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もの ひと こと|ー 履く、ものをつくるひと ー hacu 中村美穂さん

2014.10.30.Thu - 11.09.Sun | Text: 外畑有満子 / にちよう市 (from studiomanomano)

「 ひと 」

hacuの中村美穂さんは、元々はアパレルで販売の仕事をしていた。そこで知り合ったご主人(中村さん)と結婚されて、靴下づくりが家業となる。レッグニット中村さんは、学校のスクールソックスやスポーツソックスを製造するメーカー。今も本業はこちらを中心に、hacuはその傍らでつくられているのだそう。

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hacuのはじまりは、2006年のこと。ネットショップをしませんか?、という1本の電話からだった。それを聞いた先代の社長(お父様)が「これからはメーカーも仕事を請け負うだけでなく、自分たちで発信していく時代だろう。ネットで直接販売する方法も考えた方がいい。」と一言。そして「自由にやってみなさい。」と言ってくれた。

「そのときの電話をかけてきた、担当だった人がとてもいい方だったので、ひとつひとつ 相談をしながら、ネットショップを立ち上げていくことができたんです。」

今でもネットで購入してくれたり、会いに来てくれるなど付き合いは続いているそう。

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美穂さん自身の経験は、hacuにどのような影響を与えているのだろうか、聞いてみた。

hacuをはじめる以前のお仕事、アパレルでの仕事について。

「 アパレルの仕事は、自分で企画したり仕入れることが楽しくて、とても好きでした。その頃から、流行のものには興味がなく、シンプルで素朴なものが好きで。それは今も変わってないかもしれません。 」

子どもの頃の記憶や経験で、今に何か影響していることは。

「 影響しているかどうかわかりませんが、母方の実家が、滋賀の長浜で西陣織りの織り屋さんをやっていて。機織りのがっちゃんがっちゃんという音をBGMに、職人の手で一目ひとめ織りなされていく様子が脳裏に焼き付いてます。絹の縦糸がとてもきれいで、いつも触っていました。手触りがすごく気持ちいいんです。 」

地場の工場に製造を依頼することを意識されていると思いますが、そこにこめられた思いなどはありますか。

「 できる限り、地場の工場に仕事を依頼するようにしています。便利な世の中で、遠くてもメールのやり取りで製品は出来上がりますが、実際に会って説明をして、納得がいくまでサンプルを試作してもらって。その繰り返しができることが何より大事なこと。緊急でお願いすることも多々あるので、やはり近くの職人さんにお願いすることが多いですね。 でも近くても縁のない人もいるので、やっぱり『人』は大事だなと思います。 」

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ニッターさんの工場に伺ったときにお会いした、奥田さんの言葉が印象に残っている。
奥田さんは、美穂さんが弟子入りして機械の動かし方などを習っていた、師匠。

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「機械はただ動かすのではなく、調整することが何より大変で難しい。動いているときの音の変化を感じるくらいでなくてはいけない。それは技術よりも長年の勘。」
「手をかけていいものをつくることが、何より大切。」そして「私は他のことは何もできなかったからね。」と。その言葉に、一つのことを追求してきた職人としての誇りを感じた。

また「 こういうこと(機械を扱うこと)はわたしに任してくれればいい。」とも。

奥田さんは、3年前に廃業されている。美穂さんが弟子入りしたのには、機械を扱える人がいなくなると同時に技術も途絶えてしまう、という思いがあった。奥田さんの言葉からは、機械を扱う技術よりも、今は商品にすることや外に広めることに力を注いでほしいという、美穂さんへの気持ちが伝わった。こうした職人さんとの信頼関係から、hacuの商品はひとつひとつ生まれてきているのだと思った。

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最後に、美穂さんに聞いてみた。

靴下をつくるときに大切にしていることはありますか。

「 hacuの名前の由来は『履く』からです。シンプルで素材にこだわった靴下が作りたいという思いから、名前もわかりやすく覚えてもらいやすく。実はこの名前には、他にも隠れたテーマがあって……
hacuh(home・家庭的であること)、a(amuse・楽しませる こと)、c(cute・かわいいこと)、u(usefull・使ってもらえること)です。そして、ここから外れないということも大切にしています。」

「 今こうしてたくさんの方に、hacuの靴下を目にしていただいたり手にしていただいているのも、一緒に頑張ってくれているスタッフ(野村さん・辻村さん・真野さん)がいるからです。彼女たちの働きなくしては、hacuは成り立ちません。 」

これからのhacuのことについては?

「 ひとりの赤ちゃんが大人になるまで、ずっとなんとなくあって。その子がまた、自分の子供にもなんとなく履かせてて。そんな風景が持てる、靴下屋でありたいな。と思っています。ずっと愛されるものって、結局は単純でシンプルなものだと実感しています。いいもの(製品・技術・つながり)をずっと残していきたいと思っています。 」

<あとがき>

もの と ひとから生まれる、こと。

シンプルで肌触りも良く、飽きのこないhacuさんの靴下。同じものを定番として作り続けていることや、同一のデザインでサイズ展開していることも特徴的。それは、お気に入りをずっとリピートしていける安心感、家族みんなで同じデザインの靴下を履くことのできる楽しさ、それにまつわる思い出のようなものまでも大切にして作られています。
師匠と美穂さんのやりとりは横で見ていて、とても楽しいものでした。職人さんにあれこれ聞きながら、少しずつ技術を引き出して、それをまた次のデザインへと生かしていく。美穂さんが手探りでやってきたことは、hacuというブランドとして形となってきています。

子育てもしながら、数々の出張イベントもこなし、新作のデザインも考えて……いくつもの役割りをこなしながら、それをさりげなく自然にやってしまう、そんな強さと柔軟さと。そして芯の通ったブレのない感じ。hacuの靴下にも通じるそれは、美穂さんの人柄からも感じられます。
ものをつくるだけでなく、次の世代へと繋げていくこと。それを意識しているつくり手は、ものを通して何かを伝えていくことができるのかもしれません。人と人との繋がりを生み出し、次へのバトンとなっていくもの。美穂さんの語ってくれた、ひとりの赤ちゃんが大人になるまで。というイメージは、まさにそのバトンのように感じられました。

今回、ゆっくりお話を伺ってみて、1足の靴下にも、いろいろな人の大切な想いがこめられているとわかりました。にちよう市では、これからもhacuさんの靴下をご紹介させていただきます。みなさんがhacuさんの靴下を手に取ったときに、少しでもそんな想いを感じてもらえたら。

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