個展やったりZINE作ったり、ブランドのスタイルブックを撮らせていただくこともあったり。「CHILL!」は今でも不定期で作り続けていますね。

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―東京に出たのはいつでしたっけ?

大学卒業後、就職した会社の配属先が東京だったんです。3年勤めたんですけど、縁あってWEBマガジンのHOUYHNHNMからちょこちょこ写真の仕事をもらえるようになったので、会社を辞めました。とはいえ、僕はスタジオに入ったり、誰かのアシスタントを経験したりもしていなかったので、最初はまったくつながりがなくて。偶然、その頃、エージェントをやっている人に出会って、ポートフォリオのつくり方とか営業の電話の仕方とか、全部教えてもらって。その人には本当に感謝してます。それで、雑誌とか媒体に営業をして見てもらっていました。そういう中で、編集部の人やデザイナーさんで「CHILL!」を見てくれていた人が何人もいて。「CHILL!」のおかげで名前を知ってくれていたり写真を見てくれていたので、本当に続けるもんだなあと思っていました。

―過去の自分が今の自分の背中を押してくれたんですね。「CHILL!」はずっと無料で配ってますよね。

僕はZINEって、コミュニケーションツールだと思ってるんですよね。みてほしかったら、手紙書いて送ったり、直接会いに行って渡したり、そのための道具としてすごく力があると思う。どうつながるかはわからないけど、例えばみんなが名刺とか渡している中でも、俺はこのZINEを渡すぞ、っていう。もしかしたら帰った後に、夜酒飲みながら見てくれているかもしれない、このコンビニでコピーしてホチキスで綴じただけの冊子が、何かになるかもしれないって。僕はこうやって実際に、その強さを実感したんで。

―もともと、ZINEってそういうもんですもんね。自分はこんなことやってるんだとか、こんなことに興味があるんだっていうコミュニケーションのためのもので。なんだか最近は、最初から値段付けてどこかで売ってもらうもの、みたいな考え方の人が増えちゃったんだけど、それってそもそも何のために作ってるの?って疑問に思うことも多いんですよね。。。

それは僕も少し思ったりします。 ただ、知名度はなくても自分なりにアーティストとしての考えを持って、お金のことも最初からきちんと考えてやっている人もいたり、作り手にも色々な人がいるなーって。 でも僕はそうではなくて、ZINE本来の楽しみ方があるなと思うので。そのお陰で出会いもすごく広がったし。 だから、これからも僕のスタンスは変わらないです。

2

―それでは、今回の展示について聞かせてください。タイトルは「それから and then」ですが、どのような意図があったんですか?

写真を撮り始めた2008年以降に撮ってきた写真の中から10点と決めて、選んで展示しています。あとは縦横のバランスで決めたぐらいで。全部、どこで撮ってとか説明はできるんですけど、コンセプトを決めて撮るということはなくて。「それから and then」は、内田るんさん(The Scrooge/ex.くほんぶつ)の曲名からいただきました。歌詞が共通してるとか、写真に影響を与えたとかじゃないんですけど、その曲がすごく好きで。自分は根暗というかネガティヴだと思っていて、いつも「死」とか考えちゃうんです。「死にたい」とかじゃなくて、自分が生きているというのが凄く不思議というか、いつ死んじゃうかわかんないな~と思っていて、でも日々は続いていくというか。「それから and then」という言葉は、前向きでも後ろ向きでもないけど、過去のある一点があって、そこから今や未来につながっているというのがなんかいいんですよね。僕、被写体に対しても、思い入れもないし、ポートレ―ト撮る時も、あんまり人だと思って撮ってないんです。スカルプチュアとか石とかを好きなのと同じ。感覚としては、「のこしたい」と思った時に、一拍置いてから、撮ってるんです。そうして「のこっている」ものが作品になっているというか。

―のこすっていうのは、瞬間を?

そうです。『断片的なものの社会学』(朝日出版社)の冒頭で、岸政彦さんが、無数にあるなかでひとつの石を拾ってじっと見ていると、「この」石が、僕の手の平に収まっている、ということがすごく不思議だ、と書いていて、それと一緒の感覚なんですよね。岸さんも、街中で出会った人を無作為に選んで、話きいてるんですけど、そこには特に何の希望もすくいもないっていうか。ただ聞いて終わり。僕にとっては、撮るという行為でそうしているっていうことです。

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―ステイトメントに書いてあった、「フィールドレコーディング」って、元々は自然の中で音を拾うっていう意味だと思うんだけど、ノイズもフィルターも編集もなしで、すべて受け止めるという。それと、「それから and then」というタイトルの話でも出ていた、前向きでも後ろ向きでもない世界との向き合い方とか、撮るということに対する態度っていうのは、すごく共通していることかなと思います。

そう、姿勢じゃなくて態度なんですよね。僕、毎日カメラを持っているわけじゃないんですよ。カメラ持ってたら撮るし、持ってなかったら撮らないんですよ。持ってないときに、「ああ今カメラ持ってたらここ撮るな」っていうときはもちろんあるんですけど、しゃあないな。と思っていて。でも「のこしたい」という瞬間に出会った時、僕にとってそれは描くでもないし歌うでもないし「撮る」なんですよね。そう思った、という行為としての10枚。 それも珠玉の10枚ということではなくて。「あそこの石がいいらしい」って聞いて拾いにいったようなものは一つもなくて。家の玄関の前で拾ったものもあれば、とてつもなく遠い場所のものもあって。それが生きているっていうことの中にあって、石ころはいっぱい落ちてるけど、あれを選んだっていうのは僕の、写真を撮る人間としての、有り様というか。ずっと、僕が今生きてるってこと自体が、すごい不思議だと思っているんですが、もしかしたら写真を撮ってのこすという行為の中に、その答えがあるのかもって。

―ここに濱田晋がいるかどうかっていうそれだけのことですもんね。濱田さんが撮った写真を並べることで、逆説的に、濱田さんそのものにもなりうるし、存在を肯定というか証明できるっていうことかなと思います。

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今回作ったZINE「顔の見えない広場にて」は、また別の作品ですね。

今回のZINEは、GRコンパクトデジタルという使ったこともない機材を使って、「あ」と思った瞬間を、考える手前で撮って、消さないし、見返さないというルールで撮っていて。なので、展示している作品が「のこしたい」と思った瞬間を、一拍置いてから撮影している、というのとは真逆の“そうしない・そうする必要もない”作品なんです。 あと、清野賀子さんの写真集『至るところで 心を集めよ 立っていよ』が好きで。 構成やページ数を考えたりする時に参考にしました。

―なるほど~。好きな写真家とか、影響を受けたアーティストはいますか?

写真家で、作品だけじゃなくて動き方の面でもかっこいいなと思うのは、田附勝さんですね。「SUPER BOOKS」の成り立ちを見ても、僕らがZINEを作っている感じと同じというか、無いし、作りたいからやるっていって、軽自動車に「SUPER BOOKS」ってマッキーで書いて、WORKING CLASS HEROのステッカー貼って、代々木公園で写真集手売りしてるんですよ。今でも新しい写真集作ったらやってるんです。田附さん、「月に2冊は写真集買わないとだめ」って言っていて。他の写真家の写真もすごい見てるんですよ。今でもそういうスタンスでやっているってところがすごくかっこいいと思います。他にもたくさんいるんですが、僕、写真より絵とかインスタレーションやってるアーティストの作品をよく見てて、Peter Fischli & David Weissとか、赤瀬川原平とか、作品の中にユーモアがある人が好きですね。 あと実家のすぐそばに元・具体のメンバーの堀尾貞治さんの家兼アトリエがあって、「あたりまえのこと」というテーマで精力的に絵を描いたり、パフォーマンスをしたりしていて、とても刺激になりますね。 堀尾さんの作品も少しずつ買い集めています。

―今後、やってみたい仕事や撮りたいものとかありますか?

もともとドキュメンタリー系の仕事が多いので、漁師さんとか、職人さんとかが多いんですが、一人の被写体にみっちりついて撮影する、というのはやってみたいですね。 ちょうど、8月にラッパーのツアードキュメント撮れることになったので楽しみにしてます。

イベント情報

2016年7月27日(水)〜 8月8日(月)
濱田 晋 写真展 『それから and then』
会場:ON READING  名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
問:052-789-0855
http://onreading.jp/

濱田 晋  Shin Hamada
様々なエディトリアルやWEBマガジンの撮影の他、カタログやキャンペーン広告の撮影を行なう。

– WORK –
SWITCH,BRUTUS,GINZA,Number,WARP,GRIND,美術手帖,PAPERSKY,HOUYHNHNM,eyescream.jp,BEAMS,adidas,無印良品,UNIQLO etc…

www.shinhamada.com

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