Interview by KYOKO KURODA(ON READING)
東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。
このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。 今回は、どこか懐かしさを感じる素朴で愛でたくなるような陶器作品が人気の作家、タカノミヤさんにお話を伺いました。
―まずは、「タカノミヤ」というお名前の由来を教えていただけますか?
一部の友達からそう呼ばれていたんです。以前は本名で活動をしていたんですが、ある時展示のDM作成を友人のデザイナーにお願いしたら、原稿で名前が「タカノミヤ」になっていて(笑) 。友人はわたしの作家名が「タカノミヤ」だと思い込んでいたみたいなので、そういうのもいいかなと思いそのときからです。
―そうだったんですね。どことなく不思議な感じが、作品の雰囲気とも合っていますよね。タカノミヤさんは今回の展示のような陶の作品を作る前は、元々は絵を描いていたんですよね?
ええ、もともと絵を描いて展覧会をしておりました。作家活動的なものを始めたのは長く勤めていた仕事を辞めてからです。その会社に入る前にも絵を描いていましたが、それは作家というよりももう少し個人的なもので、一部の友人のみに観てもらっていました。その友人の一人が継続は力なり、どんな形でも続けていくことが大切だと言ってくれました。本人は忘れていると思いますが(笑)。いざ仕事を辞めてすぐに作家になろうとかはまったく考えずにいましたが、時間の経過とともに自然と制作をするようになり、友人の勧めもあり絵の個展をしました。陶芸の展示スタイルと絵の展示スタイルは違っていて。絵を描くのと同時に散文みたいなもの作って、絵を散文に合わせてテーマを統一して個展をしていました。もちろん今も絵は描いていますし散文も書いています。
―陶の作品を作りはじめたのはいつからですか?
本格的に始めたのは、一昨年の年末に電気窯を購入してからです。その前にも、個展で陶の作品展をしたことがありましたが、その時は成形は自分で、焼くのは友人に頼んでいました。その時展示を観てくれた人にいい反応をもらえたことや、以前に友人の占いで「土ものがいい」と言われたこともきっかけのひとつで陶器をやってみようと思いました。現在わたしは陶の作品を集中して作ってはいるですんけど、陶芸家という気持ちはあまりなくてというか、実際なにか違うと思うので陶芸家ではありませんし、これからもやってみたいと思ったことは何でも緩やかに手を伸ばしていきたいと思ってます。
―絵と、陶器では制作のプロセスや気持ちに違いがありますか?
絵や詩は毎日書いていて、少しずつ積み重ねて作品が出来ていくんです。作品それぞれにストーリーがあって、作り込んでいきます。一方、陶の作品は考えてそれをまとめて作るやり方ではなく、浮かんでくるものをすくいとる感じだったり発掘しているようなところがあります。それをうまく発見することができるかどうかは、日々の絵を描くことや文章を書くことが鍛錬になっているような気がします。すくいとることは難しいことですが、そのためには自分をなるべくフラットな状態にしておいて、作為的なところからはできるかぎり自由でありたいなと思っています。
―タカノミヤさんの作品は、発掘されたようなものや、もしくはヨーロッパの蚤の市で出会うような、時代を経たような雰囲気があります。この作品の世界はどのようにできているんでしょう。そういうものがもともとお好きなんですか?
見たものに実際影響は受けているとは思いますが、ものをつくるときにはあまり意識し過ぎないようにはしたいと思っております。
―タカノミヤさんの作品を観ていると、懐かしい、という表現が浮かんできますが、私たちは、実際には遺跡を発掘したことがあるわけでも、昔のヨーロッパにいたわけでもないのに、なぜか、それを思わせるタカノミヤさんの作品を「懐かしい」と感じるというのは、とても不思議ですよね。
そうですよね。例えば、渡り鳥も魚やトナカイたちも世代が変わっても長い距離を移動してまた再び同じ場所に戻って来る。人間も誰に教えられたわけでなくとも子を産んで育てていますよね。遺伝子に記憶が刷り込まれているものっていうのがあるんじゃないかな。作品を作る上でも自分自身の体験だけでなく、どこかで見たことがあるような風景やイメージを重ね合わせてみれるのは自分以外の誰かの記憶のかけらかもしれないし、たくさんの誰かの意識の集合体が私の中にも堆積されて、作品にそういう記憶のかけらがところどころにあらわれてきていて、わたしの作品に懐かしさを感じるんだとしたら面白いなと思います。
―今回、作品の点数がとても多くて見ごたえがあります!どれも、手のひらに収まるような小さなサイズのものが多いですね。
手のひらサイズの作品には、安心感があります。大きいものは、手に余るというか、自分の範囲を越えてしまっているように感じるんです。自分自身も机の上に、小さな石や貝殻を並べて眺めたり、ちょっと手に取って触れてみたり、物語を作って遊んだりするのが好きで、そうやっていると心が落ち着くんです。だからつい小さいものを作ってしまうのかもしれません。
―モチーフは、山や枝、動物が多いです。これらはどういうところからきているんでしょう。
わたしは生まれた時から山の近くに住んでいて、見るのも実際に山に登るのも好きなのでほとんど意識せずに山をつくっていました。モチーフに自然のものが多いのも単純に自然のものが好きなせいですね。
モチーフについていえば、たとえばわたしがつくった「鳥」はみなさんも「鳥」としてみているけど、実際にはこういう羽の向きなのかどうかというと、たぶん違うと思うんです。でもイメージの共有ができているから、それを「鳥」だと思えるし。まあ、鳥や象といった特徴的な動物に限りますけど。他は自分が思っていないものに見える時があり面白いですよね。枝も角のように見えたり、角が枝のようにみえたりとするのを楽しんでいます。水差しや穴のあいた作品は、何かの道具のようにも見えるけど、用途は特に定まっていなくて。どう使うかとか、どう見るかとかは、見る人が自由に感じて考えてもらえると嬉しいです。
―組み合わせて勝手に物語を作って遊んだり、道具のようなものをどう使うんだろう、と想像してみたり、実際に触れて、手に馴染む存在のものを探したりと、受け手に開かれた作品といえますね。
受け手に開かれたというよりも紛れ込む感じかな。すでにそこにあったようになじむ感じがいいんです。展示のタイトル、「ほんのすこしちかいところ」もさきほど話したイメージの共有や記憶のかけらに通じることですが、全然知らない場所に住んでいる人が、わたしの作ったものを見たり触ったりして、イメージの共有が出来たり、なつかしさを感じてもらえたり、わたしが全く思いもよらない用途を考えたり、そうして作品がその人にとって近くて遠い記憶をゆさぶる存在になってくれたら。
―ところで、これまでに夢中になったり、影響を受けたものってありますか?
いろんなものに影響を受けています。これだとあげるのは難しいですが。 強いて言えば、中学生のときにガウディのサグラダ・ファミリアのポスターを見て、スペインに住みたい! と思ったり、 同時期にドガのパステル調の絵画にも惹かれていたりしたことはあ りました。あと、幼いころにみた佐々木マキさんや長新太さんの絵本や不思議の国のアリス、 漫画家でいうと高橋留美子さんの「るーみっくわーるど」も好きで、影や木の後ろに入った途端、 次元が違う世界に入ってしまったり、体のサイズが変わるような固定概念のない世界観に影響を受けて いると思います。自分の固定概念を壊すのはなかなか難しいのですが。
―今後やってみたいことなどはありますか?
とくに大きな目標はもたずに緩やかにダイナミックに生きていきたい。制作も好きなので新しいものを(古く見える)つくり続けたいし、展示も継続して行いたいです。知らない場所で知らない人たちにも見て触って頂きたいです。
2016年10月26日(水)~ 11月7日(月)
タカノミヤ展『 ほんのすこしちかいところ 』
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
作家在廊日:10月26日(水)、11月3日(木祝)
問:052-789-0855
http://onreading.jp/
【SPECIAL EVENT】 あゆみ食堂×タカノミヤ 秋のパフェ
2016年11月3日(木祝)
時間:13:00~18:00
料金:800円+税(予定) ※ご予約優先 / 無くなり次第終了
ご予約:http://onreading.jp/exhibition/takanomiya/
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