Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)
東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。 このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。搬入中のざっくばらんな会話をお楽しみください。
今回は、 雑誌や広告、CDジャケットなどを手掛けるほか、ファッションブランド「Ne-net」とコラボレーションしたり、つい先日には、小沢健二のHPにアートワークを提供するなど、ますますその才能を世に知らしめているイラストレーター、鈴木裕之さん。彼のバックグラウンドを垣間見る濃厚なインタビューになりました。
―以前、杉浦茂や漫画雑誌ガロなどに影響を受けたと伺っていたのですが、どんなきっかけがあってそれらに出会ったのですか?また、鈴木さんがイラストを描きはじめたのはいつ頃からなんでしょうか?
子供の頃から家に漫画がたくさんある環境だったのですが、幼稚園のときに水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」がTVアニメで放送されていてそこからずっと水木しげるが好きでした。小学生になってファミコン通信という雑誌に桜玉吉の「しあわせのかたち」という漫画が連載されていて、そこにつげ義春のオマージュみたいな話がなんかグッときたのを覚えています。そこから中学生になるとガロを定期購読するようになりその頃、逆柱いみり、はなくまゆうさく、キクチヒロノリ、本秀康等が連載されていてすごい刺激を受けました。園子温やとうじ魔とうじ、鈴木邦男、松沢呉一なんかの文章も好きでした。その中でも憩写真を連載していた沼田元氣に衝撃を受ました。ガロの沼田元氣特集で杉浦茂のインタビューが載っていてそこから杉浦茂を好きになりました。植草甚一を知ったのもこの頃だと思います。中学生にして全然知らない世界を知ってその影響が今もずっとある感じです。
中学生の頃は、漫画家になりたくてつげ義春や鈴木翁二見たいな絵を描いていました。イラストレーションとかは、この頃全然意識していなかったです。
―中学生でガロを定期購読って、めちゃくちゃ早熟ですね(笑)どんな少年時代でしたか?漫画以外で、その頃、はまっていたものはなんですか?
中学校時代は、ヤンキーばっかりの学校だったのですが、ガロとか読みながらヤンキーとも遊ぶ感じでした。自分は、不良ではなかったのですが仲の良いヤンキーとここでは書けませんが割とめちゃくちゃな事ばかりやっていました。中学のとき音楽は、SEX PITOLSとかビートパンク系、筋肉少女帯とか聞いてました。大槻ケンヂのソロアルバムでじゃがたら、ばちかぶり、スターリン、INU等を知りました。周りに話の分かる子は、全然いませんでした。高校生でお洒落なクラスメイトがNIRVANAやBOREDOMSを教えてくれたのですが、当時、僕の中でBOREDOMSの山塚EYヨさんがスーパーヒーローでした。音楽もファッションもすごい影響を受けました。90年代の大阪の文化が今も一番かっこいいと思っています。そこからパズルパンクス、大竹伸朗を知り現代美術なんかに興味が出てきた感じでした。美大とかには進みませんでしたが…。中学、高校の時に出会ったものが今の僕を形成していると思います。
―その頃の経験って大事ですよね。鈴木さんの作品って、やっぱりパンクなんですよ。一見するとかわいらしい絵でも、そのパンク感はびしびし伝わってきて。ところで、どのようにイラストレーターになっていったんですか?
未だに自分は、イラストレーターなのか何なのかよく分からないのですが、6~7年前からイラストレーターと名乗っております。当時勤めていた会社が暇な時期だったのでなんか将来、絵で食べていけたらなとか思ってイラストレーターになるにはどうしたらいいのか調べだしたりしていた気がします。誰も教えてくれないので無我夢中で今まで来た感じです。
―鈴木さんといえば、フライヤーやCDジャケットも数多く描いていますし、音楽シーンと濃密な関係を築いてきたイメージがあるのですが、これまでに手掛けてきたもので印象的だったお仕事ってありますか?ターニングポイントになったような・・・。
やはり自分の中で一番大きいのは、「neco眠る」との出会いです。当時、関西ゼロ世代と呼ばれるミュージシャン連中と同世代で仲が良くて、自分もイベントやバンドをやっていたりしたのですが、ちょうど描き溜めていた落書きを当時、パソコンが使える友達に「これまとめて作品集にしたいんやけど」とスケッチブックを何冊か渡したら作品集になるどころか勝手にステッカーにされてイベント等で売られておりました。そのステッカーを熱心に集めてくれていたのがneco眠るの森君でした。「いつか僕らのシャツの絵描いてください」と言ってくれていたのですがシャツができる前に1stアルバムのジャケットを描く事になりました。そこから自分の絵が人の目に触れるようになり仕事の依頼なんかも来るようになりました。なんかイラストでやっていくにはどうして行けばいいのかと悩んでいた自分に光が当たった瞬間でした。今もずっと感謝していますが僕は、いつも不義理ばかりでろくなもんじゃねえっす。
―たしかに、「neco眠る」のジャケットで鈴木さんのことを知ったファンも多いと思います。今回の展示の作品を拝見し、以前よりもさらに細かいタッチになってたり、描き込み量が増えて作品としてのクオリティ、迫力が増しているように思いました。毎回、作品を描くときってどんなことを考えながら描いているんですか?タイトルも興味深くて・・・。アイデアとかどんなときに思いつくのかなって。
関西ゼロ世代と呼ばれるものが出てくる以前、大阪のアートシーンに福田誠吾君という絵描きの子がいてすごい緻密な絵を描くのですが、当時めちゃくちゃ影響されました。それと高校生でBOREDOMSの事が好きになっていろいろ探り出しHARDCORE/PUNKに行き着くのですが、アートワークにもかなり影響を受けました。レイモンドペティボン、パスヘッド、SxOxBやR.F.Dの絵を描いているYOSSIEさん等々。ライブのチラシとかが凄い刺激的でした。自分も緻密な絵とか点描とか描いていた時期があったのですが、ここ最近のらくがきっぽいスタイルになってからはその辺の手法は使っていなかったんです。でも最近、自分の今までのスタイルが全部一緒くたになってきてて。かわいいっていうカテゴリーが嫌で、シュールでナンセンスならくがきばかり描いたりもしましたが、今は全部ひっくるめて自分だという感じです。アイデアに関しては、がんばって出てくるものでもないのですが、とりあえずどんな時でも描くようにしています。日々精進です。
―最近は、アパレルブランドとコラボレーションしたり、絵本をつくったりなど、さらに活躍の場を広げていっているように感じます。今後の展開や、やってみたいことなどありますか?
もっともっといっぱい絵を描きたいです。イラストに限らず漫画にも挑戦してみたいです。ほかアニメーションとかもやりたいなあ。あと海外とかでも展示してみたいと思っています。おっきい場所とかの展示もやってみたいです。 まだまだこれからだと思うのでずっと挑戦し続けて、おもしろ人生を全うしていきたいと思っております。自分は絵を描くために生まれてきたのだと思っているので死ぬまで続けていきま~す!
2016年1月27日(水)~2月15日(月)
鈴木裕之 個展 『鈴木裕之園芸店 名古屋場所』
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
問:052-789-0855
www.onreading.jp
鈴木裕之 Hiroyuki Suzuki
1980年生まれ。幼少期より現在に至るまで枠の外に落書きを続ける最後の極北イラストレーター。バンド「neco眠る」のアルバムジャケットのアート ワーク提供をはじめ、雑誌、WEB、広告媒体で活躍中。2014年にはファッションブランド「Ne-net」とコラボレーションした原画を使ったアイテム 展開で話題に。シュールかつストレンジ、牧歌的なイラストレーションは、カワイイや脱力では計り知れないナンセンスな世界が描かれている。
web : http://www.suzuuqui.com
1
2
3
4
5
6
7
8
9