舟伏の里へおんせぇよぉ~!岐阜県山県市・北山に廃校利用の食堂がオープン!
Interview / Text by
MISA SATO(オイシイワークス)
前回に引き続き2回に渡りご紹介している「小冊子・やまがた旅手帖」とその周辺の事。
“やまがた”と言っても、東北地方ではなく岐阜県・山県市の北部。谷合地区~神崎をめぐる小冊子です。
今回はちいさな里山「北山集落」のおおきなニュースをレポートします。
写真を眺めながら、一緒に旅している気分でお楽しみ下さい。
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前回ちらりとご紹介した、旧小学校だった建物をリニューアルした食堂。その名も「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」がついにオープン!コンビニもスーパーも喫茶店もない北山集落に新しく食堂ができるという事で、普段は静かな里山に賑わいが生まれています。
「おんせぇよぉ~」とはこちらの方言で「いらっしゃい」と同じ意味。聞けば、舟伏山の麓にある北山集落に気軽にいらっしゃい!という想いを込めて「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」という店名になったそう。少子高齢化による過疎に悩む地域の魅力を発信し、地域の人たちが活躍できる場として、地元の皆さんの想いの詰まったこの食堂を運営しているのは「山県市里山再生委員会」の皆さんと地元のお母さんたち。北山地域で生まれ育ったお母さんたち手作りの、素朴な田舎料理が楽しめます。
▲お昼の定食は500円~1200円。季節によって内容がかわります。
▲みんなでがんもどきを丸めているところ。会話も手際もテンポ良くはずみます。
取材に伺ったのは土曜の昼前。キッチンを覗くと、お母さんたちが忙しそうに料理の仕込みをしていました。「みんなでわいわい言いながら作るのが楽しいんだわ~」と笑うのは最高齢のお母さん。みんなで楽しくおしゃべりしながらも、どんどん料理が完成していきます。ホールスタッフの山口さんも開店準備をしながら電話の応対。「8名様!おまちしております~!」「はい、4名様ですね!」と次々にかかってくる予約の電話に答える元気な声が響きます。オープンは11時ですが、ずいぶんと前に来店されるお客様もちらほら。ここへ来るのを、みんなが楽しみにしているのが伝わってきます。
今日の献立は、白和え、里芋の煮っころがし、芋茎の酢炒り、煮豆、大根の古漬け煮などなど。主菜は、手作りがんもどきやコロッケなど4種類から選ぶ事ができます。写真の定食に、季節の天ぷらとデザート、食後のコーヒーまで付いて、ごはんと味噌汁はおかわり自由!これで1200円はとってもお値打ち。田舎ならではの山菜料理やお漬物はなんだかなつかしい味わいで、しみじみおいしい風土の味。都会ではあまりなじみのない食材も登場して、お母さんに作り方を聞くのも楽しい時間です。
12月からは冬季限定「味噌煮」ランチもはじまるそう。取材中にも次々と予約のお客様がみえ、12時すぎにはあっという間に満席になってしまいました。オープンして間もない事もあり、お客様は地元の方が8割くらい。噂を聞いて、麓の集落から歩いてやってきたという方や、舟伏山登山からの帰り道だという男性。「小さな頃から山県市に暮らしているけれど北山集落に足を運んだのは初めて。」というおばあちゃんも。普段人気のない集落にたくさんの人が集まって楽しそうです。バスは1日に数本しか通らないため、来てみたものの、帰れなくなって困っている人がいれば「一緒に乗ってきゃあ~!」と車を出してくれるあたたかい声。都会にはない人の温かさ、困っていたら知らない人でもお互い様、というあたりまえの親切がありました。
▲地域の新しい交流の場として、食事を通じておしゃべりにも花が咲きます。
この小学校を活用して、食堂をつくろうと活動を始めたのは昨年のこと。子供キャンプなどのイベントで提供していたお母さんたちの田舎料理がおいしいと評判だった事から、山県市里山再生委員会の皆さんと地元のお母さんたちが何度も会議や試食会をしながら、試行錯誤を重ねてオープンに漕ぎ着けました。飲食店なんて作った事も働いた事もない人たちがゼロから作り上げるのだから、何もかもがとにかく大変!調理場は完成したものの、椅子やテーブルはお客様をお迎えするにはボロボロすぎる…。食器も古く、廃校そのままの校舎はほこりだらけ…。まずは大掃除からスタートし、それから椅子のペンキを塗り直したり、テーブルの天板を新しくしたりと、やらなければいけない事は次から次へと出てきます。料理は定食にするのか、それともバイキング形式にするのか、品数や価格はどうするのかなどなどなど…。メニュー考案には地元の大学生などもボランティアで加わり、栄養のバランスを考えたり盛付けを工夫したりしました。問題山積の中たくさんの人が関わりながら苦労して、一歩ずつ作り上げた食堂には、皆の想いが詰まっています。
そんな初めてだらけで不安いっぱいの中オープンした食堂ですが、開店してみれば大盛況!地元新聞やケーブルテレビの取材もあり、注目を集めています。そんな中、就職や結婚で地元を離れていった人たちが、ここで同窓会を開きたいと言ってくれたり、帰省ついでに足を運んでくれるといううれしい副産物も!過疎が進み、寂しくなってしまった風景に活気を取り戻すきっかけに一役買っています。
▲地域期待の若手。写真左から、中村さんと山口さん。
「おんせぇよぉ~」では北山集落の次世代を担う若者も活躍中。写真の2人は集落支援員として、北山の住民の方が抱える問題や過疎・高齢化を解決すべく奮闘中です。中村さんは今年、県外から家族揃って移住してきたばかり。地域おこし協力隊として、調理師でもある料理の腕を生かして食堂のサポートをする頼もしい存在です。山口さんは食堂を運営する山県市里山再生委員会のメンバーであり、市の職員でもある山県出身の若者。自然観察指導員として山歩きのイベントや農業体験イベントの企画運営も行っています。自分の生まれ育った地域の魅力をもっと発信していきたいと、勤めていた会社を辞めて地元のために働く山口さんは、地元の皆さんにも実の孫のように愛される存在。地域への熱い想いがあふれています。
▲茶色い暖簾が目印。元気なお母さんたちがお待ちしてます。
中村さん、山口さんをはじめボランティアスタッフや地域のみんなで作り上げる食堂「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」はこれからの里山の未来を背負う期待のスポットとして、今週末も元気に営業中!田舎ならではの、のんびりゆったり流れる時間と、地元の方との楽しい交流が待っています。名古屋から車で1時間半、秋の紅葉を楽しむドライブを兼ねて出かけてみませんか。近くにはキャンプ場やボートで釣りの楽しめる伊自良湖、日本一の湧き水と言われる円原の伏流水、日帰り登山ができる舟伏山などがあり、身近な自然を満喫できるエリアです。
→やまがた:風土(FOOD)TRIP 第1回
人とのふれあいから、地域の魅力を探す旅(2013.10.31 UP)
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