Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)
東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。 このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。搬入中のざっくばらんな会話をお楽しみください。
今回は、雑誌の挿画、書籍の装丁、広告などで活躍中のイラストレーター、小池ふみさん。最近では、無印良品や手紙社、Washington Post の仕事を手掛けるなど、ますます活躍の場を広げています。
_小池さんは、どうやって絵を描きはじめたんですが?
絵を描くのは子どもの頃から好きだったんですが、小さい頃は獣医さんとかコックさんとかいろいろなりたいものがあって。ずっと絵を描くことを仕事にしたい、と思い続けていたわけではありませんでした。大学ではデザインの勉強をして、鞄を作っている会社でWEBサイトやカタログのデザインをしていました。その関連でイラストを描くこともあって、やっているうちに「イラストレーションってなんだ?」と気になりだして、他の人の作品を見たり、勉強をしたいなと思い始めて、イラストレーターの峰岸達さんが主宰されている塾「MJイラストレーションズ」に行きはじめました。
_東京にはたくさんイラストレーションの学校があると思いますが、そこに決めた理由はあるのでしょうか。
MJイラストレーションズは同じ先生がずっとやっていらっしゃるということや、会場の自由学園明日館に定期的に通えるというのも嬉しくて。3年くらい通っていました。そこには既にイラストレーターとして仕事をしている人もいれば、仕事にする気はないけどずっと絵を描いている人とか、いろんなタイプの絵が好きな人がいました。先生はもちろん、面白い人たちに囲まれて勉強するうちにイラストレーションの世界が身近になってきて、最初は課題のために描いているだけだったのが、「自分の絵」が描けるようになりたいと思ったり、人に見せるのが楽しいな、とか展示もしてみたいなと思うようになりました。
_小池さんの作品は、どこか温かみのある筆致や、やわらかな空気感が魅力的だなと思うのですが、今の様な作風には、どのように至ったのでしょうか?描きはじめたころと変化はありますか?
課題でアクリルガッシュを使い始めてから、ほとんど変わっていないです。ただ今回展示をして、以前よりどんどん細かくなってきているといわれるようになりました。それがいいのか悪いのかはわからないんですが、絵に向かっている時間は長くなってきていると思います。
_今回、日本では初めての個展ということなのですが初個展はスペインだったんですよね。
そうですね。Flickrにあげていた作品が2012年にMissMossというブログ(http://www.missmoss.co.za)に取り上げられて、それを期にスペインのDo Design Madridというお店で展示をすることになりました。何分初めての経験だったので言葉のこととか色々と不安はありましたが、結果的にギャラリーの方にも、お客さんにも喜んでいただけたみたいで。またそれをきっかけに、いくつか別の海外のサイトで紹介していただいたりして広がっていったんです。それでカナダのセレクトショップのOld Faithful Shopのアートワークを描かせてもらったりとか。
(画像:Old Faithful ShopのInstagramより引用)
_絵や写真は本当に言葉関係なくストレートに伝わっていくことができていいですね。個人でもネットとか、いろんなツールを使ってアピールできる時代になってきたし。いいものが創れて、うまく発信することができれば可能性がどんどん広がるという。今回の個展でもそうですけど、小池さんの作品って、普段の生活にあるものとか、身近なモチーフが多いですよね。何を描くかって、どのように決めているんですか?
記憶の中にあってふっと書きたいなと思うもの、思い出の中で印象に残っているものを描いています。具体的にこれを伝えたい、とかいうのはほとんどなくて。モチーフをどうやって決めているのか、というのはよく聞かれるんですけど、夢をみている感覚に近くて、今まで見たり聞いたり経験してきたもの・ことが、頭のなかに自然とわいてくるというか。それが今回のタイトルにつながっています。普段生活している中で、あれ描きたいなと思いついたら、ノートやメモ帳に「描きたいものリスト」として書き留めていて。時間ができたときに、そのリストから気分にあわせて描きはじめてますね。
_今回のDMになった作品もそうでしたが、後ろ姿の人物像を多く描いていらっしゃいますね。
風景とかものと変わらない存在感で、人を「かたち」としてとらえたくて、後ろ姿を描いています。顔の表情を描くよりも雰囲気とか空気がうまく捉えられると思っています。
_好きなアーティストとか影響を受けた人はいますか?
アヌ・トゥオミネンさんの空気感がすごく好きで静かで、冷たさも温かさも感じる雰囲気やユーモアや日常的だけど詩的な感じの世界に憧れます。アクリルガッシュを使って絵を描きはじめた頃にとくに気になっていたので、影響を受けていると思います。あと海外の作家たちのブログを見るのが好きで、今は、アントワープの写真家、mieke willemsのブログをよく見ています。イラストレーターだと、フィリップ・ワイズベッカーも好きですね。
_リチャード・ブローティガンの「愛のゆくえ」の新装版、すごくよいですね。作品世界ともよくあっていると思います。
この書籍の担当デザイナーは、もともとこの作品がとても好きで、入社前から「新装版を作りたい」と思っていたそうです。熱い想いがこもったプロジェクトに参加できてうれしかったです。
_これからやってみたいこととか取り組んでいきたいことはありますか?
絵を描いていくことも、もちろんずっと続けていきたいのですが、ずっとものづくりについて考えているので、生活に身近なものであったり平面だけじゃない展開もしていけたらと思っています。
2015年10月21日(水)~11月9日(月)
小池ふみ個展『THEY BEGIN TO TALK / しゃべりだす記憶』
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
www.onreading.jp
小池 ふみ Fumi Koike
イラストレーター
東京都在住
武蔵野美術大学卒
HB FILE COMPETITION 24 鈴木成一特別賞受賞
書籍、雑誌、広告、Web等でイラストレーションを手がける。
http://fumikoike.blogspot.jp
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